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第52話 元奴隷として

「ようやく開放か……肩がこったな……」

「でも、温泉? 気持ちよかったですよね」


ケンジと2人を解放する。

疑いというかなんというか、まぁ無害だとわかったので。

いろいろ話し合った結果……


「……嘘だろ……」


俺が男だとわかってケンジは絶望した。

残念ながら、俺は女であると言うつもりはないし。

どうやら惚れる一歩手前まで行ってしまっていたらしいし、あぶなかった。


「で、トモハルと言ったか。これからは何をさせるつもりだ」


さっきから気になっていたが、このフィアナとかいう女戦士はやたら高圧的だな。

別にいいけど。


「まずはこの村の隠匿を魔術で制約させてもらう。あとは勝手にやってくれ」

「ん? 金とか要求しないのか?」

「しない。だがすぐに出て行ってもらう、ただそれだけだ」


この村に人間を置くこと自体好ましく思わないのがかなりいるからな。

それを俺の人徳や権力で押しつぶしてまで入れる意味はない。


「それは随分……好条件だな」

「恨みを持たれる方が面倒だからな」


相手に何も残さない、それが一番円満なのだ。


「あぁ……あとは多少なり情報が欲しい。あれば、だがな」

「情報?」

森精族(エルフ)土守族(ドワーフ)。この二種族をどこかで見たとかないか?」

森精族(エルフ)土守族(ドワーフ)? それなら森や洞窟にいるだろ」

「この周辺に?」


そう聞くと、ケンジは多少考え。


「この周辺にはいない、かもしれない。見たことはない」

「……そうか」


さて、情報は得た。

無い、というのもまた重要な情報だ。


「情報提供料として2時間の滞在を許す。食料は多少提供する、あとはほかの村からでも貰ってくれ」

「助かる」


これでも譲歩した方なんだ。


「んで、どうします?」

「他種族のことか?」

「はい。このままじゃ厳しいっすよ」


そうだなぁ。

このままでは特にまずい。

村が成長出来ずにただ横に伸びる、平行線だ。

それはどうなんだ。


「あぁ、そうだ」


早速温泉に足を向けていたケンジが振り返り。


「この地区だとむしろその種族は珍しい。人間に捕まっていたら奴隷としてここに持ってこられているかもな」


奴隷、か。

その可能性は大いにある。

人間とは貴重なものに価値を見出し、欲しがる。

その地区で採れないとなれば、是が非でも、それこそ他国から輸入してでも欲しがるだろう。


「もしかしたら、の話だからな。温泉使うよう」


そう言い残し、ケンジは温泉に入って行った。


「……どう思う?」

「特に何も。可能性はありますけどそれを助ける手段が無い」


まぁ、そうなるよな。

俺だって奴隷を助けるなんて理由であの国に行きたくない。


「……ただ」

「ただ?」


あの国、闇オークションだとか、そういうこと……裏で奴隷を扱うぐらいには、奴隷がかなり浸透している。

夜のだれもいない風景しか見ていなかったので民間まで回っているかはわからないが。


「であるなら、もしかしたら貿易は案外数多く行われているんじゃ?」

「まぁ、そうだとは思いますけど……」


つまり、その流通ルート。


「奴隷を運搬する道を特定出来れば……」

「……やる気まんまんっすね」

「……怒られると思う?」

「殴られるじゃ済まないっすよ」


わかっている。

わかってはいるが……


「……奴隷って暗くて寂しいんだよな」


奴隷、まぁ俺は奴隷直前で終わったが……

それでも、奴隷というのはどうしても恐ろしい。

暗い箱にずっと閉じ込められているみたいに。

それは、物という認識の扱いだ。


「助けられそうなら、助けてやりたい」


それが、俺の素直な気持ちだった。


「……はぁ、まぁニンゲンに情けをかけるあたり、わかってましたよお人好し大将」

「まぁ、な」

「俺は知りませんからね、勝手にマカに怒られて勝手に行ってくださいよ」


そう行って、逃げるように帰って行った。

相談役がいなくなったからなぁ……

ていうか、この会話も多分マカは聞いてる。

地獄耳め。


とりあえず、マカの家に。


「……聞いてた?」

「もちろん」


マカの顔は不機嫌そのもの。

般若みたいな顔しやがって。


「……でも、行きたいんだ」

「また殴りますよ?」

「それでもだ」

「私たちのことは二の次ですか?」

「……それは……」


そう言われると弱い。


「……はぁ、意地悪な質問をしました、ごめんなさい。でも、あなたは怖くないのですか?」

「……怖い」

「なら」

「でも、なんだよ」


でも。

怖い、でも行きたい。

怖いもの見たさではない、あんな怖いところに行くやつらがいると知ってまだそれを見逃すのが、もっと嫌だ。

ただそれだけのことだ。


「……歯を食いしばってください」

「へ」


瞬間。

視界脇。

右フック。

容赦なし。

防御回避不可!


「へぶぅ!」


クリーンヒットである。


「先に、殴っておきます」

「へっ」


まだ痛む頰を撫でながら、マカに向くと。

複雑そうな顔をしながら、マカは微笑んでくれていた。


「どうせあなたは言っても殴っても聞かないんです、なら先に殴ります。殴ってなお……成功してもらいますからね」

「……それって」

「無事以外、許しませんからね」


どうやら、許してくれたらしい。


「あ、それと。私も同行します。待つのはもう嫌です」

「へっ!?」

毎日寒い……

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