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剣と魔法のセカンドワールド  作者: K.T
第四話 魔術師の試練『第一スキル解放』
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食後の再試合


 食後の時間に話す事もなくなったシュウは仲よさそうに会話している3人の話を聞きながら、エリアルは試練をいつ始めるのだろうかと、この後の事を考えていた。


 少しの間、会話を聞きながら今後の予定を考えていると3人の話しで少し興味をひかれる話題を話しはじめた。この後の予定を考えていたのをやめて耳を傾けてみる事にした。


「2人のステータスを見て思ったんだけど、2人とも珍しい職業になっているのね。私もすべての職業を知っているわけではないから何とも言えないけど、ミュウの巫女は初めて見た職業だしリーナの精霊術師は人種でなっている人はほとんどいないはずよ」


「そうなんだ」


「巫女を見たことがないの?・・・だったらあの時は、周りの人には変な踊りだと思われていたって事なの?」


 ミュウが何やら小声で呟いてショックを受けている様子だけど、詳しくは聞かないでおこう。


 それにしても、2人とも珍しい職業になっていたんだな。イメージでしかないけどエルフで多くの知識とこの世界で長く生きてきたであろうエリアルが知らない職業だったのなら、巫女は魔術師以上に珍しい職業なのかもしれないな。俺自身がおそらく普通ではない出会い方をして魔術師になった訳だから、もしかしたら2人も通常とは違う形で職業を得たのかもしれないな。教えてくれるか分からないが聞いてみるか。


「俺はこの場所で師匠のエリアルと出会って職業を得たけど、2人はどうやって職業を得たんだ?たぶん冒険者ギルドで教えてもらったのではないと思うんだけど」


 二人は顔を見合わせた後に、リーナから精霊術師になった時の事を簡単に話し始めた。


「私が精霊術師になったのは、街の中でホムラと出会った時かな。街の中で一人で散策している時に不思議な現象に出会ったんだ。なんだかこう火を求めてさまよう炎?みたいなものを見かけて触ってみると燃えているのに熱さを感じなくて、路地裏で暗いはずなのに明るく無かったからなんだか弱っているような気がしたからいろいろと何とかしようと試していたら、いつの間にか炎が消えてホムラが現れていたから驚いていると、いきなり称号を手に入れたって聞こえて確認してみたら職業が精霊術師になっていたの」


「その時にその子の名前を教えてもらわなかった?そしてあなたの名前も教えたりしてない?」


「そういえば、自己紹介はしたかもしれない・・・かな?。あの時は他にもいろいろな事があったから詳しくは覚えていなくて・・・」


「そう、でもきっとその時のリーナの行動が精霊に好かれたのね。精霊は滅多に人前には現れないから目にすること自体かなり珍しい事なのだけど、ましてや街の中になんて来ることはめったにないわね。それと、精霊にとって名前はとても大切なものだから簡単に人に教えたりはしないのよ。精霊は契約するときまで決して名前を人に明かしたりはしないから、とてもリーナの事を気に入ったのね。私の知り合いにも精霊術師は一人しかいないから私はそこまで詳しいことはアドバイスできそうにないのが申し訳ないわね」


「そんなことないよ。冒険者の先輩として心得や常識を教えてもらって、エリアルにはとても感謝してるよ」


「リーナはいい子ね~」


 エリアルがリーナの頭を撫でて、リーナも少し照れながらもされるがままになっていた。


 リーナも俺と同じように自分から選んで職業を選んだわけではないのか。それでも前にステータスを見た限りでは特に俺の様なデメリットはなかったから、自由に変更やサブ職業の選択は出来そうだな。


「ミュウの時は観光しながら街の大通りを歩いている時に、脇道の先に鳥居と神社を見かけたからせっかくだからお参りをしようと思って立ち寄った後に称号と巫女の職業を手に入れたの。でも、その時に立ち寄った場所が職業を手に入れた後には見当たらなくていつの間にか大通りに立ってたから、また(・・)狸か狐にでも化かされたと思っていたの」


「ミュウ!?またそんな不思議な事に遭っていたの!?大丈夫だったの?怪我はない?何か無くなったものは?」


 リーナもミュウが巫女の職業を得た時の事は聞いていなかったみたいだな。さっきまで撫でられていたリーナが今度は心配そうにミュウに抱き着いて撫でているいるけど、体験した本人は何ともなさそうだから特に問題があったわけではないんだろうけど、人によっては恐怖体験になりうるよな。エリアルはミュウが体験した話しを聞いてこの街にそんな場所があったなんてと驚きつつも今度詳しく調べてみようかしらと興味をひかれているようだった。


 俺もミュウの話には少し気になる所はあったが、それよりも食後の休憩にしては少し長く時間を取っているし、さっきも考えていたが今後の予定を考えるとあまり時間がなさそうだから、楽しく話しているところ悪いけど俺の用事を先に終わらせてもらおうかな。 それに、先ほどの会話は俺も興味があったから話に参加したけど、正直なところ女三人が楽しそうに話している対面で聞こえてくる会話を聞いているのはなんだか居心地が悪かったので、出来る事ならば早く師匠の黒鎧との再戦を終わらせて他の事をしていきたいと思い始めていた。


「ところで師匠、そろそろ言葉でのアドバイスより実戦での師匠のアドバイス(再挑戦)を俺にもしてもらっていいですか?」


「あ・・・・・そうね。弟子(・・)は最低限強くなっているようだから、一度実戦のアドバイス(リベンジ)をしましょうか」


 エリアルは話すうちにこの後の事を思い浮かべた為かニヤリと笑いながら席を立ってテーブルに両手を置いて見てきた。


 さっきの師匠(仮)の表情マジで忘れてたのか・・・。もしかしたらあのまま黙って話を聞いていれば今日は解散の流れになっていたのかもしれないな。それならそれで・・・いや、後で思い出されるほうが面倒になりそうだからさっさと解決しておいた方がいいよな。師匠(仮)が一生思い出さない方に期待するよりいいはずだ。


「まあ、ほどほどでお願いしますよ。師匠」


 シュウも席を立って先に小屋の外へと向かうと、どうしようかと顔を見合わせて座っていた二人にエリアルがこの後の事を軽く話した後、3人は小屋の裏手へと向かった。



 先に小屋の裏手の柵に囲まれた広場で、シュウが黒鎧と対戦するのに問題ないぐらいまで体をほぐして戦闘の準備(・・・・・)が終わったぐらいに3人は広場に現れた。シュウはステータス画面を閉じながら、準備が終わった事をエリアルに伝えた。


「師匠、こっちは何時でも準備できてますよ」


 3人は広場の柵の前まで話しながら来た後、エリアルだけが広場の中に入ってくるとシュウのそばまで来てシュウにだけ聞こえるように話し始めた。


「さてっと、シュウがこの試合に負けても魔導書は渡すつもりだけど、あまりにもふがいない戦闘内容だったらいったんお預けにするから、全力で挑むのよ?一応もし二人に見せたくないなら誤魔化す手段もあるからね」


「別に戦闘風景は隠さなくていいですし手は抜かないですけど、あの時最後に使った武器まで使うかどうかは対戦相手次第ですよ」


「ふ~ん、そういうこと言っちゃうんだ」


「まあ、事実ですから。でも、あの戦闘の時に本来の剣の性能まで発揮されていたら・・・負けていたのは俺の方でしたけどね」


「・・・気づいていたのね」


 見てわかるくらいにあからさまに文字や模様が刻まれている大剣がファンタジーの世界でただの鉄の剣と同じ性能の可能性は低いだろうからな。あの時は制限をかけていたのは間違いないだろうと考えてはいたけど、やっぱり思っていた通り全力ではなかったんだな。


「今回も武器にだけは(・・・)制限をかけているわ。武器の性能差だけで勝っても嬉しくはないし、シュウの訓練にもならないからね。でも・・・もしそれでも貴方がいい勝負が出来ている時は、武器の制限を外す準備はしておいてあげる。せいぜい頑張ってみなさい」


 エリアルはシュウの肩をポンと叩いた後、2人がいる方へと歩いて行った。


「言った事に嘘はないけど、始めから切り札を使う前提の立ち回りも考えておいた方がよさそうだな」


 エリアルが広場の柵の出入り口まで行って振り返えると、前回と同じように本からページを一枚切り取って地面へと置いた後、広場から出て行った。


「さて、出てくるのは最初から制限を外した黒よろ・・・・・なるほどね」


 地面へと広がった魔法陣から出てきたのは、白銀の甲冑で片手剣と盾(・・・・・)を装備した相手だった。


 未知の相手になるが黒鎧以上の実力はあると想定しておいた方がいいだろうけど、とりあえずはいつも通りに最大限の警戒をしつつ戦いながら探っていくしかないか。


「『スプリッド・フォーカード』(マナ19/20)」

【ワンドⅣ(風)】【ソードⅢ(大剣)】【ワンドⅨ(闇)】【ソードⅥ(大太刀)】


 展開されたカードの中からソードⅢ(大剣)を選んで具現化させて相手へと構えると、白銀の甲冑も剣と盾を構えて二人が制止する。いつ戦闘が始まってもおかしくないほどに対峙した二人の間に緊張感が増していった。


「始めるわよ、シュウ‼・・・リベンジマッチよ!ブレイくんやっちゃいなさい‼」


 対戦相手が変わっていたらリベンジじゃない気がするんだけど・・・余計な事を考えつつもシュウは前回戦った時以上の甲冑の動きを警戒して様子を窺っていたのだが、白銀の甲冑は待ちの姿勢で動くことなく、むしろわざと隙を作っているように見えた。相手の意図は分からないがこのまま動かないでいると見ている師匠が今にも何か言ってきそうなので、罠かもしれない事を警戒しつつこちらから攻撃してみる事にした。


 白銀の甲冑が構える剣がわずかに下がった剣先の上から、大剣の間合いで左から袈裟斬りに振るったが予想通りに盾で受け流された。相手の反撃が来るかと思い、防ぐか避けれるようにいくつかの反撃パターンを想定していたが、相手からの反撃はなく後ろに飛ぶことで距離をとることに成功した。

 その後も大剣の具現可能時間が残り少なくなるまでは、シュウが銀鎧に攻撃して白銀の甲冑が剣や盾で防ぐ攻防が繰り返された。


 一度距離を取ってから、先ほどから感じていた白銀の甲冑の動きについて確信を得ていた。


 さきほどまでのやり取りはまるで指導だな。わざと隙を作って正しく攻撃出来るのか、罠には気づくのかどうか、攻撃後の反撃をどういなすのかまでおれの実力を測られている感じだな。エリアルの意図で指導しようとしているのかは分からないが、もし違うのならば少し癪に障るな(・・・・・)・・・。


 白銀の甲冑の戦い方はおれの実力を測りつつも、俺の事を格下(・・)だと決めつけているように感じられる。確かにおれも白銀の甲冑の意図を図ろうとして倒そうとまではしていなかったが、全ての攻撃を受け止めた後に反撃できる時にもしてこなかったのは、いつでも俺の事を倒せるという自信の表れなんだよな。ただの指導ならこのまま付き合っても良かったんだが・・・。


「プラン変更だ。まずはその指導をやめさせてやるよ」


 シュウは素早く距離を縮めると先ほどより速く威力のある一撃を繰り出して、白銀の甲冑が盾で受け流すのを予測していたので、盾の中心点へと軌道を合わせて大剣を叩きつけた。盾で受け流すことが出来なかった白銀の甲冑は、わずかに後ずさりながら崩れた体制を整えようとしている所に、大剣から大太刀へと武器を替えたシュウが剣と盾の間を下袈裟切りに大太刀を振るった。


 崩れた体制でも剣による合わせで勢いは減らされたが胸の甲冑に切り傷を与えて、その後も攻め手を緩めることなく、相手が守勢に回るように手・足・頭など狙いを悟られないように大太刀を振るい、本命の一撃を盾を持つ手へと振るって相手が剣でしか受けれない状態を作ると、新スキル(・・・・)トリックの『ショット(・・・・)』(マナ18/20)と『チェンジ』(マナ17/20)を使った。


 『ショット』を使うと戦闘前にスキル説明を確認していた通りに、ワンドのカード【ワンドⅨ(闇)】が狙った場所へと放たれた。カードは即座(・・)に黒い球へと具現化されると、大太刀と剣がぶつかると同時に大太刀と剣の隙間を通って白銀の甲冑の胸部に命中すると、命中した部分は黒い渦が放射状に広がるように色づいた。


 シュウは剣と鍔迫り合いをしている大太刀を消したことで、突然消えた事により浮き上がった剣と盾の間に黒い胸部が見えた瞬間、『チェンジ』によって変えた【ソードⅣ(槍)】を具現化させて【ワンドⅨ(闇)】を命中させた場所へと、突き刺すように攻撃を放った。


*【ワンドⅨ(闇)】…部位の強度低下、中心点に近いほど効果UP、効果時間10秒


 槍が黒い胸部を突き刺す瞬間、白銀の甲冑の盾が光ると手に持っていた槍と体が突然はじかれるようにして吹き飛ばされた。なんとか空中で体勢を整えながら地面で受け身を取って着地してから相手の様子を確認してみると、盾の光が徐々に収まって白銀の甲冑との距離は10m以上吹き飛ばされたようだった。


 何が起こったのか状況の推測をすると、白銀の甲冑が制限していた武具の能力の解放をしたのだろう。効果は衝撃波での吹き飛ばしだろうか。まだこれが能力の全てと決めつけるのはよくないが、この能力だけだとしても厄介な能力だな。


 おそらくその能力は吹き飛ばされる直前に光ったことからも()の能力だろうな。今ので盾のみを制限解除したのか、それとも剣も制限を解除したのかは分からないが、今まで以上に剣の間合いには気を付けながら戦って行かないといけないな。


「『スプリット・フォーカード』(マナ16/20)」

【ソードⅡ(片手剣)】【ワンドⅤ(土)】【ワンドⅦ(雷)】【ソードⅩ(大斧)】


「仕切り直しだな。まずは能力の確認をするか」


 シュウは吹き飛ばされて消えた槍の代わりに【ソードⅡ(片手剣)】を手にして、白銀の甲冑へと踏み込もうとした。


 対峙した二人が動き出そうとした時。その瞬間に小屋の方から、思わず動きを止めるほどの大きなの鐘の音が鳴り響いた。



お読みいただきありがとうございます

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