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第7話 狐の少女

〜〜〜


…………。


なんでしょうか……この、変な臭い……

あの肉の焼ける臭いとは……少し、違う……

鼻につきますが……なんか、いい匂いも混ざってて……


「んぅ……」


目を開きます。

灯などはありませんが……私たちは視力があまり無い分、多少夜目が効きます。


暗くても見えたのは……丸太?

いくつも重なって、まるで家みたいな……

にしては細っこい……でも、野生の木がこうなることなど、魔術を用いないと出来ないでしょう。


なぜ私はこんなところに?

そもそも、私は倒れて……


なんだか、誰かに揺さぶられて……そのまま、意識を落としたのを覚えています。

それと、ずっと……ゆりかごのように揺れながら眠っていたようなことも……


「……あれ」


私の体に何かかけてあります。

身体を起こしてみると……


「ひっ」


ニンゲンの、服でした。

でも、ニンゲンの臭いはしません。

あの脂ぎった臭い。


むしろ、同族の……


「…………」


外からも、同じ匂いがします。

私は気持ちを抑えられませんでした。


ゆっくりと、その場所から外に出ます。

すると。


「……わ」


近くの、何か不思議な石で出来た場所、そこにある水の中に……だれかいます。

それも、銀色の耳!

私たちと同じです!


「……ん」


長い髪を揺らして、こちらを向いて来ました。

とても綺麗です……青い瞳は見ていたら吸い込まれそうなほど……

しかも、鼻を鳴らす様子すらありません。

無警戒で、私を……?


「おはよう。生きててよかった」

「はう……!」


ほ、微笑んで来ました!

胸が一気に飛び上がりました!


「大丈夫? どこか痛いの?」

「だ、だだだだい、大丈夫であります!」

「……怪しいなぁ」


〜〜〜〜


俺が今回救出に成功したのは……

まぁ、人型生物だったよ。

日本語は通じるけど。

だが、進化の過程でヒト科ヒト目とは袂を分かったらしい……いや俺と同じか。

耳やお尻には、またしても狐のパーツが。

銀色のショートカットが可愛い……が、そこが厄ネタではない。

この子、明らかに怪我が多すぎる、それも古傷。

おまけに、この布一枚を適当に羽織ったような服は……

はぁ、予想通りじゃなくてこれが今はやりのファッションとかだったら良いのだが。


「あぁそうだ。君もここ入った方がいいよ、あったかいよ」

「あた、あたた?」


いやそんな胸に七つの傷作らなくていいから。


「んー、服濡らすのはあまりよろしく無いけど……まぁこの際だ。服着たまま、ここ入ってみな」

「よ、よろ、よろしいのでしょうか……」

「ちゃんと慣れさせてから、ね。あんまり寒暖差が激しいとまずいから」

「は、はい」


すると女の子はおずおずとお湯を触り。


「し、しちゅれいしましゅ」


可愛らしく噛みながら、ゆっくりと温泉に入ってきた。


「ふぁぁぁぁぁぁっ……」

「気持ちいいでしょ」


足をピーンとして、ぴくぴくしてる。

写真を撮って企画モノと書けば……いやいや、何を言ってるんだ馬鹿か。

ともかく、気持ち良さそうでなによりです。


「あ、だめっ……」


若干服が透ける。

とてもいやらしい考えが頭をよぎったが、あまりに状況にそぐわないために脳細胞がそっち側に流れるのを必死に止める。


「そ、その……ころん、じゃって」


いやいや。

転んだ程度で手足数カ所に打撲痕だきり傷跡だが残るはずがないだろう、そんなの転落事故かなにか起こしたとしか考えられない。

だとしても、それなら。


「背中。違うでしょ」

「あっ……」


先に見ていた。

そこには……明らかに意味ありげなマークがあった。

刺青とかそういうものじゃない、なんというか……肉体に刻み付けられたみたいな。


「深くは聞かないよ。だけど……まぁ……うん」


言葉を濁し、ゆっくり外へ。


「雪解け水を取ってくるから、ちょっとまってて」

「は、はい」


木を削って作ったコップと三度笠に雪をいれ、温泉へ。

すると。


「あぁっ!?」

「ひぅっ!」


温泉から上がってあの子が木の実を食べていた。

怯えさせてしまったが、致し方ない、健康を害するかもしれない。


「大丈夫? 身体痛いとか、無い?」

「へっ、いや、そ、その」

「言っておくべきだったなあ……この木の実には毒がある可能性があって……」

「へ? ど、毒……?」


なんて言えば良いだろうか……

小さい子に硫黄なんて伝わるかな……


「そ、その……チコルの実のこと……ですか?」

「ちこのみ?」


おずおずと、申し訳なさそうに持っていた木の実を見せてくる。


「その……これは、毒なんて無い、と思い、ます……私たちは、よく食べます、から……」


ん……んー?

よく食べるのか……?

こんな場所に生えるものを……?


「その、チコルの葉っぱは毒消しになるぐらいで……実は全く問題無いはず、です……」


……マジでか。


「……そっかぁ」

「も、申し訳ありませんっ、その、口答えしてっ」

「いやいいんだよ、こっちが何も知らないだけだから……」


まさかそんな効能があったとは。

ていうか本当に素晴らしい木だった。

もう少し早く気づいていればもっと多く食べられたのだが……


「でもこの実はとりわけ甘いです……ほっぺが落ちちゃう……」

「本当に落ちないでくれよ……」

「ご、ごめんなさい」


ぐぬ……ジョークにジョークで返すのもまだ難しいか。

警戒されているのかもしれない。


「とりあえずそれが食べられるなら安心したよ、食べて今日はその中で寝るといい」

「えっと……その、あなたさま、は……」


あ、そういえば名乗ってなかったな。

少しでも緊張が解ければいい……けど、あんまりまた変なことすると警戒されそうな……


「トモハル。ニシムラトモハルだよ。君は?」

「ら、ラク……ラクと……」

「ん、ラクちゃんか。よろしくね」

「は、はひ」


なんかやっぱり……違和感あるんだよなぁ……

改めてヒロインです。

温泉にNTRされてもヒロインです。

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