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第9話 狐の村

「この度は本当に、感謝してもしきれませぬ……」

「い、いや自分はたまたま倒れてたのを拾っただけですから……」


村へとたどり着いて、俺は平たく言えば……死ぬほど感謝された。

両親は泣いてた。

ラクはいつか、大雪原に薬草を取りに行ったときから戻らなくなったんだと。

おそらく人間にさらわれたのだろうが……まぁ俺が何か意見を言うところではない。


「と、トモハル様、どうでしょうか、私の家で歓迎とお礼を致しますので」


まぁ外も寒いので、とラクの家の中に入れて貰った。


ラクを連れてからと言うもの、越冬のための蓄えから料理を振る舞おうとしたり。

年に一度春に行う祭りを今行おうとしたり。

だいぶ度がすぎるぐらいには祝われかけた。

流石にラクが心配するほどのことだったし、全力で止めたけど。


村はやっぱりちゃんと文明を感じることができた。

藁葺きの屋根、土の壁。

あと、扉がある。

扉があるだけで家っぽさが格段に上がるな。

俺の巣にも扉をつけたら家だって言い張れないだろうか。


あとは雪に埋もれているが畑があったり、用水路があったり、水車からの動力で麦を小麦粉にする施設なんてのもあるみたいだ。

今は動いてなかったが、木と歯車で出来ていた駆動部分は凄く胸が踊った。

木工による技術はかなり高いようだった。

それと、後ろに山があった。

まぁ山の麓というのはなにかと都合がいい。

風が防げたり。


そうそう、これは教えてもらったのだが、この狐の耳と尻尾のついた、俺たちみたいなやつらのことを、狐尾族と呼ぶらしい。

そして、そうした動物のパーツのついた連中を総じて獣人と、人間は呼ぶらしい。

獣人同士は各自の名前を言っているので、いわゆるこれは白人と黒人の関係みたいなものだろう、と納得した。


まぁ、そんなこんなで獣人になったことがある意味確定した俺は。


「はぁー……」


絶望に打ちひしがれていた。


だって考えてもみ?

狐耳と狐尻尾の生えた女の子だよ?

現代日本では需要あるかもしれないけど生きていけないよ?

そして、そんな獣人は世界各地に広まっているらしい。

確実に俺の記憶とは食い違う。


「その、何がお気に触ったのか私共の無能では全く存じあげられませぬが……」

「いいんだ……いいんだよ……うん……」


結論。

俺、人間じゃありません。


だってさー、人間に獣人って呼ばれてる種族、やん?

それってつまり、人間と話されてるってこと、やん?

辛い、やん?


「はぁ……一縷の望みに賭けてたんだけどなぁ……」


あれ俺ワンチャンまだ人間じゃねとか思ってたら自分が犬、すなわちワンちゃん科の生物になっていたと。

いい感じに心ポッキリやで。


女の身体になったのは……んー……五分五分である。

そういうのに興味が無かったわけじゃないし、実質嫌ではない。

だけどまぁ、事実自分の体可愛さみたいなところもある、元の身体の。

両親のこととか友達とかのこともあるし……

これじゃあ気づかれないどころか通報されるぞ。


……はぁ、帰って温泉でもはいろ。


「じゃあ、自分はこれで……」

「えぇっ!?」

「も、もっとごゆるりと」

「このままでは我々は一切何も」


いやそれでいいから……

でもなんかしてもらわないと返して貰えないムードだ……


あ。

それなら。


「えっと、布をちょっと欲しいのですが……」

「聞いたから皆の衆! 持てる最高の絹を持て!」

「はい!」

「そ、粗悪なので! ほんと、家の風除けにするだけなので!」


なんとかお願いして、それなり程度の布を貰った。

これは助かる、これでいろいろなものが作れるだろう。


「いつでもおいでくださいましー!」

「本当にありがとうございましたー!」

「いつか本格的な謝礼をー!」

「トモハル様、ありがとうございましたー!」


最後まで村民全員に手を振られ、村を去る。

ラクは若干眠そうだったが。

手には布……うん、これでも充分ありがたい。

風除けになるし、タオルにもなる。

飲み水の確保にも役立つだろうし道具の制作にもかなり活躍してくれるだろう。

とはいえ、それがうまくいくかはわからなかったが。

なんせ素人仕事、失敗が前提なのだ。

それに、今回は貰い物、石や木のようにある程度素材があるわけではない。


慎重に使っていかなくては。


ダイジェスト並みに淡々と話が進んでいますが、温泉宿まではかなりスピードよく行きます。

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