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剣と魔法のセカンドワールド  作者: K.T
1章 新たな世界 第一話 不思議な導き
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街の由来と不思議な話


 飴売りの女の子からいろいろ教えてくれた街の情報では、この街の事を【始まりの街】と呼ぶ人が多いみたいなのだが、本当は【オノコロ】という名が昔から呼ばれている正式名称らしい。


 プレイヤーが最初に立ち寄る場所だからそう呼ばれているのかと思い確かめようと、なぜ本来の街の名前より始まりの街と呼ばれるようになったのかを聞くと、【始まりの街】と言われるようになった理由は昔この街に魔物の大群が押し寄せた時に、当時無名の冒険者パーティが魔物の大軍を撃退するとき活躍したらしく、その時の話を最初にその冒険者パーティがいろいろな土地ですごい活躍をして伝説を作っていった為に、そのパーティが最初に活躍した街を見に来た冒険者がよく言っていたり、話の語り手が始まりの街として話していたりするみたいで、今では訪れた人達は本当の街の名前より【始まりの街】の方が分かる人が多い為らしい。


 その他に、今いるここが中央広場と呼ばれる場所で、真ん中に噴水がありその周りは円形の広場になっていて、広場の外側に向かって花壇、生垣、木々と建物の二階部分が木々の間から見えている。広場から街へは東西南北にある4つの出入り口で行き来できるようになっている。

 広場の出口を出た先は、中央広場の周りに道路があり、対面には露店や出店が中央広場を囲うように立ち並んでいるようで、東西南北には大通りの道が続いており、そのすべてが街の外へつながる城門まで続いているそうだ。


 街の特徴として東西南北にのびる大通りには方角ごとに特色があるらしく、南は商店などが多くある商店通り、北は冒険者ギルドや冒険者がよく使う物を売ってる商店が多くある冒険者通り、東西は宿屋や食事処などが多い宿屋通りと呼ばれるらしく、飴屋の女の子がお勧めする食事処の安くて美味しいところ、安いけど対応のいいおすすめの宿、俺と同じような服装をした人達が北のほうに向かっていったことや、1人だけ大声を出しながら広場周辺を走り回っていた人が多分冒険者ギルドの職員に連れていかれたことなど、最後の話は笑いながら色々な事を話してくれた。


 話を聞いている時、最初は子供たちも少しだけ聞き耳を立てていたようだったが、つまらなかったのか飴を食べ終わるとお礼を言われて広場での遊びに戻って行っていた。


 ちなみに、俺が買った飴も話を聞いてるうちに食べ終わって、味は普通においしかった。ただ、手と耳の赤い部分だけはトマト味というこだわりの驚きもあって、この謎のこだわった飴について深く聞くべきなのかという事が一瞬頭を過ったが、聞くのはやめて今必要な情報を集めることを優先した。

 だが、気にはなるのでもしまた来た時に売られているのなら、あのような飴を作っている理由を聞いてみるとしよう。


 最低限ではあるが街の事を聞けて、この後は実際に街を歩いてみて街の雰囲気と情報の確認をしようと考え始めた時に、どうせならこの街に来る直前に聞こえてきたあの言葉の事も聞いておこうと思い、話の最後にあの言葉の事も聞いてみる事にした。

 言われた言葉は・・・『始まりの街の不思議な扉、双子の月が導くひとつの満月によき出会いがあることをお祈りしております』だったかな。


「最後に一つだけ聞きたいんだけど、いいかな?」


「いいよ~何でも聞いて。でも私の個人的な事はダメだよ~チップをくれたら少しくらいはいいけどね」


「色々教えてくれたし飴1つ分のチップはあげるよ。でも聞きたいことは俺の個人的な事なんだ、知っていたり少しでも聞いたことがあったらでいいんだけど、この街【ロコノ】始まりの街に不思議な扉と呼ばれるところってあったりするかな」


「不思議な扉?う~ん、・・・街の噂話とかでは(・・)聞いたことないわね」


「そうか、・・・ん?」


 さっき女の子は「では」っていったか?街の噂話では聞いたことがなくても、この子には何か心当たりがあったりするのか?一応聞いてみるか、今は何も手掛かりがない状態だからたとえこの子の言い間違いだったとしても、気になることは無くしておいた方がいい。


「街の噂ではなくて君だけが知っている事でもいいんだけど、もし心当たりがあるのなら教えてもらえないかな」


 シュウがそういうと、女の子はこっちを見ながら悩むそぶりを見せた。


「う~ん・・・・・(お兄さんならいいかな?)、私だけが知ってる不思議な場所に行ける扉の話ならあるわよ」


「本当か、是非教えてくれないか」


 途中で何かを呟いて言ったのは聞こえなくて分からなかったけど、教えてくれるなら今はどんな情報でも欲しかったからありがたい。

 何故か少女は少し恥ずかしそうにしながら、1つ咳ばらいをした後に女の子が話し始めた。


「コホン、え~とね不思議な不思議な小さな子供が体験したお話、5人の子供が集まりかくれんぼをしていました。魔物役になった1人が3人の子供は見つけたのに残りの1人が見つかりません。探しても探しても見つからず子供たちが帰る時間の鐘の音がなっても見つかりません」


 この世界のかくれんぼでは、捕まえる役は鬼ではなくて魔物になっているんだな。


「その日の深夜に見つからなかった子供は自分の足で家まで帰ってきましたが、両親がどこに行っていたのか聞いてもよく分かりませんでした。子供が言うにはいつもの隠れていた場所に見たことがない扉があったので、興味本位で入っていったら戻れなくなって泣いていると、そこに顔が見えないようにフードを被った人が現れて思わず女の子はその人に抱き着きました。フードを被った人は困ったように女の子の頭をなでながら優しい声で言いました。『家に帰りたいなら、光の方向に歩きなさい』女の子が言われたとおりに光に向かって歩いていると、女の子が周りの景色が変わった事に気が付いた時には家の近くの知っている場所まで帰ってきていたといいました。後日、その子は女の子の両親を連れてその扉を探しましたが、子供が見たという扉は見つかりませんでした」


 さっきまで淡々と話していた女の子が後ろを振り返ってある方向を見た後、再びこっちを見てさっきまでとは一転して少し不機嫌そうに続きを話し始めた。


「そして、女の子が遊んでいたのはこの広場で今も昔も広場に扉があったことなんてないから、結局は見つかりにくいところで寝ていて夢でも見たのだろうという不本意な結果になりました。おしまい、(絶対にあったんだけどな~)」


 今聞いた話はこの女の子が体験した事だな。話す前に恥ずかしがっていたのは当事者で泣いていたからなんだな。それにしても不本意な結果か、という事は子供の時以来見たことはないってことなんだろうな。


「もしかしてだけど、見つからなかった女の子は君でまだその時の扉を探したりしていたりするのかな?」


「そうだよ~。実はあれからも時々探してるんだけど結局見つからなくてね。この話は両親以外にはしたことないんだよ。でもお兄さんは今まで売れたことのなかった飴を買ってくれたから、そのお礼だよ」


「そっか。美味しい飴を買ってよかったよ」


 食べようと思っていたものとは違う奇妙な飴を買った時は少し戸惑ったけど、あの言葉に関係するかもしれない話も聞けて、結果的にすごく得した買い物になったな。となると、あの時に言われた言葉の事を全て聞いておいた方がいいかもしれない。他にもこの女の子が思い当たる事があるかも知れない。


「あと少しだけ教えてもらっていい?この世界で双子の月ってあるかな?」


「双子の月?双子かどうかわからないけど月なら3つあるよ。昼間に見えている月だとあの2つで、夜にはあれより2周りぐらい大きい月が見えるよ。でも双子の月か、確かにそう言えるかもね。あの2つの月はいつも一緒に見えているし、2つとも似た形になるから双子の月になるかもね~」


 少女がそう言って指をさした先には、地球でよく見るサイズの月が2つあった。確かに、2つの月が左右に並んでいて同じ半月の形をしているが何故か左右対称の形なので、地球ではまず見ることのできない月の姿には驚いた。


「昼に2つの月で夜には大きな月が1つか。ちなみに扉の中ってどんな場所だったか覚えてる?」


「ん~それがね、あんまり覚えてないんだ~。とてもきれいだったような気がするんだけど、思い出そうとしてもその部分の記憶だけが曖昧なんだよね。・・・・・でも、そういえば家に帰って来れたときに明るく光っていたのは、とっても大きな丸い月の明かりだったような気がする・・・子供だったし泣いていたからかもしれないけどね」


 女の子は少し恥ずかしそうに笑いながらそう答えてくれた。


「大きな丸い光、大きな月に後は満月か・・・」


「そういえば、今日は満月(・・)だったかな。今日なら日中でも大きな月が見れるかもね」


「へぇ~・・・」


 聞いた話を整理すると、不思議な扉にはどこか違うところに行ける事があって、扉の中がどうなっているのかは詳しく分からないけど大きな丸い月があったという事は満月だったと。そして、そこには誰かがいるのだろうな。

 『始まりの街の不思議な扉、双子の月が導くひとつの満月によき出会いがあることをお祈りしております』か、この言葉が示す場所は女の子が体験した場所と限りなく近い気がするな。まだどういう理由でこの言葉を伝えたのかが分からないけど、この言葉を今日聞いて今日が満月であることは何か作為的な気がするが、調べて行けるのならば行ってみるか。


 後は目的の場所へどう行くかなんだけど、とりあえずは女の子が扉を見つけた場所に行って調べてみるしかないな。


「ちなみに扉があった場所ってどこなのかな?さっき後ろを振り返った時に見た場所?」


「そう。ここからじゃ見えないけどすぐ近くだよ。少し歩いた先の公園の入り口に2本街灯があるでしょ?その街灯の所にあったと思うの」


本当にすぐ近くなんだな。さっそく確認してみようか。


「そうなんだ。色々ありがとう、ちょっと見てくるよ」


「また買ってね。お兄さん」


 シュウは女の子に、お礼と街の事やさきほどの話しも含めて200ベルを渡すと、女の子の驚きの声をあとに足早に向かっていった。




お読みになっていただきありがとうございます。

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