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剣と魔法のセカンドワールド  作者: K.T
第五話 街の防衛戦
74/76

*ギルド会議

*主人公の描写はありません


 冒険者の喧騒が響くギルド内部の一室。


 冒険者ギルドにある会議室で今後の動きについて話し合う会議が行われていた。会議の参加者は各ギルドの長、役員や領主からの伝令を伝えに来た伝令兵がその場に居合わせていた。



「つまり、領主の命令で街の衛兵は迎撃作戦には参加しないんだな」


 会議室の奥側に座っていた(バルバス)が伝令兵に再度確認した。伝令兵は領主からの返事を再度繰り返すように話していたが、バルバスが途中で遮ってやめるように言った。


「はぁ~~、まだ金を払うだけ首都の馬鹿共よりましだが危機感が足りねぇ。下手すりゃこの街が滅ぶことを分かってねぇなあ~」


 そうバルバスが発言すると、会議室では動揺する人達で部屋の中が騒がしくなった。しばらく各々が話し合いながら会議は続いたが、決定的な解決案は出てこなかった。


 解決案がないまま会議が続く中、会議室の一番奥の席に座っていたギルド長の女性がバルバスに問いかけた。


「戦闘経験が豊富な貴方なら、この局面でどうするのが一番いいと考えていますか」


「あ~そうだな。いくらかの犠牲覚悟で解決するなら、冒険者が本体までの道を切り開いた後に衛兵の騎馬による突撃で一点突破の本体の撃破が一番いいだろう。次点で、援軍待ちの防衛戦だ。数日以内に援軍が来る前提だがな。うまく守れれば一番犠牲は少なく済むが、守れなかったら全滅だろうな。そして、一番最悪なのが今から行おうとしている迎撃戦だな」


「なぜ今の作戦ではだめなのですか?」


「そりゃあ、今回の親玉が俺の知ってる魔物ならいくら迎撃しても意味ないからな。本体を倒さない限りいくらでも敵が増えるのに倒し続けてもあまり意味がない」


「その情報は領主には伝えているんですよね」


「当たり前だろうが、だが本気で信じてはいないんだろうよ。はぁ~~、やっぱり歴史を知らん二世はダメだな。今の領主にも同情する余地はあるが、一度は砦の事を経験させないと実感できないんだろうな。この世界に()()()()()()()()()()()事を・・・」


「副ギルド長。禁則事項が含まれてますよ」


 不用意に言ってはいけない事を言った副ギルド長を冒険ギルド長が(さと)した。


「ここにいるやつは大体が知ってるだろうが、問題ねぇよ。知らないのはあそこに突っ立ってる伝令兵ぐらいだろ」


 左手の親指で伝令兵を指差すように話したあと、椅子にもたれ掛かるように天井を仰いだ。


「普段冒険者が百人もいない街の状況だと確実に全滅していただろうが、この街に星を渡る者(プレイヤー)が来ることでいきなり八百人以上の冒険者が増えた時にこの事態か、・・・偶然で済ませていいものなのか」


 呟くような独り言を隣に座っているギルド長だけは聞こえていたが答えることはなく、進展のない会議が続くうちに会議室の扉が叩かれた。

 会議室に入って来たのは数枚の紙を持ったギルド職員で、現在の迎撃作戦への冒険者の参加者と参加人数を知らせる資料を持って来ていた。


 ギルド職員から資料を受け取って、内容を見たバルバスは驚くように眉をあげると、隣のギルド長に資料を渡して話しかけた。


「ほぉう、想定していた人数以上に参加しているな。まだまだひよっこの連中が多いだろうに、自分の生まれ育った街でもないのによく参加するもんだ。普通の冒険者ならさっさと逃げるやつが多いってのによ。こりゃあ、将来有望だな」


 職員が持ってきた資料には、すでに各軍の上限人数は集まっていて、まだまだ増える様子だという事が記載されていた。そして、その中には副ギルド長が予めギルド職員に言っておいた人物の配置先が分かった事も書かれていた。


「そうですね。なかにはなぜか楽しそうに緊急依頼を受ける人までいるみたいですよ」


「ぶぁっはっはっ、頭がいかれてんのかよ。よっぽどの大物か、命知らずの英雄にあこがれるガキじゃねぇか」


 バルバスが突然大声で笑った事で注目を集めてしまい、真剣に話している人たちから非難の目を受けた。流石に悪いと思ったのか、バルバスが「悪い邪魔した」と謝ってから「気にせず続けてくれ」と言った事で再び話し合いが続けられた。


「はぁ、気を付けてください。でも、星渡りの人達は問題を起こす人もいましたが、大体の人は礼儀正しく信頼できそうな人達ばかりで、街の人も冒険者の印象が良くなってきてるみたいですよ」


「そうなんだよな。俺からすると冒険者らしくないんだが、おかげで冒険者の苦情がかなり減ったから他の冒険者も見習ってほしいもんだぜ。いちいち折檻するのも面倒だしよ」


 バルバスはやれやれと首を振りながら椅子に座りなおしたが、横でギルド長がジト目で副ギルド長を見た。


「貴方も見習うべきうちの1人でしょうに」


「俺はもう引退してるからいいんだよ」


 自分が今まで迷惑をかけてきた自覚があるバルバスは、引退していることを言い訳にしてそれ以上言われないように目線を逸らせた。

 その様子に仕方ないとそれ以上の追及はせずに資料を見てから再びバルバスに話しかけた。


「貴方もここまでの人数が集まるとは思ってなかったんじゃないですか」


「そうだな。敵の正体を知らないからってのもあるんだろうが、ここまで集まるとは思わなかった。今の時点で六百以上が参加するとはな。新人ばっかだからどれだけ戦えるのかはわからんが、()()()ぐらいの奴が何人かいるならこの作戦でもなんとかなるかもな」


「気にしているのはこの資料の北軍に配置される誰かですか」


「ああ、新人のくせに妙に戦いなれてやがるから気になってんだよ」


 他にも知っていることはあるがそれは言わずに無難に会話を終わらせようと返事をした。そして、会議中ずっと立っていた伝令兵にそばに来るように合図した。


「領主に伝えろ。俺が指示するのは今まで街にいた冒険者共だったが、何人か軍から冒険者を引き抜くって言っとけ」


 バルバスの伝言を聞いた兵は、そのまま伝えると自分が罰則を受けそうな言い方に困惑してしまい、どうするべきか戸惑っていると、そばで聞いていたギルド長が伝言の内容を当たり障りのないようにギルド長が言葉を言い換えた。


 伝令兵が出た後は、ギルド長がバルバスに言葉遣いを注意してから各ギルドの協力体制についての話し合いが続けられた。



読んでくださりありがとうございます

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