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剣と魔法のセカンドワールド  作者: K.T
1章 新たな世界 第一話 不思議な導き
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引越し完了



 昨日は急に引越しが決またので、今日の引越し業者が来るまでには荷物を整理していないといけなかった。急ぎで準備した引越し作業がようやく終わって、引越した先の自分の部屋で愁は疲れ果てた声で立ち尽くしていた。


「や、やっと終わった・・・」


 疲れた声とともに倒れこみながら、自分の部屋のパソコンの前に配置したベットに倒れこんだ。顔だけを上げて壁掛け時計を見ると、時間は午後の6時前になっていた。

 俺の予定では朝から引越し作業をしてお昼過ぎには終わっているはずだったのに、予定外の事が起きて大幅に遅れてしまった。なぜか、俺の荷物を片付け終わって一休みしてから明日の準備をしようと思っていた所に姉の荷物が来て、思ったより荷物が少ないみたいだったから少しくらい手伝おうかな?なんて親切心を出したのがいけなかった。段ボールの箱を2個3個と姉さんの部屋に運んでいるのに、一向に玄関にある段ボールの数が減らなくておかしいなと思った時には、途中で手伝わないということが出来なくなっていた。抜けようとすると手伝ってくれるんじゃなかったの?と言われて、なんやかんやあって結局は逃げ出すことが出来ずに最後まで手伝わされることになってしまった。


「今日はもうあまり動きたくない気分だけど、いつもの日課が朝の分が出来てないからな…晩飯は備蓄していたカップ麺にして朝と夜の日課をやりにいくとするかな」


 少しの間、ベットの上で休憩していたが、体を起こし日課に使う物と外に出る用意だけして、晩御飯のカップ麺を作ろうと思いキッチンに行こうとした時、部屋のドアがノックされた。


「起きてる~?起きてるわよね?さっきなにか言ってたもんね~。入るよ~?・・・ドアの前で何してるのあんた?」


 ノックされてから部屋に入ってくるまでに3秒もたってないのだが、俺のプライベート空間はいったいどこにいった。これからの生活の為にも、勝手に入ってこないように姉さんに注意だけはしておかないといけないな。


「いや、ノックされてからこっちがドア開ける前に入ってきたから…、普通はこっちが返事してから入ってくるものだよ?」


「そう、ところであんた、晩御飯はどうするの?」


「・・・」


 これは、改善してくれるつもりはなさそう・・・。


「え~と、見てわかると思うけどカップ麺でも作ろうかと思ってるんだけど」


 片手に持ったカップ麺を見せながら答えると、姉さんは片手を顔に当てると同時に頭を振り短く息を吐いた。


「あんたね~、せっかく引っ越してきた家でのちゃんとした食事がそれでいいの?それにお昼はコンビニのサンドイッチだったんだから、夜はちゃんとした食事をとろうとは思わないの?」


「え~疲れてるし、別にそこまで食事にこだわってなんか「食事当番」・・・」


 しばし無言の時間が流れて、小さなため息とともに愁のほうが折れた。


「わかったよ、わかりました。何か作るよ・・はぁ・・・」


「よろしい、いい子。一緒に住むからには私がちゃんとあんたの栄養管理もしないといけないからね。じゃないと私がお母さんに怒られちゃうわ」


 姉さんはそういうと、満足したようにいい笑顔で歩き出した。愁はその後ろを疲れた顔で歩きながら、時々カップ麺で3食すませてた事があったけど、これからはそんなこと出来そうにないなと思いキッチンまでついていった。


「今日は疲れてるし、簡単なものしか作らないからな」


 姉はリビングのソファーに座りテレビを見ながら手だけでOKサインを送ってきた。姉さんのご飯だけにハバネロでも大量に入れた料理にでもしようかな。でもそんなことしたら後で倍になって・・・いや、倍どころじゃすまないだろうな、想像すると怖いから絶対にやらないけど。

 そういえば、引越しで忙しくて忘れてたけど姉さんに聞いておかないといけないことがあったんだった。晩御飯食べた後にでも藤本さんの件を伝えてみるか。


 さしあたっては晩御飯だけど、さっき姉さん栄養管理どうこうとか言ってたからな。さて、簡単で姉さんが納得する晩御飯となると、どうしようか。



 15分後、キッチンの前にあるテーブルには料理が並んでいた。ミートソースパスタ、クラムチャウダー、サラダの3種類である。


 そして、姉さんは匂いにつられたのか料理を並べる前から席に着き、全部並べ終えてからは目線で俺に早く座れと言っているようだった。


「あっと、食べるのちょっとだけ待って」


そういうと、部屋からデジカメを取ってきて写真を1枚撮った。すると、その光景を不思議に思ったのか、姉さんが聞いてきた。


「あれ、あんた写真の趣味なんかあったっけ?」


「あ~いや、自分で何作ったか記録してるだけだよ」


「ふ~ん」


「それよりも、食べ終わった後でいいんだけど実は困ってる人がいてその人の事で姉さんに相談があるんだ」


「相談?いいわよ」


 写真の事でかなり怪しまれたが、相談事でうまく流せたのか好奇心より空腹が勝ったのか分からないがそれ以上の追及はなかったので、俺も席に着き食事をすることにした。


「では、『いただきます』」


 味見をするように少量ずつ食べた後に姉さんが話しかけてきた。


「うん、すごく久しぶりにあんたの料理食べたけど美味しいじゃない」


「それはどうも。とは言っても作ったのはパスタのソースとかくらいだけどな」


クラムチャウダーはクラムチャウダーの素を使ったし、サラダなんて千切って切って盛り付けただけだしな。


「そうなの?スープにパセリ添えたり、サラダの盛り付けもきれいだったし、私の好みになるようにドレッシングにも少し手を加えてるでしょ?お店で出てきても文句のないぐらいの出来上がりね。今後の食事が楽しみだわ」


「そんなこと言ってほめてもずっとは作らないからな」


 ここで姉さんの調子にのせられていると、いつの間にか食事当番がずっと俺になるなんてことになるからな。今日の引越しの時の事もあるし警戒しとかないと。


「何を警戒してるのよ、思ったことを言っただけよ?」


「ほんとかよ」


「ええ、今後の料理も楽しみにしているわ。最初はカップ麺で済ませようとしてたから、もう料理はしてないのかと思ったけど、ちゃんと料理を作ってあんたが食べてる事をお母さんに報告も出来るからよかったわ」


「今日は引越しで疲れたからカップ麺でちょっと楽しようとしただけだよ。ちゃんと食べてるって」


 そして、あらかた食べ終えて食後のコーヒーを飲んでいる時に昨日に聞いた藤本さんの件を相談することにした。


「それでさっき言ってた相談なんだけど、1年の男子生徒に橘木 誠(たちぎ まこと)って人がいるのは知ってる?」


「知ってるわよ、去年完成した今の本校舎を建てるのにすごい額の寄付金したり、日本の大企業のTOP10に入るような大企業の息子でしょ。って、あんたのクラスメイトじゃなかったかしら?」


 姉さんは逆に何で知らないの?って顔で俺を見てきた。


「いや、まあ。そうらしいんだけど・・・」


「お姉さんは今とても不安です。入学して一か月以上、二か月が経とうとしているのにクラスメイトの名前すら知らない弟の事が・・・」


「え~っと、あまり接点がなかっただけだよ。そんなことより、そいつとその取り巻きが同じ1年の藤本 理奈(ふじもと りな)って女子生徒にしつこく付きまとってるみたいなんだ。それで、昼休みの時間が友達とご飯も食べことも出来なくてそいつからいつも逃げるようにしてるみたいなんだけど、もし出来るならどこかの教室か空き部屋を使わせてあげることできないかな?」


「う~ん、出来なくはないと思うけどあんたの話を聞いただけで判断するわけにもいかないから…そうね、一度生徒会室に連れてきなさい、それで話を聞いて判断しましょうか」


「わかった。じゃあ、週明けの月曜日の昼休みにでも連れて行くよ」


「そうね、その日はその子にお昼は生徒会室で食べながらにでも詳しく話しましょうと伝えておいて。それにしても、あんたその子とどういう関係?仲良くなって友達になったの?」


 姉さんは、何かを期待するようにこっちを窺いつつ聞いてきた。


「違うよ、偶然その場に居合わせて知り合っただけで困ってたみたいだから、何とかできそうな姉さんに言っただけだよ」


 俺が違うと言った時に姉さんが少し悲しそうにしたけど、気づかない振りをして残り少なくなったコーヒーを飲み込んだ。


「そっか……。ねぇ、さっきはぐらかしたみたいだけど、愁はちゃんと同級生に仲のいい子か、友達はいる?学校で時々見かけても、いつも一人でいるから少し心配なのよ。お父さんやお母さんにはそこまで詳しく言ってないからあまり心配してはいないと思うけど、愁の中学校の時の様子を知っているから高校に入って上手くやれているのか心配のメールが私にくるのよ?」


「純とは話したりはしてるよ…」


「そう…。愁、前にも言ったことがあるけど昔の事を忘れなさいとは言わないけど、いつまでも過去に捕らわれて(・・・・・・・・)いたらだめだからね。ましてや、復讐(・・)なんて考えてたら絶対にダメだからね」


「…」


 返事が返ってくることはないのが分かっていたのか、姉さんは食べ終えた食器を持って席を立ちキッチンに歩いて行ったので、俺も同じようにキッチンに向かい食器を片付けに行った。


 そして、俺が洗い物をして姉さんが拭いて食器棚にしまうように役割分担しながら、少し重くなった空気のまま会話もなく食器のかたずけをしていると、姉さんが話しかけてきた。


「ねぇ愁、‥昨日は詳しくは聞かなかったけどやっぱりまだあの町で暮らすこと(・・・・・)は出来そうにないの?」


 姉からの問いかけに、愁は聞こえてはいるが返事を返さずに黙って洗い物をしていた。


「お父さんとお母さんなんて、このままもう家には帰ってこないんじゃないかと心配してるんだからね。前にも言ったけど、もし本当に無理なら家を引越してもいいってお父さんやお母さんも言って…」


「姉さん」


 姉の言葉を遮り、手を止め姉のほうへ振り返る。


「大丈夫だから、必ず家には戻るよ。だけど、ごめん…今はまだ‥あと少しだけ待ってほしい、遅くともこの一年で気持ちの整理ができると思うから…」


 束の間、無言の時が流れたが姉のほうが折れて大きく息を吐いた。


「分かったわ、じゃあお父さんとお母さんにも帰る気持ちがある事は言っておくからね。よし、じゃあこの話は終わり!ところで・・・」


 仕方がないわねとでも言いたげな顔でそう言うと、今度は嫌な予感がする笑顔で話しかけてきた。


「この後、外に出かけるんでしょ?」


「な、なんで・・」


「部屋に行った時に出かける用意してたじゃない?ついでだからお風呂上がりのアイスでも買ってきてよ。お金は渡すから」


「え~めんどくs…」


「寮にいた時に夜に抜け出していた人がいるらしいのよ。そんな規則を破る人には普通は親に連絡がいくでしょうね」


 寮にいた時の事はこの引越しで清算したのでは…?そんな思いを込めてしばし見つめあう。


「……」


「……買ってきます」


「よろしい、でもあまり遅くならないようにしなさいよ。もう夜の8時前なんだから。それにしても、あれからずっと続けているのね。寮を抜け出していたのもその為なんでしょう?心配性のお母さんには言わないでいてあげるけど無理しないようにしなさいよ。何かあった時は買い物を言い訳にしていいからね」


 なぜ姉さんに寮を抜け出していたことがばれているのか分からないが、寮を抜け出していた事を両親には言わないでいてくれていたんだな。


「わかってる。ありがとう」


 これからは見つからないように寮を出ていた手間がない分には夜の日課をするのも楽になるけど、外出時のお使いが増えそうなのが不安だ。でもこんな時間に夜に抜け出ている所を、警察や教師にでも見つかると姉さんに迷惑が掛かるから見つからないようにしないと。見つかった時に買い物を理由にしても、納得してくれない場合もあるだろうから、今まで以上に見つからないように気を付けておかないといけないな。


 話が終わり食後のかたずけを終えて部屋に戻り準備をした後、部屋を出ると姉に千円札を渡されてなるべく早めに帰るようにと言われて家を出た。


 その後、家を出てから2時間ぐらいで日課を終えて、コンビニで頼まれていたアイスを買ってから帰ったのだが、姉さんから前は1時間ぐらいで帰ってきてたのに遅いから心配したと何も危ないことはなかったかと聞かれてから、朝に出来なかった分をしたから遅くなってしまったと話したのだが、家に帰るのが夜9時を過ぎる場合は姉さんに連絡を入れるように言われた。守らないと夜の外出を認めないと言われたので慌てて必ず守りますと誓うことになった。


 そして、慌ただしくあった引越しも無事終わり一日が終わると、いよいよ明日の午前10時から【セカンドワールドライフ】の先行プレイが開始となる。




お読みになっていただきありがとうございます。

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