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剣と魔法のセカンドワールド  作者: K.T
第四話 魔術師の試練『第一スキル解放』
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戦場


 大陸内部、辺りが険しい渓谷や山々に挟まれた場所に建てられた砦。


 現在その砦では、大陸の中心から迫りくる異形種(・・・)との戦闘が起きていた。辺りには破壊音が大きく鳴り響き、砦から見える景色は長時間続く戦闘によって作られた荒れた地形に、数多くの異形種との戦闘によって亡くなった兵士の死骸が砦の外に野ざらしになっている様子は、さながら地獄絵図の様相だった。


 しかし、この砦には一定の周期で異形種の襲撃が行われてきた為に、長く砦にいる兵士達には慣れた光景ではあった。だが、今回の異形種による襲撃は普段の周期より大幅にずれていた事で、時期を考えて砦に集められるはずだった兵力が集められておらず、砦の常駐兵力の不足により苦戦する戦場となっていた。


 それでも、砦にいた大部分の兵士たちが普段から精鋭で構成されている最重要砦だったので、異形種の撃退は時間がかかりながらも順調に進められていた。


―――終戦まじかに不測の事態が起こるまでは・・・・・



 長く続いた戦闘も異形種の数が目に見えて少なくなり終わりが見え始めて、あと数刻もすれば異形種を殲滅できると砦の指揮官が兵士に伝えて士気を高めていた時、それ(・・)は起こった。


 大陸内部の異形種が攻め寄せてきていた遥か後方より、一筋の黒い閃光が天に向かって放たれた。


 突如放たれた黒い閃光は、天高くまで昇っていく途中で大陸内部を覆う結界(・・)にぶつかり、激しい衝撃音と光を砦まで響かせた。結界と黒い閃光との衝突は続き、空を覆う結界にヒビが入りそのヒビが徐々に広がってさらに大きく広がろうとした時。

 この砦を含む大陸各地にある異形種の襲撃から守る()()の砦の中心部から一筋の光が結界の表面をなぞるように黒い閃光の衝突地点に集まり、結界の全体が虹色に輝くと結界にはいっていたヒビはそれ以上広がることはなかった。


 その後も黒い閃光による結界との衝突は続いていたが、強度をあげた結界に阻まれ続けて大陸内部より放たれた黒い閃光は(・・・・・)次第に勢いを無くして消えた。


 今までにない異変が起こったことにより、砦にいた兵士たちの間に混乱はあったが、すぐに優秀な指揮官により混乱は広がらずに収まった。突然の事に戸惑っていた兵士たちではあったが、指揮官の立て直しにより異形種の殲滅に集中しなおすことが出来た為、不測の事態ではあったが砦の兵士たちにはほぼ被害はなかった。


 砦からかすかに見える黒い閃光と結界がぶつかった空の上。その場所には黒く輝く■■の残滓が残っていた。■■の残滓から徐々に発生した黒い雲は、まるで意思があるように砦に向かって急速に広がっていった。

 空中での戦闘に対応していた砦の指揮官や兵士の中には、黒く暗い雲があることに気付いていた者もいたが、地上の戦闘も終わっておらず空の異常を即座に解決するすべもなかった為に、出来ることがないまま状況を放置した。その結果、その後の空での異常に気付いた者が少数いたが、指揮権を持つ者まで情報が回らなかった為に、最善の手をうてる時を見逃してしまった。


 黒く輝く■■は次第に集まりやがて一つの異形種を生み出した。異形種は生まれた後も周囲の■■を吸収して大きくなりながら、異形種に与えられた命令と種族の本能のままに自身にとって必要なものを理解すると、状況に適応するために自身の体を五つに分けた。


 ―――もっと■■がある場所へ


 五つへ別れた異形種は、結界を強化した五つの魔力の痕跡をたどって移動し始めた。五体の異形種は、それぞれ結界から漏れ出た五種類の砦からの魔力を吸収しながら痕跡をたどり、自身の固有の能力を使って体の形を変えながら黒い雲の上空から降り注ぐように五つの砦を襲撃した。


 黒い雲の流れる速さに疑問を持った者たちが、何かいるかもしれない事に気づいた時には、すでに砦の上空から巨大な影が近づいてきていた。砦の兵士たちは空からの襲撃を想定していなかった為に、急な襲撃によりまともに対応することも出来ずに、漆黒の巨大な竜のような異業種を砦の中央部の広場へと侵入を許す事となった。異形種の着地により周りを覆う砂埃も晴れないままに大きな墜落跡の中心から動き出した異形種は、自身の求めるものが砦の中心にある大きな建物の地下にあることを感知した。異形種は今の大きな体では妨害の程度によってはそこまでたどり着くのに時間がかかりすぎる事を懸念すると、五分の一に別れた体をよりさらに弱体化してしまうことになるが、目的の場所に確実にたどり着くために、自身の体を周囲を破壊する巨大な竜の本体と目当ての物を見つける液状の本体の二つに分けて行動した。


 結果的に異形種の判断は概ね正しかった。砦の兵士たちは城壁の内側で暴れる巨大な異形種を倒すことに集中する事となり、巨大な異形体を倒す兵士と砦の外で異形種を倒す兵士で戦力を分散して対応しなければならなかった為に、戦闘が終わって広範囲の感知魔法を使うまでは別れたもう一体の異形体は見つからずに行動できていた。


 砦を守る者たちにとっては、戦闘の他にもいくつか不運な事が重なったが為に、事態の把握が遅れた事も異形種には有利に働いた。


1 感知魔法により発見した場所が砦の重要機密の場所だった為、その場所に行くには砦にいる一部の者しか知らない通路にて向かわなければいけなかった事。

2 報告を受けた時、砦の最高責任者だった者が巨大な異形種との戦いにより一時的に意識を失っていた事。

3 副指揮官は習慣として義務付けられていたお飾りの副指揮官であった事。


 副司令官は戦闘能力も低く、ただの義務による砦への配置だったのに加えて、本来なら襲撃の時には本国に帰っているはずだった為に、自身の行動によりもし機密の情報を話して勘違いであった場合の責任を取ることを恐れた副指揮官による判断の遅れによる時間の浪費があった。幸いすぐに意識を回復した最高責任者の判断により、最悪の事態を想定した指揮官が急いで兵士と共に向かった。

 だが異形種は見つかる事はなく、砦内での感知魔法にも反応はなかった。その後の調査や後始末のあとに、異形種は結界を壊すことは出来ずに逃げようとして結界によって消滅したとの結論となった。


 後日、結界の消耗により新しい動力のコアを持って来た一人の術師が、大陸の外部で異業種の痕跡を見つけるまでは・・・。

 結界の外で異形種の痕跡を見つけた事の報告を受けた砦の最高責任者は、自身が懲罰を受けることも恐れずにありのままを通信魔法具で緊急の報告として本国に伝えたが、最高責任者自身の過去にあった本国での因縁も関係してまともに取り合ってもらうことは出来ず、砦の責任者として何もできない時間だけが過ぎ去っていくしかなかった。


 それでも、最悪の事態になる可能性を無くせるように、個人的な知り合いへ連絡が出来る通信道具を使用した。


~~~~~


 時を少しさかのぼり、大型の異形種の戦闘が砦で起きていたころ。


 二手に分かれた異形種は、砦と結界が出来てからは一度も抜けられたことのない結界の心臓部に当たる部分まで侵入することが出来ていた。だが、異形種にとっても想定外があった為に結界の破壊という一番の目的を果たすことは出来ていなかった。

 たとえ力を分けたとしても大型の異形種で砦を破壊する想定だったが、想定以上の戦力で抵抗されてしまい砦の制圧は出来そうにない事。さらに、結界の心臓部を直接破壊するには戦闘力の大部分を分けて弱体化した状態では心臓部を破壊できるだけの力が残されていなかった。

 そのため、結界の動力となっていた主要なコアのエネルギーを吸収する手段に切り替えたが、膨大な量のエネルギー全てを吸収することは出来なかった。本来は動力となっていた心臓部の破壊・機能停止で大陸内部を覆う結界を無くすことが一番の目的であったが、エネルギーの吸収途中で異形種は地上で自身の分けた異業体が倒されたことが分かると、このままでは全てを吸収する前に戦闘が起こる可能性が高い事を理解したために、第二の目的に切り替えて行動した。

 吸収したエネルギーと同化するように体を作り替えながら結界の突破を試みた。その結果、全ての砦で行われていたコアエネルギーの吸収により弱体化した結界に消耗しながらも、結界にほんのわずかな穴をあけることで結界(・・)を越えて大陸外部へ抜けることに成功したのだった。


 結界を抜けた異形種は、兵士に見つかって倒されないよう一刻も早く砦から遠ざかる為に、砦の地下水道から砦の近くの山脈から流れる川を利用して誰にも見つかることなく移動した。


 しばらく流れるままに移動していたが、異形種は近くに自身より強い者がいない事を感知してから川から上陸すると、まずは消耗した力を補うために周囲にいる魔力を持つ魔獣を捕食し始めた。だが、いくら捕食しても結界により消耗した力は微々たる量しか戻らなかった。異形種は今のままでは見つかれば倒されるだけだと砦での戦闘で理解していた為、自身の力を取り戻すことは後回しにして別の戦力を得ることにした。


 異形種は自身を守りながらも敵を倒せるようにする為に、異形種の自身の種族の特性を利用して今まで吸収してきた魔獣の姿形そのままに意識を共有する個体を複数生み出した。異形種より生み出された個体は、小型から大型までの様々な魔獣を次々に倒しては吸収して、複製を繰り返し続けて戦力を増やした。


 時間が経つとともに、増え続けた異形種の複製魔獣は森や山から溢れ出したことで倒される個体も出てきたが、本体が狙われる事だけはないように慎重に行動しながら戦力を増やしていた。今まで倒されていた複製された個体は、ほとんどが人種により討伐されていた為に、力を取り戻すまでは避けるように行動していた。


 だが、ある時偶然にも狩ることが出来た人種は何故か吸収は出来なかったが自身の力が他の魔獣を狩った時よりも大幅に戻ることを知った。異形種は力を取り戻す手段として、砦の兵士よりも楽に倒せて力が多く得られる獲物を探しだして狩ることで力を取り戻すことを第一優先に切り替えた。


 異形種は始めに獲物を見つけた場所から放射線状に索敵し始めると、数日もしないうちに力を取り戻すために必要な獲物が数多くいる場所を発見した個体が現れた。


 感知できるだけでも数百は獲物がいる街があることを・・・



読んでくださりありがとうございます。

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