探し物と約束の電話
ギルドから出た後、目立たないようにしながら中央広場を目指して広場の噴水まで着くと、リーナとミュウが二人で噴水近くのベンチに腰掛けて待っていた。
扉がある街灯で待っていてくれても良かったけどと言ったのだが、あの場所で待つのは怖いからと言い3人は揃って街灯の場所まで行くことになった。人気のない木々の中に行く事にミュウは疑う表情をしていたが、リーナが大丈夫だと言った事でとりあえずは問題なく目的の場所まで来れたので、街灯に鍵を使用するとあの小屋がある空間に行く扉が現れた。
扉が現れるまでは、本当に騙されていないのか心配と不安が入り混じった顔をしていたミュウが扉が現れたことに驚きと少し安心した顔をした後、リーナに手を引かれて扉を通っていった。自身も後に続いて扉をくぐると、夜の浜辺に出ると思っていたら昼の様な明るさを感じて見渡すと、小屋の中につながっていた。目の前には背を向けている2人とリンが前と同じようにテーブルの前でお辞儀をしていた。
「おかえりなさいませ」
「ただいま」
俺はなぜか小屋の中に繋がっていたことが疑問だったのだが、リーナは特に驚いたりはしていないらしく前と同じように頭を上げたリンに近づき抱き着こうとしていた。ミュウは興味深そうに小屋の中を見たり小屋の窓まで歩いて外の景色を見たりしていた。リーナは特に疑問に思っていないことを不思議に思いながら、リーナに抱き着かれているリンに聞いてみる事にした。
「リン、いつもは浜辺に扉が出ていたんだけど、どうして今は小屋の中に繋がっていたんだ?」
「それは、シュウ様が御二方とパーティーを組まれているためかと思われます。通常は初めてここに来る方がいるときは必ず浜辺に扉が現れます。ですが、シュウ様がパーティーメンバーの仲間だと判断している場合はこの小屋に直接つながるようになっております」
「そうだったのか」
パーティーメンバーになったなら直接小屋に来ることが出来るんだな。リーナはリンにこの事を聞いていて知っていたのだろうか。
「リーナはここに繋がったことに驚かなかったけど、リーナは知っていたのか?もしかして、リーナとリンが二人で話した時に聞いていたりしたのか?」
リーナとリンに聞くつもりで言ったのだが、リンを抱きしめているリーナが何故か慌て始めた。
「えっ、あっ、ちょっとまって・・・」
「先ほど話した内容はリーナに聞かれたので答えていました。後はこの小屋で宿泊することは可能かどうかとシュウさm・・・・」
リンがそこまで言った所で、リーナがリンの口をふさいでそれ以上言わせないようにしていた。そして、リンを連れてキッチンの方に行った後に何やら話しているみたいで話し合いが終わって戻ってくると、リーナは残念そうにしていて逆にリンは少し嬉しそうな顔になって戻ってきた。
「それで、なんなんだ俺の名前を言ってた気がしたけど?」
「いえ、聞かれた内容はその二点のみです」
「いや、でもさっき『聞かれた内容はその二点のみです」」
「そ、そうか。わかったよ」
嬉しそうな顔のままリンに念押しされて、これ以上聞き返せなくなったのだがリンの事だから俺にとって悪いことになるような事を秘密にすることはないだろうと思ったので、深く聞かないことにした。
「とりあえずは、ここまで来ることが出来たからログアウトしようか」
「そうだね。私達もログアウトするから電話を必ずかけてきてね。見つからなかったら夜9時にもう一度ログインしてくるのも忘れないでね。絶対だからね」
何度も念を押すように言うので、二度手間を避けるためにも必ず見つけて電話しようと思いながら返事をした。
「ああ、わかってる。ミュウはどうするんだ?」
「状況次第なの。シュウがリーナにちゃんと連絡取れたら多分こっちにも連絡が来るから、もしかしたらそれからずっと電話することになるかもしれないの」
ミュウが疲れたように肩を落とす仕草をしたが嬉しそうな顔をしていたから、これはミュウの為にも必ず見つけて藤本さんに電話できるようにした方がいいな。
そして、3人が同じタイミングでログアウトをして小屋の中にはリン以外はいない状態となった。
目を開けて頭に取り付けたVRの機器を取り外して横に置くと、制服をかけているハンガーにすぐに向かった。あの時に着ていたものは制服の上着とカッターシャツとズボンだけど、シャツとズボンは昨日洗濯をしたときには何も入ってなかったから、あるとしたら制服の上着の中にあるはずだと思い隅々まで探していた。
「・・・・・・」
・・・ないな。どうしてだ、あの時に無くさないよう制服の内ポケットに入れたはずなのに・・・まさか、どこかに落として本当に無くしていたのか。そう考えると愁の背中に冷や汗が流れ落ち、どう考えてもリーナやミュウが悲しむだろうし確実に怒られる未来しか見えない事に動揺しながらも、あの日の事を懸命に思い出そうとしていた。
あの時に、アドレスを書かれたハンカチを預けられてその後は、純の奴が現れて教室まで走ったんだよな。その時に一度しまっているはずなんだ。記憶では制服の内ポケットに入れたはずなんだが、そう思いつつ内ポケットを探すけどなくて本当に落として無くしてしまったのか。それか入れた場所を替えたとしか思えないんだが替えたとしたらなぜそんなことを・・・・・・あの時の事を必死に思い出していた。
あの日、帰るときに引越し用の段ボールとか紐を用意するために出かけたな。一度寮にカバンを置きに帰った時に純が「ハンカチ落とさないようにしろよ」とか「忘れないうちに電話をかけろよ」とか言ったから、忘れていても思い出せるようにカバンの中に入れて広げておいたんだったな。
急いでカバンを開けると広げられたハンカチがあり、番号も消えることなく書かれていた。
無くしていなくて見つかって本当に良かった。後は代用品の携帯も昼に届いているから、さっそく電話をかけて連絡しておこうか。
ハンカチに書かれた番号を押して携帯を耳に当てると、呼び出し音が鳴ったなと思った時にはすぐに相手の声が聞こえていきた。
「・・っもしもし」
「え~と、真城 愁ですが藤本 理奈さんの携帯で間違いないですか?」
「・・・・うん、合ってるよ。良かった、ちゃんと見つかったんだね」
少し間があったから番号を間違えたかと思ったけど、ちゃんと藤本さんにつながっているみたいだな。
「ログアウトしてから電話が来るのを待っていたのに時間が掛かっているから、やっぱり無くしたのかと思っちゃった」
そんなに時間は経っていないと思って時計を見ると、ログアウトしてから20分近くは経とうとしていた。
焦っていたから余計に時間が短く感じていたのだろうか、結構時間が経っていたんだな。
「少し探したけど無くさないようにしまっていたから、見つけるのに時間が掛かったんだ」
「そっか、それじゃあ・・・本題の愁が言っていた。あの3人に邪魔されない場所の話がどうなったのか聞かせてもらってもいいかな?」
「わかった、伝えるよ。話した場所の件なんだけど話してみて許可が取れたわけじゃないんだ。ただ一度会って話したいって言われたから、明日の昼休みは時間作ってほしいんだけど大丈夫?」
「ええ、それは大丈夫だけど、いったい誰に会って話をするの?私も知ってる人?」
「知ってると思う、入学式の日に一度は目にしたはずだから」
入学式の日に休んだりしてなければ確実に目にしたことがあるはずだしな。俺や純みたいに式の途中に寝ていたりしなかったらだけど。
「誰なの?先生?前にも言ったけど先生は頼りにならないわよ?」
「違うけど?会って話してもらうのは俺の姉さんになるけど?」
「愁のお姉さんって・・・まってね。愁のお姉さんって一つ上なの?」
「そうだけど?」
「じゃあ、愁のお姉さんは現生徒会長の真城 葵先輩なの!?」
「そういえば言ってなかったかな?まあ、そういうわけだから明日は昼休みに生徒会室まで行けば姉さんから話があると思うから。それと、その日は昼ごはんを生徒会室で食べながら話しましょうとかいってたから、昼飯持参でも大丈夫みたいだから昼休みになったらすぐに向かってもいいと思うぞ」
「分かった。・・・ちょっと待って!「行けば」ってことは、愁は一緒に来ないの?」
「俺は、・・・特に必要ないだろ?話はしておいたから」
俺が藤本さんや立花さんがいる生徒会室に行く所を誰かに見られたくないんだよな。ましてや、あの3人と同じ教室にいる俺が一緒にいるところを見られると、また聞かれるようなことになっても面倒だからな。
「そうなんだ・・・」
「ああ、・・・悪いな」
明らかに落ち込んだ気配が電話口からも伝わってきて、出来れば早く電話を切りたい欲求があるんだけど、そんなことをしたら面倒な事が起こるような予感がした。
「私の事だから愁が来なくていいのは分かるけど、・・・・だけど一緒に来てくれたら裏庭での事とかも詳しく話せるから、出来れば一緒に来てくれたら嬉しいんだけど・・・」
「・・・ある程度は姉さんには伝えているから大丈夫だとは思うけど」
「そっか。ところで愁って、入学式があった午後に高校近くの自然公園で喧嘩したりとかしてた?」
「えっ、何で知っ!?・・・・いや、何の事だか?」
いきなり話題が変わって思わず驚いて聞き返しそうになってしまった。確かにあの日もいろいろあったけど、もしかしてあの時に藤本さんは近くにいたのか?あの時は平日だったこともあって、ほとんど人はいなかったと思うんだけど。
「えっと、俺は知らないけど何かあったのか?」
「私たちの高校の制服を着た生徒が絡まれていてそれ助けた生徒がいるみたいなの」
「へ~、どうして急に俺にそんな話を?」
「助けられた生徒が助けてもらった同じ制服を着た生徒にお礼を言いたいみたいなんだけど、見つからなくて困っているみたいなの。愁は何か知っているかと思って聞いてみたんだけど」
「そうか、でも俺は何も知らないよ」
「そっか。・・・・ねえ愁、どうしても明日の昼休みに愁にも立ち会ってもらうことできないかな。愁のお姉さんとは初対面だから緊張して上手く伝えられない事もあるかもしれないから、少しでも現状が伝わるように愁にも同席してもらうことは出来ない?」
さらなる面倒ごとに巻き込まれてこれ以上時間を取られたくなかったのが本音だが、この話自体は俺から提案した事だから、この話の決着までは俺も立ち会うべきか。
「・・・わかった。話し合いにはおれも立ち会うよ」
生徒会室に行く時も誰かに見られなければ面倒な事にはならないだろうから、何も起こらない事を願っておくか、・・・最近は願っても思った通りに行く事が無くなってきている気がするけど、気のせいだよな。
「ありがとう。それじゃ、私はこの後美羽にも電話をするから切るね。この後ゲームにはログインしないからまた明日ね」
「分かった。また明日」
「お休みなさい。愁」
「ん?ああ、お休み、藤本さん」
結局は生徒会室に行くことになったか。そういえばさっきの電話で藤本さんが俺の事ゲームの時のままシュウって呼んでいたな。学校で同じように呼ばれたら面倒な事になりそうだから、明日にでも気を付けるようには言っておこうか。
さて、この後は姉さんが帰ってくるから晩御飯の準備といつもの外に出る準備もしておこうか。あとは、夜にゲームをするかなんだけど・・・やめておこうか。
今日の事を思い出しながら夜に外出した時にしておきたいことがあるから、今日はいつもより時間を多く取るとしよう。
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