当選発表の日
とある高校にある一年生寮の一室。
1LKリビングにある机の前で静かにノートパソコンの画面を見ている青年がいた。
青年が見ているパソコンからは、番組を進行している司会がまるで年末宝くじの当選番号の発表のように、とあるゲームの先行プレイ当選者の当選番号を発表していた。
「さあ、当選者枠も残り少なくなってきました。全世界同時に行われる今回の当選者抽選イベントもいよいよ終わりに向かっています。今回では各国1000人の当選者のみが国家プロジェクトによって開発された世界初のVRMMOのゲーム【セカンドワールド】を先行プレイ出来る権利が得られます。そしていま日本では990人まで当選番号が決まりました」
「そして、残りの10人!ここからは今までの100人表示で行ったスロットマシン形式での当選発表ではなく、日本限定で行う今まさに!映像を見ているあなたにチャンスがある視聴者限定の当選企画です」
司会の放った言葉に、モニターの中のエキストラの人達の驚きと興奮の声が会場に鳴り響き、しばらく落ち着くまで待ってから司会は続きを言った。
「そして幸運をつかんだ当選者10名には、なんと!!ゲームがインストールされたVR機器一式も副賞としてついて来ます。なんでも、あまりにも予約する人が多くてゲーム機器を手に入れることが出来ていない人たちが多くいるとニュースにもなっている為に、当選者の方にはせっかく当たっても出来ないということがないようにするとのことです。なので皆さん、この機会にゲーム機器と先行プレイ権を同時に手に入れることが出来るチャンスです!皆さん奮ってご参加ください!CMの後に参加方法を詳しく説明するので、どうかチャンネルはそのままでお願いします!!」
~ CM ~
「さあ皆さん!参加方法の説明を始めますよ!参加方法は簡単です。今日この日この為だけに作られた本日限定の公式サイトがあるので、今私の下に出ている公式サイトのURLを開いていただくとこの当選企画に参加することが出来ます。サイトを開くと六つの枠が表示されるので、そこに自分の好きな番号や当たりそうな番号を打ち込みましょう。そして、その番号と今こちらにいる日本のゲーム開発者とゲーム関係者の方6名が0~9までの数字を一名ずつ順番に10回発表していただきます。皆さんが入力された番号と、こちらで発表された数字がすべて当たった方が当選者です‼さあゲーム先行プレイの権利を獲得して、記念すべき最初のプレイヤー1000人になれるかどうか!この番組を見ている皆さんご自身の幸運を今ここで使うときです‼︎」
青年は映像を見ていた時から無意識に握りしめていた手を緩めてサイトを開くと、少し考えた後に思いついた数字を入力した。
「…*,*,*,*,*,*、‥‥当たるとは思えないけど、だけど、…もし当たったのなら」
番号を入力し確認ボタンを押した後、再び青年はパソコンで続きを見た。
「さあ、入力の締め切り時間も過ぎたので、今から最後の10人の当選者の番号を順番に発表していきましょう!まず一人目の番号はこちら!・・・・・」
当選者番号の数字は司会の進行とともに発表されていく。
「会場に来ていた人から当選者が出るというとんでもないサプライズも起こりましたが、いよいよ最後の当選者番号の発表です!!それでは、1000人目となる最後の当選者番号の発表です。さて、皆さん気になる数字は・・・・・」
ドラムロールとともに数字が一つずつ発表されていった。
「0・・0・・1・・・」
「・・・」
「0・・0・・1・・0・・0・・さあ、最後の数字は何でしょうか、おっとここで開発陣から情報がありました。なんと、実は開発者の方々で最後の数字はこれにしようと決めていたそうです。しかし、ここまでの数字を見てその情報を聞くと、なんとなくこの数字じゃないかというものがわかってくる気がします。そして、最後の数字は開発者が発表します。さあ、最後の数字は・・・」
・・・・・・・・
「番組はこれにて終了です。なお、10名の視聴者当選イベントで当選者が10名に満たなかった場合、公式HPでの応募による再抽選を行いますので、そちらの情報も是非チェックしてください。それでは、本日は【セカンドワールド】のゲーム先行プレイ当選者発表イベントをご覧いただきありがとうございました」
番組が終わりパソコンの映像が終了しても青年は少しも動いてはいなかった。1分が過ぎ5分が過ぎたころに、おもむろに両手を頬にもっていくと勢いよく頬をたたくと、パァンと大きな音がして両頬が赤くなって痛みがあるのを自覚してから青年はようやく声を発した。
「夢じゃないんだな・・まさかあんな数字で当たるなんて・・・いや、でも本当に当たっているのか?」
番組を見ていた映像から先ほど入力したサイトの画面に切り替えると、画面の真ん中に【当選おめでとうございます】の文字が大きく表示されていた。信じられない気持ちのままサイトで当選手続きの入力をしていき、全ての手続きが終わってパソコンを閉じてから、ようやく当選したのだという実感がわいてきた。
「このゲームを知った時にはもう先行プレイの抽選は締め切られていたし、今からゲーム機器を買うのも難しいと思っていたけど、まさかいきなり同時に手に入れることが出来るなんて・・・」
ゲーム機材も都内だったら翌日には届けれるようだったから、明日の夕方に受け取ることにした。3日後の土曜日からゲームの先行プレイは出来るはずだから、本当にこのゲームをやる意味があるのかは実際にプレイしてみないと分からないけど、でもこのゲームを知ったきっかけである開発者のインタビューで語られていたことが事実なら、絶対にいつかはプレイして体験しておきたい事だった。開発者が言っていたことが事実ならこのゲームをすることで俺に足りないものを得られるはずだ。
そして…。
「俺(真城 愁)の望みを、叶えることが出来るはずだ」
それから青年(真城 愁)は3日後のゲームプレイの為に部屋を片付けたり模様替えをしていると、不幸なアクシデントがあって模様替えの最中に携帯が落ちて画面が割れたりして携帯が使えなくなってしまったが、当選した分の幸運と引き換えなら安いものだと思い気にせず続けていると、夜も遅かったこともあったために隣室から寮長に苦情が入ったらしく寮の管理人に注意を受けてしまった。
まだそんなに急ぐこともないかと思い、続きはまた明日にするとして明日からの予定を考えてから寝ることにした。
こうして、史上初の仮想体験型VWRMMOゲーム【セカンドワールド】を先行プレイから遊べるようになった真城 愁の望みを叶える為の高校生活が始まる予定だった。
VWRMMO(Virtual world Reality Massively Multiplayer Online)
【セカンドワールド】Second World
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