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第51話 再びの人間

その日、村は荒れていた。


「また人間見つかったって?」

「あぁ、しかも今回は3人。とりあえずあんたの意見が先だ、大将」


山があったら登りたいなら、雪原があったら渡りたいとでも言うべきか。

また、雪に倒れそうなやつらを発見した。

人間である。

男性1に女性2、どちらも若い。

訂正しよう、バカな、人間である。


「こいつらなんでこんな服で渡ってんの……?」


やたら軽装にチェストプレートなどの防具。

おおよそ寒さなど考えていない装備。

その割には剣だとか武器は充実してるが……


まぁ、前回と同じように温泉に漬けるとしよう。


運んで温泉にポイ。


「……ニンゲンってバカなんです?」

「否定はせん」


そこにいれば生きていけると言うのに、そこにないものを見つけようとする探究心。

好奇心の塊のくせして競争好き。

厄介な種族だ。


しばらくして、そんな人間(バカ)が目を冷ます。

3人とも。

もちろん手足縛っている。

今回も俺は女性担当だ。

先に目覚めたのは金髪の気の強そうな女性。

長い剣を持ってた。


「ぐ……」

「おはよう。具合は?」

「ここは、天国……?」


天国だったら良かったな。

天使が美味いもんもって出迎えてくれるんだろ。

いまの状況見てみろ。

ただただ縛られてそのまま俺がおはようだ。


「悪いが装備は外してある。抵抗されても困るからな」

「……貴様らは野盗の類か?」

「その謂れは初めてだな。少なくともお前たちに何かするつもりはない」


服剥がしてないあたり察してもらえるとありがたいのだが。


「お前たちが雪に倒れていたから助けた。嘘じゃあない」

「……ケンジ! ケンジは!?」


あたりを見渡し、随分と慌てられる。

ケンジというのはさっきの男か?

それなら……


『ここにいるよフィアナ……』

「ケンジ……」


一つ壁を越えて、男女が話す。

フィアナと呼ばれた女性はめっちゃ安心してた。


『助けてもらったのは本当みたいだ、心配するなよ』

「あ、あぁ。すまない」


まさか、こんなことになるとは全員思っていなかったのだろうなぁ。


「あ……ふぅ……」

「ディル。起きたか、よかった……」

「ここは一体……私たちは遭難していたはずでは……」


青い髪の優しそうな女の子が目を覚ます。

たしか、杖みたいなものを持っていたはずだ。


「俺たちが助けたの。人間さん」

「えっ? それは……」

「ディル、どうやら本当らしい。軽くでも信用しておこう」


さて、とりあえずなんとか常識持ち、というのはわかったが……

問題は。


「ケンジ、ケンジ……」

「ケンジがどうかしたか?」

「いや、なんでも……」


ケンジ。

あんまり、この世界では馴染みのない名前だ。

大人しくしておいてくれ、と言って監視を他の狐尾族と雪兎族に任せ、男側の湯へ。


たしかに、捕まえた男性は黒い髪をしていた。

あれならば、可能性がないわけでもない。


「……うお」


俺の顔を見るなり、唸られた。

目線も外れないし。

この反応……やっぱりそうなのか?


「……日本。知ってるか」

「……へ」


すると、さっきまでこっちを見つめていた目は見開き、驚愕を表した。


……ビンゴ、か。


「足の拘束を解く。ついてきてくれ」

「あ、あぁ、うん、わかった」

『なっ、ケンジをどうするつもりだ!』


フィアナの声が聞こえる。

結構ピリピリしてるな。


「別に何をされるわけじゃない……と、思う。待っていてくれ」


その一言でフィアナは大人しくなった。

そして、ケンジの足の拘束を解き、布をかぶせ、俺の部屋へ移動。

この際だ、濡れようが構わない。


「……もう一度聞く必要は?」

「……ないと思う。日本人だろ」


やっぱりな。

こいつ、向こう側から……俺たちの世界から来たのか。


「あんたも、なのか。その、不思議な格好だが……」

「これはよくわからん。んで、だが……」


ケンジは二年ほど前からこの世界にやってきた1人の高校生らしい。

やたらと中学や高校性を狙う異世界だが、やはりその犠牲者。


ある日トラックに轢かれ、その後目覚めたらこの世界にいて、それから冒険、フィアナたちと知り合い今にもいたるらしい。


のだが。


「日本人が良くそんな冒険できたな」


農耕民族の血筋日本人。

おおよそそんなすごい冒険ができるとはあまり思えない。


「そこはほら、ギフトってやつだよ、もらっただろう?」

「ぎふと?」

「……知らないのか? え、異世界人は貰えるって聞いたぞ」


なにそれ知らないんだけど。


「俺の場合は、ほら」

ボウ……


ほら、といった瞬間、ケンジの手のひらに火の玉が。


「無詠唱。常人なら必要な詠唱を無条件に省略できる。中級魔術までだけど」


なるほど。

あのマカですら魔術を使うには詠唱が不可欠みたいなものだった。

それを省略できれば、速さのアドバンテージはすごいものだろう。


「で、あんたはあれだろ? その狐っぽいのがギフトなんだろ?」


これが……?


「こう、へんげの術ー、とか、ないの?」

「ない……と思う」


そんなの説明されてないぞ。


「マジかぁ……」

「マジだよ……」

51話でようやくここまで……!

もうすぐ……

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