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剣と魔法のセカンドワールド  作者: K.T
第四話 魔術師の試練『第一スキル解放』
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看板娘(自称)との約束


 結局あの時の再試合は途中で中断した後、最低限の説明を言うだけ言ってエリアル(師匠)が戻ってくることはなかった。


 急に警告音のような音が鳴った時には、最初に会って契約したとき以来の焦り方をしていたからな。何かが起こったのは分かったけど、あんなに中途半端に終わったからには再び再試合の予定ぐらいは入れられるかと思っていた。


 翌日からは家に帰ってログインできない日以外は、エリアルからリンに伝言は預かっていないか確認してはいたが音沙汰はなかった。結局、金曜日に看板娘(自称)アイリを案内する日まで何事もなく過ごせているからいいのだけど。


 ログインして小屋で目を覚ましてリビングに行くと、一応今日も連絡はないかリンに尋ねた。


「リン、今日もエリアルから連絡はないか?」


「はい、ありません」


 今日も連絡はなしか。一応伝えておこうかと思っていたこともあるから、伝言は頼んでいたけど無理だったか。連絡が取れるなら返事だけでも聞きたかったんだがな。まあ、ここの場所は好きにしてもいい許可は前にもらってはいるから大丈夫だろう。


「そうか。それじゃあ、今日は前から言っていた街の子を招待するから、依然に伝えた通りにもてなしてあげてくれ。リーナとミュウもすぐに来ると思うからよろしく頼む」


「かしこまりました」


 今は16時過ぎだが16時30分ぐらいに迎えに来てほしいと言っていたから、時間的には余裕で間に合うな。少し街の様子でも見ながら向かうとするか。


 小屋の扉を鍵を使って前にリンが猫の姿で案内してくれた街の裏道に出ると、今日の予定で招待するまでにあった色々を思い出しながら北の大通りを目指した。


 最初は口約束で話をしたから約束を守るかと思って連れてきて案内するだけの簡単な用事だと思っていたのに、アイリの親の反対があったりしたからかなり面倒な事になりかけていた。まさかゲームの中で他人の親子喧嘩に巻き込まれるとは思わなかったから、あの時はかなり居心地が悪かったな。安易に誘ったりしたから、原因は俺にもあるけど思いもよらなかったから成り行きに任せるしかなかった。


 親の心配の理由が、男の冒険者の家に娘が行く事に加えて、知り合って間もない人だからという至極当然の理由だったので、俺には説得するのは無理だと早々にあきらめて、時間をおいてまた誘ったらいいかと考えだしていたが、親子喧嘩中に連絡があったリーナとミュウからのメッセージに今の状況を伝えて返信していたことにより、少し時間が経って店まで来たリーナとミュウが瞬く間に説得してアイリの両親は一応納得したようで話がまとまろうとしていた。その後の話し合いは俺抜きで進められていたが、途中でミュウが一度抜けてきて後で決まったことを伝えると言ったので、後は任せて俺は店を出ようとしたのだが・・・。


「貸し一なの」


 あの時、ミュウが笑顔でそう言った後に一瞬寒気がした気がするのはゲームの不調だったのだろうか。アイリとの約束は守れそうだし2人のおかげで助かったのは事実だから、この店の食事でも奢るぐらいのお礼をしようと思ってはいたのだが。


「姉さんと違ってミュウとリーナなら理不尽な要求なんかはしないはずだよな・・・しないよな」


 思わず一人呟いた時に街の大通りまで出ると、今までと違う街の雰囲気に気付くとさっきまで考えていた事は忘れて周囲で話していることを聞きながら大通りを歩き出した。


 周囲の話を聞きながらアイリがいる宿の近くまで歩くうちに、聞こえてきた話と街の状況を整理するとざわついている内容は大体把握できた。


1.共通して話しているのはプレイヤーである事

2.黒い魔獣の目撃情報(東で目撃情報)

3.街にいつもいた兵隊が極端に少ない


「街の人もいつもより人通りは少ないけど、普段と変わりはないが・・・街を見て回っていた兵隊を全然見かけないのはいったい」


 数日たってプレイヤーが落ち着いたのもあるだろうが、普段絶対にいた場所にまで見かけないのは何か理由がある気がするな。プレイヤーが話している黒い魔獣も気になる所ではあるが、ひとまず目的地には着いたから10分ほど時間は早いが迎えに来たことだけは伝えておこうか。


 まだ準備中なのであろう宿の扉を開けて中へと入った。中に入ると受付の裏にある厨房の中で人の動く気配はあるが、ここから見える位置には人はいなかった。


 このまま待つか声をかけるか迷っていると、奥の方で階段から人が下りてくる音が聞こえてきてすぐにアイリが顔を出すと、入り口の扉前に立っていた俺に気付いた。


「やっほ~おにいさん。約束の時間前に迎えに来てくれるのはポイント高いよ!!」


「なんのポイントだよ」


「ん~、モテポイント?」


「なんだそれは・・・」


「さ~?最近来た冒険者の人達が食事してるときに言ってたよ?時間より早くに待っていて、全然待っていないよっていうのがポイント高いんだって」


 よくわからんが、プレイヤーが会話していたことの内容を話題にしているなんて、本当にNPCと言われている存在なのか?開発者の誰かが操作しているとしか・・・。


「なに?おにいさん。そんなに見つめて~おにいさんにもようやく看板娘の魅力で惚れちゃった~?」


 何かを参考にしてポーズをとって投げキッスの真似をしたのだろうけど、恥ずかしがってまでやるならやらなければいいのに。


「・・・・・」


「ちょっと・・・冷めた目で無言はやめてよ~」


 1人で照れたり恥ずかしがったりアイリが騒がしくしていると、厨房の奥からアイリの父親だと思われる熊のように大きな体格のいい人が出てきて、おれの両肩に手を置くようにして顔を寄せると、おれにだけ聞こえる声で話しかけてきた。


「帰りの時間は守れよ。もし娘に何かあったら・・・」


「18時にはこちらに戻れるようにお届けします。危険や被害がなかった事は娘さんとリーナやミュウにも後で聞いてください」


 娘を心配する男親にとっては気休めにもならないだろうけど言っておいて損はないだろう。アイリの父親の事も聞いてはいたから、本当はリーナかミュウが迎えに来た方が良かったのだが、2人はサプライズの準備をして出迎えるのと、もし街であの時のようなトラブルがあったらいけないからという事で、手の空いている俺がアイリを連れてくるしかなかった。


 出来れば俺はアイリの両親には会わずに、アイリが出かけてくる事だけを伝えて出発できていたらよかったんだけど、アイリと雑談をしたのが良くなかったな。アイリに出会った時、先に来たことだけ伝えて店の前で待っていればよかった。俺が調べたゲームのNPCではこんなに自然と会話が出来ないはずなのに、何の違和感もなく話せるから普通に会話を続けてしまった。


 だから、今アイリの父親に睨むように両肩を掴まれているのは、セカンドワールドの開発陣がすごすぎるせいだなと責任転嫁をしていると、アイリが父親の背中を勢いよく叩いた大きな音とともに俺から離れるように父親に言いながら、今から出かける事を伝えていた。


 アイリが急かすように俺の背中を押しながら店を出る間、アイリの父親は何度も気を付けるようにと話すのを、アイリはあしらうように聞き流しながら店の前まで出て振り返る事もなく歩き出したが、見送っているアイリの父親には睨まれ続けているのを背中に感じていた。一度振り返った時にはまだ睨まれたままだったが、すぐに店の中から出てきたアイリの母親に何か言われながら店の中に戻って行った。


 面倒な事にならないように時間厳守で帰らせることを心に決めながら、街がいつもと違う事について歩きながらアイリにも尋ねることにした。


「街の兵隊の人達が少ないみたいだけど、何かあったか噂話でも聞いてたりしないか?」


「え、う~ん・・・特に大きな事件があったわけでもないし・・・・・よくお客さんで話しているのを聞くのは黒い魔獣の事くらいかな?」


「そうか」


 俺の知っている情報と変わりないな。街の人でも何が起こっているのか分かっている人はいないのか。極端に兵隊の人と出会うのが数ないのとは別に街中ですれ違う兵隊の人達の中に、今までになかった緊張感を持った人が含まれているように見えるのが、ただの気のせいだったらいいんだけど・・・。


「・・・何か気になる事でもあるの?」


「いや、いつもと違ったからちょっと気になっただけだ。それより、子供のころの記憶の場所に行けたらどうするんだ?」


 今日の事を楽しみにしている事を聞いていたのに、若干不安そうに聞いてきたアイリに申し訳なく思ってこれ以上この話題は話さないようにして、この後のアイリの予定を聞きながら街の中央広場に二人は向かった。



お読みくださりありがとうございます

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