冒険者ギルドと生産ギルド
昼ご飯を食べてゲーム内での空腹表示もなくなったので、次に向かう場所は冒険者ギルドに向かうことにした。冒険者ギルドは北の大通りの中間ぐらいにあり、生産ギルトと冒険者ギルドが隣同士に建っていた。正面から見て右にある冒険者ギルドは、2階建ての建物で盾の前に剣が2つ交差しているマークの下に冒険者ギルドと書かれた看板が付いていて、左にある生産ギルドも2階建てで絵で描かれた米と麦の束が2つ交差しているマークの下に生産ギルドと書かれた看板が付いていて、両方とも入り口の扉は常に開いているようだった。
そしてシュウは、冒険者という看板を前に少し気持ちが高鳴るのを感じながら冒険者ギルドの中に入っていった。
中に入り周りを見渡すと、正面にギルドカード作成・依頼作成・完了報告・パーティー申請と上のプレートに書かれた受付カウンターがあった。
右側には魔物素材買取専用と書いてある受付と奥に2階への階段があり、左にはおそらく生産ギルドに続く通路と広いオープンスペースがあり壁にある掲示板やテーブル・椅子がいくつか置かれていた。いくつかのテーブルには冒険者らしき格好をした人達が座っていたり、掲示板を見ていたりしているようだった。
冒険者ギルドの中を見渡して、まずは正面のギルドカード作成受付の所に行きギルドカードを作ってもらうのがいいだろうと思ったので、正面のカウンターに向かって歩き出した。受付の所に行くと、カウンターの奥で事務作業をしていた女性が受付の所まできて対応してくれた。
「こんにちは、本日はどういったご用件でしょうか」
「こんにちは、ギルドカードの作成をお願いします」
「かしこまりました。それでは、こちらの紙の一番上にお名前と書かれたところに、自身の名前の記入をお願いします。書き終わると紙を手に持ち、紙の色が全て白くなるまでお待ちください」
「わかりました」
渡された青い紙にシュウと名前を書いて、紙が全て白くなるまで待つと前と同じようにステータス(status)と書かれた紙が出来た。
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ステータス(status)
名前
・・・ シュウ(shu)
ロール(職業)
・・・ 魔法使い Lv.2
称号
・・・ 魔法使い見習い
スキル
*個人情報秘匿により閲覧不可
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ちゃんと隠蔽されてるな。あれ?そういえば、自分はここに来るまでに魔術師になってしまったけど、仮に何のロール(職業)もとらずにギルドカード作成したらどうなるんだろ。それに、スキルの項目が閲覧不可なのは師匠の時とは違うな。これも聞いてみるか。
「すいません、ギルドカード作るときにロール(職業)がなかった場合はどうなるんですか?それと、このスキルの所の*個人情報秘匿による閲覧不可とはどういうことですか」
「職業がない場合は、記載されずに空欄のままです。冒険者として活動される場合は、ギルドの裏手に戦闘などの基本を教えることのできるプログラムがありますので、職業の変更の際はご自由にご利用ください。スキルの項目は、冒険者にとってスキルが生命線となります。なので閲覧はできないようになっています。冒険者ギルドでは閲覧を希望されて本人確認が出来ても、例外を除き閲覧する事は出来ません。スキルを確認する場合は教会でご確認ください」
「例外とはなんですか?」
「ギルドカードを持つものが犯罪者になった場合には、ギルドが所有する特殊な魔道具にて確認する場合などがあります」
「なるほど、ありがとうございます」
これだとよほどのことがない限り、ギルドがスキルを確認することもないから不審に思われることはないかな。
「他に質問がなければ紙をお預かりして、ギルドカードの登録と作成を行います」
「大丈夫です。登録お願いします」
持っていた紙を渡すと、受付の女性がカウンターの奥に行って、コピー機のような道具に紙をセットするとこちらに戻ってきた。
「それでは、作成まで5分ほどかかります。その間に冒険者ギルドと生産ギルドの役割の説明をいたします」
冒険者ギルドで何が出来るのかを聞こうと思っていたから説明してくれるのはありがたい。でも生産ギルドの説明もしてくれるのか。外から見た時にも冒険者ギルドと生産ギルドの建物が通路で繋がっていたから後で寄ろうとは思っていたんだけど両方説明してくれるなら行く手間が省けるな。
「お願いします」
「まずこちらの冒険者ギルドでは、依頼の受注,作成、魔物素材の買取などが出来ます。それと、数日前に2階に新しく魔物や周辺の地形が書かれた本や地図を掲載しているスペースが作られました。情報量はまだまだ少ないですが、冒険者にとって有益な情報ですのでご自由にご利用ください。また、2階正面の売店にて地図も販売していますので必要な場合はお買い求めください。利用上の注意として本などの物品の破損などがありますと、賠償していただく事になるのでお気を付けください」
冒険者ギルドで出来ることは大体思っていた通りだけど、2階で地図と魔物の情報が手に入るのか。後で必ず寄るとしよう。
「次に、依頼の作成ですがこちら正面カウンターでいつでも行うことが出来ます。主に、魔物の討伐や町までの護衛、未開地域の調査などが多くなっております。そして、依頼の受注はここから左手にある掲示板に張り出される紙にて依頼を確認していただき、こちらの正面カウンターで受注手続きが出来ます。受注時の注意点ですが、受注用紙には危険度が記載されています。★☆☆☆☆~★★★★★の表記がされていて星が多いほど危険な依頼となります。また、冒険者ギルドでは冒険者ランクがあり最初はブロンズでシルバー・ゴールド・ミスリル・オリハルコンと上に行くほど、優遇措置や危険度の高いものが受けられるようになります。原則として、シルバーまでは危険度★★★☆☆まで、ゴールド以上で危険度★★★★☆以降の依頼を受けられます」
冒険者ランクのブロンズではどんな依頼が受けられるのかも後で見ておくか。ここでの用事が終わった後は街の外に出るから依頼を受けてもよさそうなものがあったらついでに受けてみるのもいいかもな。
「冒険者ランクは、依頼の達成数や達成された依頼の内容を確認して自動的にシルバーランクまでは上がります。ですがゴールド以上のランクになるには、ギルドからランクアップの試験を行います。ゴールドランク以上による優遇措置では冒険者ギルド指定の宿屋・飲食店での割引やさらにランクが上がると各種税の免除、削減などがありますので、ぜひ上のランクを目指してください」
ランクアップによる恩恵はあるのか。ランクを上げることにあまり興味はないがランクの制限で行くことが出来ない場所とかがあったりすると面倒な事になりそうだな。とりあえず自動であげれるらしいシルバーランクまでは上げておいてもいいかもしれないな。
「次は魔物素材の買取ですが、ギルドの入り口から右手にある魔物素材買取専用の受付にて取り引きしてください。注意点としては、冒険者ギルドでは魔物素材のみの鑑定をおこなっておりますので、武器や防具などの道具は取引いたしません。それらは、生産ギルドの買取受付をご利用ください」
冒険者ギルドで魔物素材、生産ギルドで武器防具の買取か。今は生産職をする予定がないから戦闘をメインにする俺は冒険者ギルドの利用が多くなりそうだな。
「あと、冒険者ギルドの職員は街の治安維持なども行っていますが、基本的に冒険者同士のトラブルには介入いたしません。ですが、トラブルの仲裁などは冒険者ギルドへの依頼ができますのでご利用ください。以上が冒険者ギルドの主な役割ですが、ここまで質問はございますか?」
「ランクによって受けれる依頼の危険度があるのは分かったのですが、原則ということは例外があったりするのですか?あと、ランクで高くないと行けない場所などはあったりしますか?」
「はい。例外として依頼を受ける際にパーティー申請されていて、ランクが高い人がいる場合にはギルド側で判断して、危険度が高いランクの依頼も受けられる事があります。そして、この近くにはありませんがランク高くなければ行くことが出来ない場所も存在します」
「なるほど。それと、トラブルの仲裁とはどういう形で行われるのでしょうか?」
「そうですね。よくあるのは共同パーティーでの報酬割合による喧嘩などが多いので、冒険者ギルドの裏手で決闘による決着を付けたりする方が多いですね。冒険者ギルドでは特殊な空間による決闘で命を失うことなく決着をつけることが出来るので、話し合うより実力で決着をつける方が多いです。もちろん、話し合いで納得していただくためにギルドの第三者の意見による話し合いで解決することもございますが・・・正直あまり多いとは言えません」
「そ、そうですか。分かりました。ありがとうございます。説明の続きをお願いします」
話し合いより決闘で決着をつけるのはイメージ通りではあるけど、冒険者ギルドの人も大変そうだな。でも冒険者ギルドで出来ることは大体わかったから、あとは生産ギルドの詳しい説明だけだな。
「では生産ギルドについてご説明いたします。冒険者ギルドと生産ギルドは建物が繋がっておりまして、左手側の掲示板の奥に通路がありますので、そちらを通ると生産ギルドへと行けます。生産ギルドでは物品の買取を主な役割としており、武器・防具・魔道具・特産品などを売ることが出来ます。注意点としては、生産ギルドでは魔物素材は買取しておりませんので、魔物素材は冒険者ギルドにて取引ください」
さっきは武器防具だけしか言っていなかったけど魔道具や特産品も売れるのか。でも特産品?この街の特産品を別の街に売ったりしてお金を得たりすることが出来るんだろうか。もしそうなら、この街の特産品が何かは知らないけど街で情報を集めて他の街に売る旅商人とかも出来るんだろうな。
「そして生産ギルドの正面受付では、武器・防具・魔道具・家具・薬品・生活用品などの作成、売買の依頼を受け付けています。受付時に個人依頼とギルド依頼に分かれており、個人依頼ではこちらと同じように掲示板に掲載します。掲載した依頼が受注された場合には、ギルドカードにメッセージが送信されるので依頼した生産ギルドにて受注者が作成した品物の売買を行うことが出来ます」
「ギルド依頼では作成リスト・物品の売買リストがありますのでその中から、作成の依頼や商品の購入予約を行うことが出来ることと、ギルドからの生産依頼もありますのでそちらを受注することも出来ます。注意点としては、ギルド依頼で作成・取り寄せする場合はギルド専属の職人が対応するので、手数料、保証料が発生します。なので多くの場合が個人で依頼された場合よりも時間と金額がかかります」
個人依頼とギルド依頼か、個人の依頼だと余計な手数料や保証料は発生しないけどギルド依頼に比べて自己責任の負担が大きいんだな。でも、ギルドの作成リストに載っていないものは自分で売られている店を探すか個人で作成の依頼を出すしかないのか。街によってギルドの作成リストが変わるのかどうかは聞いておきたいな。
「それと、冒険者ギルドと同じように生産ギルドにもランクがあります。ランクの種類は同じでブロンズ~オリハルコンまであります。冒険者ランクと同様で生産ランクのゴールド以上は優遇措置があるので、ぜひ上のランクを目指してください。ランクは商品の売買金額や依頼の達成数など総合評価にて上がります。その他に、生産ギルドの2階にて生産職のレクチャーをおこなっておりますので、興味がございましたらお立ち寄りください。以上が生産ギルドの主な役割です。ご質問はございますか?」
「ギルドの生産リストの内容は街によって変わったりするのでしょうか?」
「そうですね。多くは変わりませんが街いる職人の質や立地によってはリストが変わっているところもあります」
職人の質や立地によって変わることがあるのか。もし欲しいものがあるならそのあたりの事も考えて行く街を決めるのもいいな。
「そうなんですね。説明ありがとうございました」
「いえ、ではそろそろギルドカードも出来上がりましたので少々お待ちください」
そういうと、奥に行き紙をセットしていた道具の所で何か作業をすると、カウンターにカードを持って戻ってきた。
「こちらがギルドカードです」
渡されたカードは、名刺より一回り大きいぐらいの大きさで、真ん中に白い斜めの線が入っており右側と左側が銅色になっていた。そして、右側には【冒険者ランク:ブロンズ】、左側には【生産ランク:ブロンズ】と記載されていた。
「そちらのギルドカードはランクによって色も変わるので、一目で自身のランクが分かるようになっています。また、裏面には自身の簡易ステータスと受注された依頼の内容や、生産の発注があった場合のメッセージが表示されるようになっています」
ギルドカードの裏を見ると、冒険者ギルドで調べた用紙のステータスが左側に載っており、右側のメッセージが記載するであろう場所は何も書かれていない空欄になっていた。
「これにて、ギルドカードの作成は完了です。ほかに質問などがないようでしたら以上でギルドカードの手続きは終わりです」
「質問はないです。ありがとうございました」
席を立ち、ギルド内のオープンスペースに行って先ほど手に入れたギルドカードをしまうと、次にどうしようか考えていた。
冒険者ギルドの2階には後で必ず行くけど、一階に依頼の掲示板があるからとりあえずは掲示板の依頼を見てどんな依頼があるのかを確認してからにしようと思い掲示板のほうに歩いて行った。
お読みいただきありがとうございます。




