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剣と魔法のセカンドワールド  作者: K.T
第三話 ①変化する日常 
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高校生活(放課後)



 今日の全ての授業が終わり、担任のHRホームルームも何事もなく終わって放課後となった。


 あの後、6時限目の授業が終わった時にも愁の周りに集まって質問してきた人はいたのだが、似たようなことを聞いてきたのでさっき答えた事を再度答えたり曖昧にぼかして答えた。


 一応は愁が話した内容にクラスメイトも納得したのか、放課後まではこっちを見てくる奴はまだいたが質問までしてくるクラスメイトはいなかった。


 そして、橘木(たちぎ)達の3人も結局は一度も俺に話しかけてくることはなく、3人そろって足早に教室を出て行った。


 もしかしたら放課後に聞きに来るかと思って一応は目で追っていたのだが、教室を出て行く時に一度だけ視線を感じただけだった。一番面倒そうなあいつらに話しかけられなくて、今日初めて面倒な事が避けられてよかったとしみじみと思った。


 でも、放課後にはあの3人組から話しかけられるかもしれないから時間を取られると思っていたのに、これだと生徒会室に遅れる理由が無くなってしまったな。いや、少なくとも面倒ごとが1つ無くなったんだから、何の用事か知らないけどさっさと生徒会室に行って用事を終わらせてから帰るのが一番いいな。


 さっさと帰りたいなと思いながら席を立ったときに、(じゅん)が一緒に帰らないかと声をかけてきた。


(しゅう)、今日一緒に帰るか?昼に何の話をしていたか聞きたいし」


 純が誘うなんて珍しいと思ったが、単純に昼の話を聞きたいだけかよ。まあ、こいつも一応関わってはいるから話してもいいだろうけど。


「純、今日はこの後に生徒会室に寄らないといけないんだよ。だからその話は明日にでも話すけど、もしこの後なにも用事がなくて暇で暇で仕方ないってんなら、俺と一緒に生徒会の用事でも手伝うか?それなら帰りにでも、今日あったことを詳細に話してやるけど?」


「なるほど。じゃあ、またな」


 純はそれだけ言うと振り向く事もなく教室から出て行った。逃げ足の速い奴め。純が教室を出て行ってすぐに俺も教室を出ると、早く用事を終わらせて帰ってからの予定をどうするか考えながら生徒会室に向かったのだが・・・。


神陸(こうりょう)高校の一年の教室は新館一号棟の3階にあり、生徒会室は新館二号棟の二階にある為、二階の渡り廊下を渡って生徒会室に行かないといけない。しかし、愁は3階から2階へと階段を降りたが、愁は何故かそのまま1階への階段を降りようとしているところに声がかかった。


「愁?どこいくの?」


真城(ましろ)くん、ちょっと待つの」


 愁が声をかけられた方を見ると藤本(ふじもと)さんと立花(たちばな)さんが校舎の柱の陰に立っていた。


「どこって、生徒会室にだけど?」


「生徒会室はそっちじゃないの」


「愁、大丈夫?疲れるの?」


「え?、ああ、ほんとだな」


 愁が改めて辺りを見回すと、確かにいま自分がいるのは2階だった。帰ってからの事を色々考えていたら、無意識にいつも通り帰ろうとしてたみたいだ。


「考え事をしていたから気づかず降りるところだったよ。ありがとう、助かった」


「別にいいの。わたしは真城君が生徒会の手伝いを忘れて帰ってしまわないか確認していただけだから、礼を言われるような事ではないの」


「私は美羽に付き合っていただけだから、その、私は愁が忘れて帰ったりなんてしないとは、思ってたよ」


 立花さん、さすがに俺でも今日の昼に姉さんから言われた内容を忘れていたりはしないけどな。逃げようか考えはしたけれども・・・。藤本さんは忘れてないと思ってたみたいだけど・・・あれ、思ってた?過去形?今は少し疑っているのか?いや、ここでのこれ以上の弁明は俺の立場が危うくなるのを、これまでの経験で知っているからやめておこう。


「そ、それじゃ俺は先に行くよ」


 これ以上墓穴を掘る前に歩き出すと、2人が少し後ろからついてくるのを感じながら生徒会室に向かった。



 生徒会室に行く途中に校内にいる生徒の何人かに見られはしたが、特に騒ぎになる事もなく生徒会室前まで着いたので、3人で生徒会室に入ると姉さんは奥の机に座っていて、複数の書類を見ながら書類整理をしていたが、こちらに気付くと声をかけてきた。


「いらっしゃい、愁もちゃんと来たのね」


「それは、一応言われたからにはくるよ(逃げたらもっと面倒な事になりそうだし)」


「何か言ったかしら?そうよね。朝から今日の放課後の手伝いの事を考えていてくれたみたいだから、忘れたりするわけないわよね?藤本さんがあなた一人だと大変だろうから手伝いを申し出てくれたのよ。感謝しなさいよ?」


「いや、それは・・・も、もちろん・・・藤本さんありがとう・・・・」


「いいよ、そんなの。愁のお姉さんには助けてもらうんだもの、生徒会のお手伝いは進んで協力するよ」


 善意だとは分かっているよ、分かってる。どういう経緯(いきさつ)で藤本さんが姉さんに朝の話をしたのかは分からないけど、決して悪意を持って藤本さんは姉さんに伝えたわけじゃないことが分かるだけに、朝の迂闊な発言をした自分に怒りしか湧いてこない。


「口は(わざわい)(もと)なの。・・・・・それとも、言霊(ことだま)による有言実行(ゆうげんじっこう)?」


 呆れながらも不思議そうに俺を見てくるけど、立花さん十分に身に染みてわかったから傷口を広げないでほしい。それと、決して俺自身に有言実行の意志は少しもなかったからな。・・・・何故か朝に言った事が全て起こってはいるけども。


「それじゃあ、藤本さんと立花さんは机の上に書類が置いてあるところに座ってくれる?愁は取ってきてもらいたいものがあるからこっちへ」


 生徒会室に入って入り口の前に立ったままだったところに、姉さんが声をかけてきたので3人はそれぞれ姉さんに指示された場所に向かった。


「藤本さんと立花さんは、してもらうことを書いてあるメモを一番上に張ってあるから、とりあえずはその通りにしてもらえばいいからね。質問とか分からない事があったら言ってね」


 藤本さんと立花さんは、お昼を食べた時にも使った長机に二つに分けて書類が置かれている所のパイプ椅子に座るとさっそくメモを確認していた。


 愁は奥の1人用デスクにいる姉さんの前まで来ると、何をさせられるのだろうかと少し不安になりながら姉さんからの話を待った。


「さて、愁には力仕事を頼むんだったわよね。それじゃあ、旧校舎の職員室にある机と椅子を二人分持ってきて、新校舎に建て替えた時に職員室の物も新しく一新されたから廃棄予定でまだ残っているからそれを取ってきてね。特に壊れた物はないだろうけど、ちゃんと痛んだりしていない綺麗なものを選んで持ってくるのよ?」


「え、いや。旧校舎から職員室の机を?」


「ええ、そう。旧校舎から」


 普段教室で使っている机ならまだしも職員室に使われていた机か、旧校舎の職員室の机なんて見たことないけど、絶対に大きいし重いだろう。しかも、旧校舎からって・・・。


「え~と、俺の記憶違いじゃなかったら、旧校舎って今いる校舎と渡り廊下とかでつながってないですよね?」


「その通りよ。繋がってないわね」


 つまり、机を持って階段を上がらないといけないことは確定か。あとは、出来れば旧校舎の職員室もしくは机の保管場所が一階だといいな。


「ですよね。ちなみに旧校舎の職員室は何階で?」


「新校舎と同じ二階よ」


 新校舎も2階にあるから、その可能性は何となく察してはいたけども。せめて目的の机が一階に保管されている事を願って姉さんに確認した。


「目的の机と椅子の場所は・・・」


 姉さんはにこりと笑うと間髪(かんはつ)()れずに無慈悲(むじひ)()げた。


「前の職員室から動かしてないみたいよ」


「ですよね・・・」


 廃棄予定の物を動かす必要がない事くらいは分かってはいた事だけど、改めてすることを実感すると気が重くなるな。新校舎で使わなくて廃棄予定のものを、わざわざ1階に移動する理由なんて俺も思いつかないけど・・・。


「わかったよ。持ってくるけど途中で何してるか聞かれてもそのまま伝えるから」


「大丈夫よ。ちゃんと許可は取っているもの。まだ全然使えるものを廃棄処分なんて、資源の無駄遣いだから使えるものは有効活用させてくださいってね」


「そうですか。流石ですね」


「すごく棒読みだけど、ありがと」


 姉さんならそのあたりもしっかりしてるのは分かってたけど、どうあがいても机を持ってこないという選択肢はなさそうだったから、諦めとともに旧校舎に向かおうとすると、姉さんが小声で話しかけてきた。


「ちゃんと手伝ってくれたら、両親の連絡に生徒会の仕事を手伝ってくれたって伝えておいてあげるから、一つぐらい両親を安心させる連絡を私にさせなさいよ」


「・・・わかった」


 この手伝いが両親を安心させる話題になるのか分からないけど、多分いつも姉さんが両親に伝えている事より話しやすいのは間違いないだろう。寮生活の時の事は姉さんが両親に話すのを止めてくれていたみたいだし、学校生活って言っても学年が違う姉さんとは会わない事がある日なんて多くあるから、見かけた時の感想ぐらいしか言えなかっただろうな。


 さっそく旧校舎に向かおうとすると、藤本さんから声がかかった。


「こっちが早く終わったら私も手伝うから無理しないでね」


 立花さんも藤本さんの隣で頷いているから終わったら手伝うつもりなんだろうけど、持ってくる机と椅子が想定外の大きさと重さじゃなければ20分もかからずに持ってこれるだろうし、姉さんの事だから俺が持ってくる時間も計算して二人に手伝ってもらっている仕事量を考えてると思うんだよな。姉さんの予想より遅くて2人に手伝ってもらうと姉さんに何か言われるかもしれない。


 ちらりと姉さんの方を見ると、ちょうど視線を上げた姉さんと目が合って一秒にも満たないアイコンタクトの後に手伝わせるわけないわよねとのご命令に大丈夫だからと言い残して駆け足で生徒会室を出て行った。


 急がなければと言いながら、新校舎から旧校舎に入って向かっている時に遠めにどこかで見たような3人がいた気がしたが、気にすることもなく旧校舎の職員室に向かった。




お読みいただきありがとうございます。

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