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剣と魔法のセカンドワールド  作者: K.T
第三話 ①変化する日常 
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旧校舎



 神陵(こうりょう)VR高等学校の現在は使われていない旧校舎の一室。


 使われなくなった廃棄予定の物が置かれていている為に、物置と化していた使われていないはずの教室の一室に、高学年であることが分かるネクタイを付けた複数の男達が集まっていた。


 そして、その教室に1年の3人が無造作に扉を開けて教室の中に入り、カーテンの隙間からしか光が入らない教室の中にいる男たちを確認すると言い放った。


「お前達がこの学校で不良と呼ばれている奴らか」


 一瞬の静寂が暗い部屋の中に訪れたが、次の瞬間には入り口の近くにいた4人の男たちが立ち上がり1年を囲むように、罵声をあげながら1年のもとに詰め寄った。


「ああ!?いきなりなんだお前!?」

「何勝手に入ってきてんだ、ごらぁ‼」

「お前ら3人どうなるかわかってんだろうな!」

「泣いても帰れると思うなよ!」


 入ってきた1年の後ろにいた2人は、不良たちの剣幕に恐れたのか逃げるように一歩後ずさりしていたのだが、真ん中にいた男は恐れることなく囲んでいた男たちに言い放った。


「うるさい、黙れ。お前たちにいい話を持ってきたんだ。そこの奥にいるやつに話をさせろ」


 普通の一年なら委縮して何も言えないと思っていただけに、あっけにとられた不良たちだったがさらに何か言おうとしたときに、教室の奥の暗がりから静止するように声がかかった。


 奥から現れたのは、身長190cmはありそうな強面の大柄な男で、1年を囲んでいた4人を1年から離れるように指示すると、3人の前に立って問いかけた。


「お前ら見ねえ顔だな。1年か」


「ああ、そうだ。今年入学したタチギグループの息子の橘木 誠(たちぎ まこと)だ。上級生ならタチギグループの名前に聞き覚えぐらいはあるだろう。それで、お前がこいつらのまとめ役なのか」


「ああ、そうだ。なるほど、新校舎建築に金を出した奴の息子か。はっ、お前の親父さんには感謝してるぜ。新校舎が出来たおかげで、こんないい場所を手に入れることが出来たからな。なあ、お前ら」


 上級生の不良たちはゲラゲラと笑いながら、その男の話に賛成していた。不良たちは言葉通りにこの教室を好き放題に使っているようで、お菓子やゲームが床に散らばっていたり、落書きや部屋の中にあった机や椅子を壊した跡があった。


「それで、その息子が俺に何の用なんだよ。ここに来るのはあまり賢い行動とは思えないがな」


 にやにや笑いながら橘木達に詰め寄ると、見下ろすようにして聞いてきたのだが、リーダーの男が近くに来た時に橘木の後ろにいた2人は短く悲鳴を漏らしていたが、橘木は恐れることなく自分の要求を伝えた。


「ある男をいたぶるのと、ある女達を手に入れるために協力してほしい。もちろん、手伝ってくれるなら見返りも用意する」


「協力ねぇ、仮に手伝った時の見返りってのは何なんだ?」


 リーダーの男が橘木の言ってきたことに乗り気だったのが意外だったのか、周りの男たちが何か言いかけたが男は手で後ろにいる男たちを制した。


 橘木は見返りの内容を、暗い嫌な笑みを浮かべて男たちに伝えた。


「金をやる。だがもし望むなら、女を手に入れて俺が楽しんだ後にでも、お前たちにも遊ばせてやる」


「ほ~、狙う女は誰なんだ?俺たちにも好みはあるからな~。下手な女じゃ協力なんてできないぜ」


 橘木は、制服の内ポケットから数枚の写真を取り出して、男に見せながら言った。


「見て判断しろ、この女達だ」


 橘木の差し出した写真には、藤本 理奈(ふじもと りな)立花 美羽(たちばな みう)真城 葵(ましろ あおい)の他に2人の女性の写真があった。


「こいつらは、・・・ははは、いいだろう。だが、この中には前から目をつけてたやつがいるからな。こいつだけは俺が先にいただいてもいいのなら、協力してやるよ」


 そういって、写真を一枚手に取ると握りつぶした。


 それを見た橘木は少し考えたようだが、「いいだろう交渉成立だ」というと詳しく話すために、男とともに教室の奥に進んでいった。



 それから数十分後に旧校舎の教室から橘木たち三人が出ていき、新校舎の方に戻ると教室の中にいた男たちは、リーダーの男に問いかけていた。


「1年にあんなでかい態度取らせたままでいいんですか?」

「いつもなら身の程を分からせるのに、今日はどうしたんです」

「このままあいつの計画通りに動くんですか?」


 リーダの男は周りの男たちを落ち着かせるように手を前に出した。


「まあ、落ち着けお前ら。俺があんな奴の言いなりになるかよ」


「じゃあどうして、あいつの計画を受けたんですか」


「あいつの資金力だけはあてになるからな。あいつの話した計画だったら、確かにあの写真の女ども全員集められるからな。それを利用して、俺たちだけで最後は美味しくいただけばいいんだよ。何もあんな奴にあの女どもを最初にくれてやる必要はねえよ」


「さすが」

「さすがです」


「それに、人柱は必要だろ?せいぜいうまく立ち回って甘い汁だけすすって、あいつには身代わりになってもらうさ」


 そう言って男は声をあげて笑うと、周りの男達も賛同して声をあげて笑い出した。



 愁の知らない間に愁の周りを取り巻く状況は刻一刻と変わり、悪意のある欲望が形となって動き出しつつあった。




お読みいただきありがとうございます。


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