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剣と魔法のセカンドワールド  作者: K.T
第三話 ①変化する日常 
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高校生活(休み時間)



 生徒会室での昼食の後、先生に頼まれた教材を持ったまま教室に戻ったことによって、特にクラスメイトからの追及はないまま午後の授業は始まった。


 だけど、授業中は俺が教室に入った時のクラスの皆が一斉にこちらを見た光景を気のせいだと思うことが出来なかったので、授業が終わった後の休憩時間に何かしらの行動を起こす奴はいるだろう事を予感させた。


 そして、5時限目の授業が終わり休憩時間になると嫌な予感は的中した。5時限目を担当していた先生が何事かと驚いている中でクラスメイト達が一番後ろの窓際の席を取り囲むようにして集まり、愁には質問が嵐のように襲い掛かってきた。


「さっき昼休みに来てたのって1年A組の綺麗な人と可愛い人だよね?」

「確か、藤本さんと立花さんだよね?」

「さっきのはどういうことなの!」

「聞こえてるよね。寝たふりしないでよ」

「えっと、真城くんだったよね?話って何だったの?」

「今年の1年で一番の美人な藤原さんが真城に何の用だったんだよ!」

「「どうry」」

「もしかして告白だったとか!?」

「「「キャー‼‼」」」

「「「やめろー!!考えたくね~!!」」」

「本当か!?」

「本当だったら許さねえぞ!」

「答えろ、真城~~~!」

「寝たふりなんてしてんじゃねーぞ!」


 面倒な事になる事は予想していたけど、なんだよこれは。軽く予想の範疇を超えている状況なんだが・・・。


 クラスのほぼ全員が、教室の前にある時計を頻繁に見ながら授業を受けていて、5時限目が終わるのを待っていることが分かっていたから、終わると同時に教室を出てトイレにでも逃げ込もうかと思っていたのに、授業が終わった瞬間のクラスメイトが俺の席を取り囲む速度が尋常ではなかった。


 逃げようと席を立とうとした瞬間には、人一人通れる隙間もなく包囲されていたんだけど。お前らはそんなに運動神経良かったのか?俺の前にいたやつなんて椅子ごと押しのけられて床に倒れてるんだけど。


 俺は逃げられないと確信した瞬間に全てを無視して机に腕を組んで顔を伏せてこのままやりすごそうとも思ったんだが、このまま説明しないと勝手に色々解釈して話を大きくしていきそうだし、そうなるとさらに面倒になるだろう。


 でも、こいつらの質問にいちいち答えるなんて面倒な事もしたくないぞ。


 とにかく今は時間を稼いで6時限目の授業まで耐えて放課後までに何かいい理由を考えて・・・あーそうだ、放課後は姉さんに生徒会室に来るように言われているんだった。いや、これを理由に姉さんの呼び出しは行かないという手も・・・・・ちゃんと生徒会室には行った方がいいな。・・・うん。


 生徒会室に行かなかった場合を考えたが、どう行動しても新たに面倒な事を言われる未来しか考えられなかった。さっきの昼休みに裏庭で一休み(現実逃避)している時間にでも何か考えておけばよかったな。


 そういえば、純には後でフォローしてもらえるように頼んでおいたんだった。報酬はまだ払ってないけど、この状況を何とかする為に役に立ってもらうか。


「え~と、とりあえずみんな落ち着いてくれないかな。一度に言われるとみんなに何を聞かれたのかもわからなくて、答えようがない」


 そういうと、徐々に喧騒は収まっていき誰が愁に話しかけるのかを、みんなが目くばせで探りあっていた時に、愁は純を呼ぶために声を上げた。


「純、後ろにいるんだろちょっと俺の前まで来てくれないか」


 愁がそういうと純は「ちょっとごめんよ」と言いながら囲まれているクラスメイト達の間を通って、倒れていた椅子だけを起こして前の席に座った。


 分かっていて起こさない俺もどうかと思うけど、椅子を起こして座るぐらいなら、今まだ倒れている前の席のやつも助け起こしてやれよ。


「それで、何かな純?」


 人目があるから抑えてはいるんだろうが、仮面が外れかかっているぞ。時折、この状況を楽しむようなにやけ顔しやがって、また面白がって変な事を言わせない為に教室を出るときに頼んだ取引の事を、今度はちゃんと役目を果たすように念押ししておこうか。


 そう思って純の目を見て、分かってるだろうが報酬分は協力しろと、目で睨むようにアイコンタクトを送ると、分かってるよと体の前で右手をdにして返してきた。人差し指と中指を立てて自分をたたいて報酬の確認もしてきたので大丈夫だろう。


「え~と、多分みんなが聞きたいのはなんであの2人が来たのかという事だと思うんだけど」


 周りを囲むクラスの皆が同時に頷くように頭を縦に振った。後で聞かれても大丈夫なように、藤本さんと裏庭で会った時の事をちょっと役者を替えて話して、みんなに納得してもらうようにするか。


「実は、この前なんだけど藤本さん達が不良に絡まれていたんだよ。それを俺と純が助けたから、その時のお礼を言いに教室まで来たんだ。純もその場にいたから知ってるだろ、なあ」


 そう言って純を見ると、意図を察して俺の話に合わせてみんなに話した。ただし俺には、これ見よがしに恩着せがましく聞こえるように目で語ってきてはいたが。


「そうなんだよ。俺が藤本さんが困っていたのを見つけると、愁が藤本さんを守るために体を張って(・・・・・)助けたんだ」


 あの時に、体を張ったのが純なのはわざわざ強調して言わなくても分かってるよ。フォローしてくれた後の報酬は後でちゃんと支払うから今は話を合わせろと、純とアイコンタクトで会話しながらクラスメイトの質問を答えていった。


「へ~そうなんだ」

「でも、助けたお礼って事なら、その場で言われなかったの?」

「そうよね」「普通はその場で言うわよね」


「いや、お礼の言葉はもらったんだけど。お礼に何かするってことを言われたんだけど、その時は俺も用事があったからすぐに分かれたんだ。それでもわざわざ、その時のお礼の話をする為にこの教室に来たらしい」


 そういえば、前にも似たような事を言われたことがあった気がするな。確かあれは高校入ってすぐの・・・・・。


 愁が思い出そうとしていると、クラスメイトはほかにも聞きたいことが沢山あるらしく次々と質問がとんできた。


「でも、どうしてここで話さなかったんだ?」

「あの時、生徒会室とか聞こえたような気がするんだけど?」

「立花さんもいたのはなぜ?」

大黒(おおぐろ)君がこけた時なにかしたの?」

「告白されたのか!?」


 愁は両手をみんなの前にやってストップというと、答えるからちょっと待ってといい順番に答えていった。


「まず、ここで話さなかったのは教室出る時も言ったけど。あまりにも静かになりすぎて、話してる内容が筒向けになるから場所を替えるため」


「次に生徒会室の件だけど。それは、ほら。生徒が不良に絡まれたから危ないってことを、生徒会長と先生に一応報告をするために行ったんだ」


「立花さんも藤本さんと一緒にいたような気がするから、それでじゃないかな。それと、大黒だっけ?そいつがこけたのは俺のせいじゃない。勝手にこけたのをみんな見てただろ」


「それと、告白なんてされてねえよ。俺の話ちゃんと聞いてたか?誰が俺みたいなただの一般人に、藤本さんみたいな美人が告白してくるんだよ。ちゃんとよく考えてみろ」


 始めはちゃんと考えて答えてたのだが、なぜ俺がこんな面倒なことをと思っていたら、最後の方には純と話すような感じで適当に質問に答えていた。


 そして一応一通り答えると、女子の外側を囲んでいた男たちは安心するように息を吐くと、何人かは席に戻っていった。


 俺の周りを囲んでいるクラスメイトはまだ聞きたいことがあるのか残ってはいたが、6時限目の授業のチャイムが鳴って先生が教室に入ってくると、自分の席に戻っていった。


「報酬の件忘れるなよ。それと、どんな面白いことになったのか、あとで教えろよ」


 そんな言葉を言い残して、純も席に戻っていった。


 そういえば、あの3人組は話しかけてこなかったな。囲まれる前に見た時には、こっちを見ていたと思うんだが、割って入ってこなかったのは意外だな。あいつらの事だから必ず聞きに来ると思ったんだが・・・まあ、話しかけてこないなら面倒がなくていいや。


 そして今日の最後の授業がはじまったのだが、授業が始まり半ばも過ぎた頃にふと先生が愁の前の席の奴が今日は休みだったのかと聞いてきたので、そういえばと思い前の席の下を覗いて見てみると、驚いた顔をしたまま眠るように気絶していた。


 愁は足でつつくように刺激を与えると、前で倒れていた男子は意識が戻ったのかいきなりその場で立ち上がった。そして、自分の身に何が起こったのか分からなかったのだろう、周りを見て授業が始まっている事に驚き席に座ったのだが、こっちを見ていた先生に何故隠れていたと、怒られてしまっていた。


 悪いことしたな。前の席の奴は昼休みにいなかったから、本当に訳が分からなかっただろうな。いきなり俺から謝られても何のことか分からないだろうけど、後で謝っておこう。




お読みいただきありがとうございます。

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