フレンド登録
リーナとパーティーを組む話になって、リンとリーナが飲み物を作りに行っている間にシュウは瞑想していたのだが、始めは見ているだけだったホムラが動く気配を感じて目を開けてみると、何故か椅子を降りて俺の隣まで歩いてきた。
少しの間お互い見つめるようにしていたが、何か伝えたい事でもあるのかと思ったので、なるべく怖がらせないようになるべく優しく問いかけることにした。
「え~と、ホムラ?何か伝えたいことでもあるのかな?」
「・・・・」
ホムラは言葉では伝えてはくれなかったが、何をしてほしいのかは行動で示してくれた。俺の手を両手でつかむと自分の頭に持っていった。
これは、リーナがやっていたみたいに頭を撫でろという事なのかな?さっきリーナから人を避けていると聞いたばかりだけど、どういう事なんだろうか。とりあえず頭を撫でてホムラを見ると、リーナがしていた時とは違いリラックスしてそうな感じではなかったが、何となくホムラは納得をしているような雰囲気だった。
その後、ホムラの頭を撫でながら待っていると、キッチンへ行っていた二人が戻ってきた。リーナは満足したような顔だったがリンは少し疲れているような雰囲気を感じ取れる様子だった。
「えっ、ホムラがシュウの隣に座ってホムラに触れてる。この少しの時間に何があったの?」
「それが、リーナがキッチンに行った後に最初は見ていただけだったんだけど・・・何故かこうなった」
説明しようとしたが、経緯は説明できても理由は説明することが出来ないと思い詳しく話すのをやめた。
「ホムラが私から離れて行動するのも初めてだったのに、自分からシュウに近づくなんて・・・本当にいったい何があったの?」
リーナは持ってきた飲み物を手に持ったまま驚きで固まっていた。そういえば、初めて見た時はずっとリーナの後ろにしがみ付きながら隠れていたな。本当に何故なんだろうか。特にホムラに対して何かした覚えはないし、どちらかと言えば怯えられる可能性の方がありそうなものなのにな。
「まあ、でもホムラにとっても私以外の人に慣れるのはいい事よね。ホムラこっちにおいで。リンちゃんがホムラにも飲めるドリンクを用意してくれたわよ」
リーナが呼びかけるとホムラはとてとてと歩いて戻って行き、リンが用意してくれた子供用の椅子にリーナが両手で抱えるようにして座らせた。リーナとリンに飲み物を作ってくれたお礼を言って飲み物を受け取った。
3人に飲み物が配り終えて、ホムラがコップを両手で抱えて飲んでいるのをリーナがわが子を見るように見守っているのを見て本当に保護者みたいだなと思いながら、俺も受け取った飲み物を飲むとさっきまで飲んでいたのとは違い心が落ち着くような香りのする優しい味のハーブティーだった。
全員が一息ついたところで、先ほどの話の続きをすることになった。
「それじゃあ、さっそくフレンド登録を済ませてしまいましょうか」
リーナがフレンド登録をする為にシステム画面を操作しているのを待っていると、リーナが何かを確認するようにこちらを見てきたとき、システムボタンが点滅したと同時に電子音が聞こえてきた。システムメニューのボタンを操作してシステムメニューを開くとフレンドのアイコンが点滅していた。アイコンを押すとフレンドリストと書かれた画面が開かれて、画面の中央に【一件のフレンド申請があります】と表示されていた。
表示されていた画面にふれると【リーナからのフレンド申請を許可しますか。はい・いいえ】と表示されたので【はい】を押した。画面に【リーナをフレンドリストに登録しました】の文字が現れてすぐに消えると、フレンドリストの一番上にリーナの名前とログイン状態が表示されていた
「登録できたみたいだな」
「私のフレンドリストにもシュウの名前が登録出来たから、これでフレンド登録は完了ね」
「それじゃあ、一昨日に学校でリーナから頼まれていた事の報告もしておこうか」
頼まれていた事を藤本さんに電話することは忘れていたけど、姉さんにはちゃんと聞いておいたから伝えることが出来るし、後で電話をかけなくてもいいから手間が省ける。
それに、ここで伝えておいた方が確実に伝えることが出来そうだからなんだよな。あの時藤本さんから渡されたアドレスを書いてくれたハンカチがどこにあるのかを覚えていない。なんせ、あの日は引越しの準備をするのに忙しかったからな。もし万が一、ハンカチが見つからなかった時に連絡の取りようがなくなるから、今話していた方がいいよな。
「その話だけど、別にこの後で私に電話してくれた時に教えてくれた方がいいんだけど・・・」
電話がこなかったことを気にしていたみたいだから、相談内容がどうなったのか早く知りたいだろうと思っていたから、まさか後でいいと言われるとは思わなかった。
「・・・・今でもよくないか?早く分かった方がどうなったか悩まなくてもいいだろうし、今伝えたほうがよくない?それとも、今だとだめな理由でも何かあるのか?」
「別に、絶対に今だとだめって理由は・・ないけど・・・・それだと(真城君の電話番号が分からないんだもの)」
「それだとの後なんて?他に何か理由があるなら聞くけど?」
リーナが言った事の最後の方が聞こえなかったので、聞き返して何か他の理由があるのか聞こうとした。
「それだと、・・・ほら、約束が違うじゃない。愁は私に電話する約束をしていたはずでしょ」
「いやいや、電話するのを忘れていたのは申し訳なかったけど、電話する事と要件を伝えることは別に考えてよくないか?」
「じゃあ、ここで要件を聞いてもいいけど後で必ず電話してくれるなら、今話してくれてもいい」
「いや、要件を伝えたら電話する必要なくないか・・・」
「あるの!必要あるの‼それとも、愁は電話が出来ない理由でもあるの?」
「・・・・・」
思わず目を逸らしてしまった。
「えっ、あるの?・・・何で真城君が私に電話出来ない理由があるのか教えてほしいな」
「え~っと・・・・・」
俺が言葉に詰まり考えている姿を見てリーナは何か思いついたのか、問いかけて反応を探るようにして理由を聞いてきた。
「もしかして、今この話を今しようとしているのは後で真城君が私に電話することが出来ないから?もしかして、携帯を無くし・・・・私が渡した携帯番号を書いたハンカチを無くしたのね?」
「言い訳をさせて下さい」
「なんで敬語なの。言い訳は聞くけど・・・」
「ありがとう。あの日に携帯が壊れていたのは話していたと思うけど、実はあの日に引越ししないといけなくなって、荷造りとかで忙しくて携帯を直しに行ったのが遅くなったから替えの携帯が来るのが今日になってしまったんだ」
「まだ携帯が届いてないの?」
「いや、・・・昼間に届いた」
「・・・・」
特に怒っているようではなかったが、リーナだけでなくリンやホムラからも呆れられているような空気を感じ取れた。
「電話するのを忘れていたのは申し訳なかったと本当に思っている。でも、ハンカチは無くしてはいない・・・と思う」
受け取った時以来、一度も見てはいないけど無くしてはいない。寮にあった荷物は全て持ってきているから、何処にあるのかが分からないだけで、部屋の中には必ずあるはず・・・あるよな。
「忘れてたのはもう本当に怒ってないからいいけど、本当に無くしてはいないのね。電話する約束は守ってくれるよね」
「もちろん、大丈夫だって」
「じゃあ電話で内容も伝えてくれたらいいからお願いね」
「わかった。・・・ん?いや、内容は今」
「お願いね」
「・・・わかった」
結局は俺が藤本さんに電話して、内容を伝えることになってしまった。でも、本当に万が一にもハンカチを無くしていた場合は連絡が取れないんだけど。一応ちゃんと対応できるように聞いておこう。
「え~と、もし万が一連絡先を書いたハンカチが見つからなくて電話が出来なかった場合はどうすれば?」
「絶対に見つけてほしいんだけど、もしそうなったらこの後ギルドでパーティー登録する頃には夜になるでしょ。私は晩御飯のためにログアウトするからその時にシュウも一緒に一度ログアウトして電話をかけてきてくれたらいいよ。その時に電話が出来なかったら夜9時ぐらいに再ログインするから、その時に電話番号を交換しましょう」
「わかった。じゃあさっそくギルドに向かうとしようか」
本当なら今すぐにでもハンカチを探す為にログアウトしたいんだけどな。そんなことを思いながら、席を立ちあがった。
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