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第56話 探索作戦

近くにあった洞窟。

火の魔術による焚き木が照らすには深く暗いが、まぁ贅沢は言っていられない。

この近くに奴隷置き場がある可能性があるからだ。


「単独行動は禁止、少なくとも二人、ラクは三人以上で行動すること」


作戦会議、と言っても生存戦略。

いかに見つからないか、捕まらないかを議論する完全受け身な会議だ。


「探すにしても限界があるぞ。ここの森は深い」


雪の床を離れ土に足がついた時に眼前に広がっていた森。

すぐに洞窟があったからまだ良かったが、見た感じ森はとても深い。

おそらく、俺がクラウドと別れたあたりの場所とは違うところに来たようだ。


「俺たちは耳と鼻がいい、まずはそれで探したい。あとは……」

「私は探査の魔術が使えます」

「あ、それなら私も」

「よし」


マカとディルにはそっちで頑張ってもらおう。


決まったのは、俺とラクで感覚的な探査、マカとディルで魔術的な探査、ケンジとフィアナで護衛。

それぞれ2チームに別れて行う。


「何故ッ! 私がケンジと離れねばならんのだ!」


それに苦言を呈したのがフィアナ。


「仕方ないだろ、俺たちは戦う以外は苦手なんだ」


無詠唱で魔術ができる、とは言えべつに全ての魔術が行使できる、という訳ではないようだ。


いつかマカから聞いたのだが、魔術は名前を覚えれば出来るようなものではない、確固たるイメージを持ち、魔力の固定化、物質化、属性的な影響の付与など、頭で次々と行程が積み重なっていく。

それがまぁ大変で。

通りで俺は出来ないはずだ。


つまるところ、今知らない魔術をすぐに覚えろ、というのは余程の大魔術師で無ければ出来ないらしい。

探査の魔術が使えないケンジとフィアナには護衛にあたってもらうのが適切、しかるに、二人には離れてもらうのが一番効率的なのだ。


「まぁまぁ、私がケンジくんを守るから」

「貴様に任せるのが一番危険なのだこの畜生が!」


……ディルとフィアナはあまり仲が良くないのか、ケンジのヘルプな視線がこちらに飛ぶ。

だがすまない、俺はその声にはあまりにも無力だ。


結局編成されたのは俺、マカ、フィアナのチームワカバ。

ラク、ディル、ケンジのチームヤドリギ。

名前は適当に決めた。マカとディルが常時通信の魔法陣を作ったため、声だけは伝わり合う。


俺たち感覚派が周囲の警戒を。

魔術派が人間の探索をそれぞれ行い、チームそれぞれでわかれて進む。


「じゃ、幸運を祈るよ」

「あぁ、お前もな」

「……臭くね?」

「お前だろ言い始めたのは」


そうだっけ、まぁいいか。


「まぁ、任されたからには絶対に守る。聖国防騎士団(ホーリーガード)の名にかけてな」

「あぁ、よろしく頼む」

「よろしくお願いしますね、フィアナさん」


また強そうな称号だな。

フィアナも何だかんだいい人……かはわからないが、強さには問題ないことはこと前のハンターへの奇襲でかっている。


「まずは状況がどれだけ有利か、っていうのを知りたい。森の中にいる以上俺たちは目立つ」


白い、というのは案外森の中にはないものだ、岩場ならまだしも緑と茶色が支配する森では危険。

まずは状況を探って……


「……トモハル様」

「ん」

「ニンゲンの気配です。二人、こちらには気づいていません。背格好は……」


マカが指差した方向。

たしかに物音が小さく聞こえる。

瞬間。


ヒュンッ……


金の靡く風。


「うおおおおお!」


に似つかわしくない怒号と突進。

フィアナ!?


『うわぁぁぁぁ!?』

『な、何だ何だ!?』


うっわぁ。

何あの全自動面倒引き起こし機。

狂犬か?


「……行くの?」

「……行くしかないでしょう、スプラッタができる前に」


流石のフィアナだってそこまではしない、だろう……多分、おそらく、きっと……

いかん心配だ。

マカとフィアナの走った方向へダッシュ。


そこには。


「やぁやぁ! 私は聖国防騎士団(ホーリーガード)のフィアナ・ディ・アルカディアス! 階級を力天使(デュナミス)! 貴様ら凡百へモガッ!?」

「申し訳ございませんうちの狂犬が……」

「こ、今度はなんなんだ一体……」


そこにいたのは男性二人。

人の形は保っていた、見たところ外傷もない。

よかった、本当によかった。

見た感じ、ファンタジーな軽装装備とナイフを持っている、おおよそこの世界のスタンダードなやつらだ。


状況を説明……しようにも色々と不都合があるので、ここいらの動物を狙っていて気が立っていた、ということにさせてもらった。

もちろん平謝りしながら。


「まぁ俺たちもそんなところだ。今度からは気をつけてくれ」

「本当に申し訳ございませんでした……」


そのまま男二人を逃す。


「……ぷは! 何故邪魔をした!」

「何故も何もいきなり突っ込むのはダメだよ……」


フィアナはどうやら正義な心を持っているご様子。

ちょっと行き過ぎている感じは否めないが……


ただ、あいつらが100%罪人ではないという証明もない。

そもそもなんでこんな道もないところにまで狩りをしにきている、という話だ。


「フィアナ、あいつらを尾行するから、変に騒がないでくれるか?」

「うーむ……」


フィアナはなおご不満なご様子。


やぁやぁ!

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