師匠の伝言、拠点の確保
ゲームに戻り目を覚ますと、何故か小屋の天井が見えていた。
あれ、見たことのない天井だ。おそらく小屋の中なのは間違いないけど、小屋の裏の広場でログアウトしたはずなのになぜ小屋の中にいるんだ?。疑問に思いつつも一先ず体を起こそうと思った時に、すぐ隣から声がかけられた。
「シュウ様、お目覚めになられましたか?」
ログアウト前まで聞いていた声とは違う高く澄んだ凛とした声で話しかけられたので、いったい誰だと思い体を起こして声をかけられた方向を向くと、師匠(仮)がリンちゃんと呼んでいた子が立っていた。
「今、声をかけたのは君?」
「はい、そうです」
「え~と、初めて会った時と声が違っているけど、師匠ですか?」
「いえ、あの方は術式の効果が切れたので、もうご自身の体に戻られています」
・・・そういえば最初に会った時に、依り代に意識を飛ばしているとか言っていたな。
「という事は、君は師匠が言っていたリンって子なのかな?」
「はい」
なるほど。初めて会った時には声があっていないと思ったけど、今の声が本来の声なら容姿と声があっていて違和感もないな。師匠(仮)が最高傑作と言うだけはあると一人で納得した。
「マスターから伝言を預かっています。今ここで聞きますか?それとも、小屋で座られていたテーブルと椅子の所で話しますか?」
「椅子の所まで移動するから、そこで伝言を聞かせてください」
「わかりました。では、こちらへどうぞ」
リンは部屋の扉をあけて外に出て行ったので、自分もベットから立ち上がり後をついていった。
師匠と話していた時と同じように座ると、小屋のキッチンがある所からリンが出てきて、どうぞといいお茶のような色と香りがする飲み物を置くと対面の椅子に座ったので、ありがとういただきますと言って少し湯気が立っている飲み物を口に含んだ。
「おぉ、とてもおいしいです」
「ありがとうございます」
いつも自分で作ったパックの飲み慣れたお茶よりおいしいと感じた。やっぱり人に入れてもらうお茶はより美味しく感じるものなのかな。ん?ということは、いつも俺についでとばかりにお茶や飲み物を用意させる姉さんはそれを知って・・・・いや、違う気がする。あまり深く考えないでおこう。
「このお茶はリンさんが入れられたのですか」
「はい、そうです。それとシュウ様、私を呼ぶときにさんは不要です。呼び捨てで結構です。それと、敬語も不要です」
師匠(仮)が入っていた時より大人びて見えるから、見た目は少女だけど敬語で話していても違和感はなかったけど、リンがいいというのなら楽に話すとしようか。
「そう?わかったよ。自分の事を呼ぶときも様はいらないからね」
「そうは参りません。私は今後シュウ様に仕えることになるので、敬称を変えることはできません」
・・・ん?仕える?聞き間違いか?。
「えっと、リンさ・・いや、リンが仕える?俺に?どうしてそうなるんだ?」
いきなりすぎて意味が分からないんだが、リンがなんで俺に仕えることになるんだ?。もしかすると、師匠(仮)が何か言ったのかもしれないけど、さっきリンが師匠(仮)の伝言があるとか言っていたからな。
「そのことに関しては、伝言の内容と同じ内容を伝えることになるので、まずあの方からの伝言をお伝えいたします」
いろいろ気になる事はあるが、とりあえず聞いてみるしかないか。でも俺がログアウトしたとき師匠が色々聞きたそうにしていたからな。あの師匠の事だからただの伝言じゃなくて、かなり文句とかもいってそうだ。確かめたいことがあったとはいえ説明もせずにログアウトしなのは俺だから、色々言われるかもしれない事は覚悟しておこう。
「それではお伝えいたします。今後の魔術師の修行の件ですが、魔術師のレベルが5以上となった時に、現在使用できないスキルの獲得条件が1つ解除されます。その時にあの方より試練が与えられるので、その試練を達成するとスキルが1つ使用可能となります」
ステータスで表示されていなかったスキルの事か。ステータスには特に解放される条件の説明もなかったからどうすればいいのか分からなかったけど、師匠の試練を達成するとスキルが使えるようになるのか。でも、師匠が与えてくる試験か・・・いきなり戦わせてきたさっきの事もあるから、いい予感はしないな。
「次に、今いるここの空間の件ですが、あの方の弟子となったことにより自由に使用可能となっています。こちらがこの場所へ行き来する為の鍵です。使い方は、ここから出るときはこの小屋の入り口の扉に鍵穴がありますのでそちらに差し込み回してください。街へとつながる扉に変わります。逆にこの小屋の場所に来るときは、来られた時にあった街灯に鍵穴があるので、そこに使用すると同じようにこちらにつながる扉が現れます」
説明しながらリンがポケットから取り出して鍵をテーブルの上に置いた。鍵はウォード錠で、持ち手の部分には森の上に三日月が描かれているデザインの鍵だった。
「そして私が仕える件ですが、あの方がいない間は私がここの空間を仮所有して管理していましたが、この度シュウ様がこの空間を自由に使えるようにと、あの方よりシュウ様に所有権を譲り渡しました。なので、シュウ様がこの空間の所有者となった事により、あの方から引き続き私が仕えてサポートすることを命じられました」
リンが俺に仕えることになっているのは、やっぱり師匠(仮)が命じた事だったのか。
「俺としてはここの事は何もわかってないから助かるけど、リンは突然の変更に不満とかはないのか?」
「ありません。依り代となっていた間の記憶もあるので、どのような経緯でこうなっているのかも把握しております」
そういったリンは、顔は無表情だったが若干憐みが混じった雰囲気を言葉から感じ取れたんだが気のせいかな。
「それでは、最後に鍵と魔核をお渡しいたします。シュウ様が倒された鎧の魔核です。正当な報酬だから受け取りなさいとの事です。伝言は以上です」
師匠からの伝言を聞いて今の状況やこれから何をすべきかも大体の事情はわかった。けど、最後に渡された魔核は前もらった青黒い色ではなく濃い黒の魔核みたいだけど、本当にもらっていいんだろうか。あの黒鎧は師匠(仮)の魔術で出てきたものだけど、倒し魔物の種類に入るのだろうか?それに、俺の魔術のように破壊された武器がすぐに使えなかったように、あの黒鎧も魔核をあげたからあの黒鎧を出せなくなったとか言われないだろうな。・・・・・まあいいか。くれると言っているし、他に伝言もないみたいだから、師匠(仮)も納得している事なんだろう。
しかし、あの師匠(仮)にしては的確で分かりやすい伝言だったな。最後の様子からして、もっと何か言われるかと思っていた。・・・予想でしかないけど、一応聞いておくか。
「確認なんだけど、師匠からの伝言ってほんとうにそれだけだった?出会った感じからして正直もっと伝言で文句を言われると思っていたんだけど」
「はい、先ほど説明した内容と合わせて文句を数多く言っていましたが、説明に不要だと判断して伝えませんでした。ご希望でしたら全てあの方が言われたとおりにお伝えいたしますが、いかがされますか」
やっぱり思っていた通りだったんだ。期待を裏切らないな人だな。そしてリンはさすが師匠(仮)が最高傑作というだけはある。何度目かになるリンの素晴らしい対応に感動しつつ、多分だけど、最後の報酬の話の所だけ師匠(仮)の言葉通りに伝えてくれたんだろうという事が分かった。
「・・・いえ、結構です。伝言ありがとうございました」
そういえば、なんで自分はログインしたとき小屋の中だったのか。あの師匠(仮)がわざわざ運ぶとも会燃えないのだけど、ついでに聞いてみるか。
「リン、質問いい?」
「はい」
「本当はこっちに来るとき小屋の裏に戻ると思っていたのに、この小屋のベットにいたのはなぜか分かる?」
「それはシュウ様が広場で倒れられた時、少しの間待っていたあの方が時間切れだ~と言ってご自分の体に戻られた後に、私が動かなくなったシュウ様をこの小屋まで運んだからです。ただ、小屋の中に入るとシュウ様の体が突然消えました。そして、先ほどシュウ様が起きられる数十秒前にベットに現れました」
なるほど、つまりこの小屋の外は戦闘フィールド扱いで、この小屋の中はセーフティエリアだから体が消えて、なおかつ自分の所有物になったからベットで起きたという事なのかな。
「そうか、運んでくれてありがとう」
「いえ、主のお世話は仕事の内なのでお気になさらず。その他に質問はありますか」
「今のところは大丈夫」
さて、どうしようかな。いきなりだけど拠点ができたのはいいことだが、何からしていこうか。魔術師のLv.上げやスキルのカードの検証、武器は装備できないけど防具は装備できるから街で買いたいし、街の中も詳しく見ておきたいな。
おっと、そういえばもらった魔核もあったな、これはさっそく使っておくか。魔核を魔術の根源(カードケース:デッキ入り)に当てると吸い込まれていった。ステータス画面で確認するとスキルポイントが7/10ポイントになっていた。
前の魔核は2ポイントだったけど、今回は5ポイントも手に入ったのか。まだ二つしか試していないから確定ではないけど強い相手の種族ほどもらえるポイントは多くなるのかもな。スキルポイントまではまだ足りないから、魔物を倒しに街を出るまで考えるのは後回しにして、とりあえずは街に戻ってみるか。
街では色々準備しないとな。あの飴屋の女の子に聞いた話だと、北通りが冒険者用の物が多く売っていると言っていたので、まずは街の北通りから散策していくとするか。
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★魔術師 Lv.2 次のLv.まで 20/100%
●デッキ(ソード・ワンド)
●スプレッド・スリーカード
●トリック
(チェンジ)
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SP 0(7/10)
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