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剣と魔法のセカンドワールド  作者: K.T
1章 新たな世界 第一話 不思議な導き
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開発陣の裏話



 とある居酒屋の個室


「主任、なんで番組の最後の当選者の数字変えたんですか?ランダムな6桁の数字なんて10人も当たるはずがないから、最後の数字はあらかじめ決めていた数字にしようと前もって言っていたのは主任じゃないですか」


 個室では二十代後半の小柄な男性と三十代後半の主任と呼ばれた男性二人がスーツを着崩した姿で、料理と酒とつまみを食べながらゲームの当選発表のテレビ番組の事を話していた。


「いや〜、そうなんだけどさ。あの時まではそれでもいいかなと思ってはいたんだよ。上からの意向もあったし、私自身はそこまで気にしてなかったんだけど。だけど、あの時にふと思ったんだよね。今までの数字がランダムに選ばれてきたのに、最後だけ決められた数字にするのもどうなのかなってさ。それに、ゲームの先行プレイの権利1000人の枠に何人の応募があったか、君も知ってるでしょ?」


 主任と呼ばれている男が酒で少し赤くなった顔で尋ねると、対面に座っていた男性は不思議そうな顔をして答えた。


「まあ、知っていますけど…」


「先行プレイの応募人数だけで一千万人以上だよ?日本いる十人に一人が我々のゲームをしたいって応募してくれたんだ。一千万人の中から日本でたったの1000人、0.0001%の確率で選ばれた人達になるんだよ!。そう思うとさ、やっぱり最後まで数字がランダムで選ばれた1000人になるべきだと思ったんだ!!」


 主任の声がどんどんと大きくなり最後にはビール片手に立ち上がって言い切ると、対面では感心した様子で拍手をしていた。


「は〜そうだったんですか。本番中はいきなり予定と違っていたのでびっくりしましたが、言われてみるとそうですね。狭き門をくぐり抜けてきた選ばれし1000人!。どうせなら本当の幸運の持ち主たちにゲームをしてもらえたら、この先のゲームの運営も幸先が良さそうですしね」


「おぉ、確かにな。上手いこと言うな君も」


 改めて座りなおして男二人で乾杯をしながら笑い声をあげていたが、ふいに主任の男が思い出したように話し出した。


「そういえば、最後のイベントで3名当選者がいたが、そのうちの1名が当選した数字が最後の当選者番号だと聞かされたときは驚いたよ。わざわざ外した数字で当選者がいるとは思わなかったから」


「え、当選者の一人って最後の当選者番号だったんですか」


 驚いて動きが止まった男に主任の男性がうなずいた。


「そうなんだよね。本当に驚いたよ。いろんな可能性を考えて誰も考えないような数字にしたつもりだったんだけどね」


「いや、普通は考えませんよ。仮に押し間違えていたとしても1とか2とかで普通は選びませんよ」


 動きが止まっていた男は、一転大袈裟な身振りで驚きを表した。


「そうだよね。ほんと何を思ってあの当選番号に決めたのか、聞いてみたいよ」


 部下の男も動いて酔いが回ってきていたのか赤くなった顔で笑いながら、思わず普段は思っても言わない事も交えて答えていた。


「本当ですね。でも絶対変な人ですよ。普通の人ならあの状況であんな当選番号考えないですから」


「そうだね。・・・ん?それは間接的に私が変人で普通じゃないと言いたいのかな、君は?」


「あ・・・いや〜そんなことないですよ〜」


 露骨に目を合わせないようにして言い訳を考えていると、主任は新しく持った日本酒をテーブルに置きながら問い詰めるようにして酒を片手に詰め寄った。


「日頃、私のことをどう思っているか詳しく聞こうじゃないか。なあ、助手くん」


「主任の助手なんて恐れ多い。まあまあ、その話は流しておいてくださいよ。それより開発当初から気になっていたんですけど、このゲームのクライアントは一体どこの誰なんですか?何度聞いてもはぐらかされてばかりなんですから、いい加減教えてくださいよ?」


 強引な話題転換だったが、主任が酔っていることもあって深く問い詰められずに話を逸らすことは出来ていた。


「ん?う~ん、それなんだが・・・実は私も知らないんだ」


「えっ、開発主任が知らないってどういうことですか?」


「それがね、私も何回か上に問い合わせたりしたんだけど極秘事項のため教えられないと言われて、そのうえ部下に聞かれても詮索させないようにしろと言われてね。結局リリース直前となった今も分からずじまいというわけだよ」


「それでいつ聞いても曖昧にしていたんですね。それにしても、極秘事項ですか・・・いったいどこの誰なんでしょうね。まあ、このゲームの開発を始めてから給料がかなり上がったので自分としてはうれしい限りですけどね」


「私も給料が上がったのはうれしいがゲーム開発者としては悔しい部分もあるんだよ。確かにゲームとして作り上げたのは我々なんだが仮想体験型VRや人工AIのプログラム、実はあの部分はクライアントから送られてきたものをそのまま使っているのだよ」


「えっそこは主任がゲーム会社の伝手で入手したと言っていませんでしたか?」


「この件も上からの指示でな、表向きは会社が手に入れた事になっているんだが実際はクライアントから提供されたものだったんだよ。確かに提供された仮想体験型VRや人工AIの技術でずっと思い描いてきた今までにない最高のゲームが出来たが、正直このゲームができるのはあと数年は先になると思っていたからな。このゲームを作るためのプログラムを何年も前から作っていたから、提供されたプログラムが私が作ろうとしていた理想のプログラムだったのが、開発者としては先を越されたのが悔しくてね」


 そう言った主任は、最高のゲームを作り上げられた満足感と自分が作れなかったシステムを先に作られた悔しさが混じった様子で手元のお酒を見つめていた。


「は~すごいですね。正体不明でさらに主任以上の天才ですか~、本当に何処のどいつなんでしょうね。まあ、1つ言えるのは絶対その人は主任以上に変人ですよ。いつも時代の先を行く主任のさらに先をいってますからね」


「・・・ほぉお、君はどうあっても私を変人扱いしたいらしいね」


「あっ」


「さっきも話題を変えてはぐらかそうとしていたから見逃したが、そうだな流した話を拾ってあげようじゃないかじゃないか助手君。私は変人などではないということを、君にちゃんと教えておいてあげようではないか」


 その後、酔いつぶれるまで長い長い話を聞かされた男がいたようだった。




お読みいただきありがとうございます。


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