依頼の受注
12/15誤字の訂正
冒険者ギルドでギルドカードを作り終えた後、ギルド左手にある依頼掲示板に掲載されている依頼を見ていた。
「う~ん」
冒険者ギルドの依頼掲示板に、近隣の魔物の討伐・隣村までの護衛・薬草の採取・坑道の資源調査などいろいろな依頼があったが、なかなか受けてもよさそうな依頼は見つからなかった。魔物の討伐や護衛などの依頼は、まだ街の外にも出て一度も魔物との戦闘もしていなくて土地勘もない自分が受けるのは難しいと思ったのと、魔術を使うところを見られて不信感を持たれる可能性がある為、依頼を受ける候補からは除外した。残った依頼の中で受けれるランクで他にいい依頼がないか探しながら掲示板を見ていると、一つ気になった依頼が目についた。
「あれ、これは…」
依頼掲示板の一番下の隅に、他の依頼書が新しい白い紙で貼られているのに対して、1枚だけまるで何年も経っているような色褪せた依頼用紙が、新しい依頼用紙の下に隠れるように貼られていた。
気になったので、他の依頼用紙を外してから色褪せた依頼用紙を手に取り依頼内容を見てみる事にした。
~~~
【オノコロ】の村から北西にある丘の上にお墓があります。
そのお墓に依頼品を届けてください。
お墓までの案内は導の腕輪を使って下さい。
依頼品
・花束(ヘリクリサム、青いバラ)
・小さい小箱
報酬
・10000ベル
・導の腕輪
・--の指輪
期日
・ーーー
~~~
依頼内容はお墓詣りで、自分では行けなくなったから代わりに行ってほしいという事なのかな。報酬の一部と期日が紙の劣化で見えなくなっているな。それにしても紙がこんな状態になるまで依頼を受けてもらえていない事は悲しくなるな・・・よし、これを受ける事によう。いつまでもお墓参りできないなんてそんなのはよくないよな・・・。
自分にも言い聞かせるようにして呟くと、古い依頼用紙を手に持ち受付のカウンターに向かった。
受付に着くとギルドカードを作成してくれた女性が対応に来てくれたので、依頼書を渡して依頼の受注を伝えた。
「この依頼を受けたいと思います。手続きをお願いできますか」
「はい。かしこまりました」
依頼用紙を見たギルド職員の女性が、受け取った依頼書を見つめて不審そうにした。
「こちらの依頼書はどちらから持ってこられたのですか?」
「そこの依頼掲示板からですが?」
依頼掲示板に指をさして答えると、改めて依頼書を見ながら少し考えている様子だった。
「そうですか。少し確認しますので少々お待ちください」
何かおかしなことがあったのだろうか?。もしかして報酬や期日が見えないからその確認をしているのかな。ギルド職員の女性がよく分からない魔道具の様なものに紙を通したり、奥の扉の先に行ってから数分が経った後に出てきてカウンターに戻ってきた。
「お待たせいたしました。こちらの依頼は個人依頼の扱いになっております。依頼用紙の報酬と期日が消えておりましたので、確認したところ報酬は10000ベルと導の腕輪と魔術の指輪となっておりました。期日に関しては依頼用紙に不備があった為に読み取ることが出来なかったので、個人依頼の未達成案件として無期限での対応とさせていただきます。こちらの依頼を受けられますか?」
「え、報酬に魔術の指輪ですか?」
「はい、そのようになっております」
魔法ではなく魔術の指輪か。街の魔道具屋では魔術の道具は一つも売られていなかったが、まさか依頼で魔術関連の報酬があったとは、これは受けなくてはならない理由がひとつ増えたな。
ただ、出来れば目的地のお墓に行く前に一度依頼主に会っておきたいんだけどな。どういう事情でお墓に行けなくなったのかをお墓で眠る人に伝えるくらいはしておいてあげたいからな。
「期限はないとのことでしたが、依頼主に会ってから依頼の目的地に向かいたいと思うんですけど、依頼主の方に会うことは出来ますか」
「本来なら依頼用紙から読み取った情報に記載しているのですが、依頼主の情報が読み取ることが出来ませんでした。なので、今すぐお会いすることは難しいかと思います。こちらとしても、依頼が達成されたことを伝える為にも復元はするのですがどこまで復元できるかは分かりませんので、もし復元することが出来なかった場合は依頼達成の報告書を街にある依頼の達成掲示板に一定期間張り出す規定となっております」
「そうですか、わかりました。その依頼は受けるので手続きをお願いします」
「かしこまりました、依頼の手続きをしますのでギルドカードをお預かりいたします」
ギルドカードを渡すと依頼用紙とギルドカードを魔道具に通して、ギルドカードと1つの箱を持って戻ってきた。
「それではギルドカードと依頼の品です。それとこちらが導の腕輪です。導の腕輪には、目的地の位置情報が記録されていますので、依頼達成の確認には導の腕輪の位置情報のログにて確認いたします。依頼達成した後で、こちらまで報告お願いいたします。その時に報酬もお渡しいたします。お気をつけていってらっしゃいませ」
依頼書に不備があったほかには特に問題もなく済んだので、ギルドカードと依頼の品(花束、小さな箱)も受け取ると、目的地に行くために街周辺の地図を確認する為に冒険者ギルドの2階に上がっていった。
***
シュウが2階に行った後には、ギルド職員の女性が受付に立ったまますごく不思議そうな顔で首をひねっていた。
「さっきの依頼用紙なぜあんなに劣化していたのかしら?長期の依頼でも3か月に1回は紙を張り替えているからあんなことになるはずはないんだけど・・・もしかしたらまた冒険者の誰かがエールでもかけたりしたのかしら、一応後で他の依頼書が大丈夫かどうか見ておいた方がいいわね」
時折、冒険者ギルドでは上手く儲けることが出来た冒険者による宴会が行われたりするので、その時にエールを零して依頼書が汚れることなどがよくあった為に、そこまで疑問には思わなかった。
「ちゃんとギルドに依頼の品もあったし報酬もあったけど、報酬の一つが魔術の指輪とかいってよく分からないものだったわね。ん~でもあの依頼用紙には【オノコロ】の村って書いてあったけど、もう何十年も前よねここがまだ村だったときなんて、昔から住んでいる人がつい間違えて書いたのかしら。それに目的の場所が北西にある丘の上と書いてあったけど、北西に丘なんてないわよね。だってあそこは・・・」
その後も、ギルド職員の女性は不思議そうに悩みながら受付に立っていると、次の冒険者が来て対応しているうちにシュウが受けた依頼の事は何故か忘れていったのだった。
***
お読みいただきありがとうございます。




