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剣と魔法のセカンドワールド  作者: K.T
第三話 ①変化する日常 
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高校生活(通学路)





 引越しをしてから初めて通る通学路を、あくびをしながら愁は歩いていた。


「ふあ~ぁ、結局は帰った後もゲームをしていたから、いつも以上に朝がつらいな」


 愁は昨日家に帰って姉が部屋に戻るのを「おやすみ」と言って見送った後、自然公園でイメージしていた動きがゲーム内でもちゃんと出来るのかを確認する為にログインして小屋の裏の庭で試していたら、いつの間にか夜の2時を過ぎていたことに気が付いてすぐにログアウトして眠りについた。


 約3時間ぐらいしか眠れなかったが、いつもの時間に起きて日課をこなしてシャワーで汗を流してから朝食や弁当を作った。いつもと睡眠時間は変わらなかったが、寝る直前まで体を動かしていたからかいつも以上に眠気が残っていて寝不足であることを感じていた。


 愁の朝の日課は、いつも朝の6時前には起きて山の山頂までを普通のルート(山の裏側)を通って走って登った後に、山頂の広場で型稽古をして戻るのが毎日している朝の日課だった。


 姉さんは朝に学校でやることがあるのか朝食を食べると、俺が作っておいた弁当を持つと先に学校に行ったのだが、玄関先で急に振り向くと「明日は一緒に通学しましょうか」などといきなり言って玄関を出て行ったので、思わず食べていたパンをのどに詰まらせかけた。


 姉さんと一緒に学校になんて行って誰かに見られたら、色々聞かれて面倒な事になるのは目に見えている。高校入って2か月間は毎日の日課と高校に通うだけの平凡な日常だったのに・・・いや、純のせいで色々した時もあったけど・・・まてよ、それ以外にも・・・・・深く考えるのはやめておこう。


 とにかく、これ以上は俺の変わらない毎日を壊すようなことはしないようにしてほしいんだけどな。


「まったく、これ以上の面倒ごとはごめんだ」


「何が面倒なの?」


「詳しく聞くの」


「・・・」


 何だか最近聞いたことがある2人の聞き覚えのある声が後ろから聞こえてきたんだが、・・・気のせいだろう。思わず足が止まってしまったが、再び歩き出そうとすると右腕を掴まれた。


「ちょっと待ってよ。()、聞こえてるのに無視するなんてひどいんじゃないの?」


「諦める、もう手遅れなの」


 分かってはいたが確認のために振り返ると、思った通り藤本さんと立花さんだと分かる2人が立っていた。2人に挨拶をしてから、なんでこう次から次へと面倒になりそうなことが続いてやってくるんだろうかと考えて、改めて現実では初めて会うことになる藤本さんの隣にいる女の子を見た。


 見た目と声からして藤本さんの横に立っている背の低い小柄で黒髪の小さな女の子が立花さんで間違いないと思うけど、・・・というか立花さんもゲームとほとんど同じ容姿じゃないか。俺と同じように髪の色だけ変えて銀色にしていただけで他に違いは・・・少しだけ、身長が・・・・・。


 そして、何気なく立花さんに感じた違和感を確認する為に一瞬だけ藤本さんと身長を比べて確認すると、確実にゲームより低いなと思ったが指摘することはせずに2人に目線を戻した。


「こっちでは初めましてなの。立花 美羽(たちばな みう)なの。・・・ところで真城くん、目は口ほどに物をいうってことわざを知ってる?」


 自己紹介は普通だったのに、俺を呼ぶときからは何故かゆっくりと言い聞かせるように立花さんが言ってきた。


「え?」


 何だか立花さんから並々ならぬ怒りのオーラが立ち上っているような気がする。えっまさか立花さんの身長をゲームのアバターと比べたのがあれだけでばれたのか!?ほんの一瞬確認しただけなのに。


「言葉にしなかった自分の判断に感謝するの。だから今回は見逃してあげるの」


「あ、ありがとう?」


 まさかあの数秒の視線で立花さんの身長を比べた事に気づくなんてすごい観察眼だな。立花さんの前では下手な嘘だと見破られそうだな気を付けておこう。あと、身長の事は二度と触れないと心に刻んでおこう。


「な、なんなの?2人だけが分かる会話をして、私も混ぜてほしいんだけど」


「理奈は気づかなくてもいいの」


「え~なんで~。教えてよ美羽」


 藤本さんが立花さんの後ろに回って抱き着きながら何の話だったか聞き出そうとしているのをみて、ゲームでも同じような事をしていたなと思いながら、朝の挨拶はしたからもう行っても大丈夫だと自分に言い聞かせて二人に気付かれないように先に学校へ行こうと一歩踏み出した。


「理奈、そんなことより、真城くんが先に行こうとしているの。理奈も遅れないようについて行くの」


「え?そうなの?。愁、待ってよ」


 藤本さんと立花さんがそういうと俺のすぐ隣まで来て並んで歩き出すことになった。


「あれ?、今日はメガネしてないんだね?」


「ん?真城くんはいつもメガネかけてるの?」


「え?ああ、今日は必要ないからかけてないよ」


「今日は?わかった。コンタクトしてるんだ」


「いや?してないけど?」


「え、でも、・・・・・」


 藤本さん達と会話をしながら頭の中ではどうやってこの状況を乗り切るかを眠気の残る頭で必死に考えていた。少しずつ気づかれないように距離を取ろうとしていたのにまさか一歩目で気づかれるなんて、しかも立花さんは俺が先に行こうとしている事まで分かっているような言い方だったけど、立花さんって心が読めたりしているのかとか馬鹿な事を考えながら横を歩く立花さんを見ていたら、俺が考えていたことが分かっているかのように答えてくれた。


「昨日あった時の真城くんの対応と性格を考えたら、面倒ごとから逃げようとするのは分かるの」


 え、俺って昨日会ったばかりの人に俺の行動を把握されるくらい分かりやすい性格してるのか。いや、立花さんの観察眼が鋭いだけだろう。


「そういえば、学校で助けてくれた時も出てこようとしなかったね。ゲームの時も私を助けた後にはさっさと立ち去ろうとしていたけど、・・・ん?面倒ごと?美羽、今何か面倒ごとってあるの?」


「何でもないの。昨日あれだけ言って分からなかった理奈に言う事はもう何もないの」


「え、なんで、美羽。ちょっと怒ってるの?」


「怒ってはないの。諦めてるだけなの」


 立花さんはこのまま3人で学校まで行くと俺にとって(・・・・・)面倒な事になる事を理解してくれているんだな。となると、面倒ごとを避ける為なら立花さんは協力してくれるかもしれないな。さっきから時々会う学校の生徒に見られてはいるけど、まだ何とかできるはずだ。このまま学校まで行くと確実に面倒なだけ済まなくなるのは間違いないから、まだ学生の少ないうちに何とかしなければ・・・。


「え~と、そういえば俺今日は日直だったよ。だから先に行くよ」


「何言ってるの?神陸(こうりょう)高校に日直なんてないよね?」


「黒板や始まりの号令すらない学校で日直が何するつもりなの」


 藤本さんは不思議そうな顔で俺を見てきたが、立花さんは残念な人を見る目で俺を見てきたが、仕方ないだろこんな時の言い訳なんて考えたことがないんだから。


 神陸高校では新校舎になってからタブレットの導入や電子板を使った授業になって授業の始まりと終わりもチャイムが合図になっている為、日直がする仕事など何もない。


「え~と、今日は姉さんに呼ばれてるから、ほら昨日話しただろ姉さん生徒会長でちょっと力仕事で頼みたいことがあるらしくて、授業の前に早く学校に行かないと行けなくてだから・・・」


「さっきまで眠そうに歩いていていたけど、本当に急いでるの?」


「さっきのペースで歩いていたら、教室に着いても5分も時間が残ってないペースだけど、急いでいるなら仕方がないの」


「本当に急いでいるなら仕方ないけど、・・・・」


 た、立花さん?こっちの気持ちを理解して協力してくれているのはありがたいですが、言葉に棘があるような気がするんですが、言い訳の内容に呆れているのはわかるから仕方ないとは思うけど。


 でも、藤本さんも納得してくれてるから無事に先に行くことが出来そうだな。


「そうだ、お昼に葵先輩に会うからまだ仕事が残っているようなら手伝うね」


「そ、それは‥‥」


 そういえば今日姉さんに会わせる予定があったのを忘れていた。昨日今日話してた内容を忘れていたなんていくらなんでもまぬけすぎる。いくら寝不足と焦りがあるとはいえ考えが足らなさすぎだ。


 考えろ、考えるんだ。もしこのままお昼に藤本さんが姉さんにこの事を話すと嘘だったことがバレるし、なぜこんな嘘をついたのか理由も聞かれるだろう。いや、姉さんなら何となく理由を察して、・・・・もっと俺にとって良くないことになる未来しか考えられないな。


 とりあえずこの場は何とか誤魔化して、姉さんには何も言わずに簡単な事でも手伝っておいてつじつまを合わせておくことにしよう。


「そういえば、姉さんの用事は放課後で良かったんだった。それに、力仕事って言っていたから藤本さんに手伝ってもらうのは悪いよ」


「そう?でも、人手が必要だったなら言ってね?」


 藤本さんの善意が今の俺にはつらい。3人で歩道を歩きながら俺には残された時間があと少ししかないと焦っていた。


 神陸高校は長い坂の上にあるので、俺が引越したアパートからは住宅街を抜けるとすぐその坂になっているのだが、当然通学時間なので他の生徒が沢山いるわけで、こんな状況を多くの人に見られながら学校に行ったら、どんな面倒ごとがやってくるか考えるだけでも嫌になってくる。


 住宅街のこの道を抜ける前に何とかしないと、なにかないか、なにか・・・・・そうだ。


「えーと、先週の金曜日に藤本さんを助けた時にあいつらを引き付けてくれた俺のあくy、友達がいただろ」


「うん、愁と同じクラスの柏木 純(かしわぎ じゅん)くんだよね?それがどうしたの?」


「実はあいつにあの時の礼として今日パンを買う約束をしてたんだよ。あいつの好きなパンが朝じゃないと売り切れるらしくてさ。だから、今から急いで買いに行こうと思ってたんだ」


「なんだか、さっき思いついたみたいな顔してたけど本当なの?」


 平常心、平常心だぞ。顔に出ないように落ち着いて顔を見て話すんだ。あいつなら同じクラスだしあらかじめ言っておけば話を合わせてくれるだろう。


「本当だよ。今から走って行けばまだ売れ残って入ると思うんだ。それに、後ろに3人組(・・・・・・)が・・・いるけど違うやつだから大丈夫だよ。それじゃあ先に学校に行くから、また昼休みに…」


 3人組と言った時に藤本さんと立花さんが振り返った隙に距離をとって、「また後で」と言い残すと学校に向かって走ったのだが、住宅街の道を抜ける寸前に後ろから怒った声が聞こえた気がするけど気のせいだと思うことにして走った。



 学校の校門まで着くと一度深呼吸をして息を整えると校舎の入り口に向かって歩いていたのだが、そこに笑いながら話しかけてくる友達(悪友)がいた。


「いや、最っ高だったぞ、愁。朝から笑わせてくれてありがとうな」


 (じゅん)はそういうと肩をたたきながら隣に並び、一緒に校舎に向かって歩き始めた。


「お前な、見ていたなら仮にも友達が困っているんだから助けようとは思わなかったのか?」


「いやいや、俺にはあの会話に入って行って水を差すような無粋な真似は出来ねえよ」


 ただ単に面白かったから見ていただけだろう。それより何時から見てたんだこいつ、結構初めの方から知ってそうだけど純がいたのは全然分からなかったぞ。


「はぁ~たく、いつから見てたんだよ」


「お前があくびをした時からだけど?」


「本当に最初からじゃねえか!」


「いや~学校に行く途中で愁を見かけたから声をかけようと思ったんだが、愁に珍しく話しかけてくる女子がいたから様子を見てると面白そうなことになってるから、つい隠れて観察してたんだよ」


「ほんとにお前ってやつは…」


 相変わらず面白そうなことに出会った時のこいつはいつも以上に無駄な力を発揮しやがって、いつもそうしていれば師範に怒られることもないってのに・・・。


 校舎に入り靴を履き替えて教室に向かおうとしたときに、純が「待った」と言って肩を掴んできて、まったくいい予感がしない笑顔で純が聞いてきた。


「愁、何か忘れてない?」


「なんだよ」


「愁って俺にパンを奢る為に早く学校に来たんだよね。じゃあ行くのは教室じゃなくて食堂じゃないかな?」


「お前・・・聞いてたならわかるだろうが、それにあの時のはお前が今までの事で悪いと思ってるから、その罪滅ぼしの機会をだな・・・」


「いいのかな?藤本さんって俺にお礼を言いに来るんだよね?さっき愁は走って行ったから分からなかっただろうけど、藤本さん結構怒ってたよ。さっき言ったことが嘘だったらもっと怒るんじゃないかな?そうならない為にも口止め料を払っておかなくてもいいのかな、ん?」


 こんなにも本気で顔をぶん殴りたいと思ったのは久しぶりだな。にやにやしやがってこいつは・・・。


「・・・おまえ、まじで覚えてろよ」


「そんなこと言っていいのかな?この親友(・・)の俺に、まさか愁は俺の事を悪友だなんて思ってないよね。もしそうだったらうっかり口が滑っちゃうかもしれないよ」


「わかった。わかったよ、買ってやるよ」


「愁ってほんとに損な性格してるよね」


「うるせぇよ、・・・はぁ」


 愁は最近になってため息が多くなったなと思いながらも思わずため息をして、教室に向かっていた足を食堂の方に向けて純とともに歩き出していった。




お読みいただきありがとうございます。

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