第50話 木造建築
「たのしい木造建築〜!」
「どったのトモハル殿」
「いや、懐かしいアホアニメを思い出してな」
風呂があったら人面魚を住ませるべきか。
それほどまでに、完璧な木造建築が出来上がった。
まぁ長屋だし、一部屋4畳半もないだろうが。
ただ、この木の温もり!
寒いけど。
ずっと土の上だったはずの足にビリビリくるこの硬さ、踏みしめる感じ!
超安心する。
「トモハル殿疲れてんの?」
「ほら、異世界って木でいろいろやるって言うし」
この世界、舗装されてない道が多いため、硬い地面にあまり興味がないものが多い。
なんてナンセンス、どうしてナンセンス。
地面は硬いほうがよろしくてよーッ!
「あ、寝た」
「めっちゃ幸せそうだしいいんじゃない?」
幸せ。
うむ、余は満足じゃ。
ただ、こいつらだって木の床でもとは暮らしていた種族。
かまくらは簡易なものだったからあぁなったが、これからはもっとこういった本格的な建築を考えるべきだ。
のだが。
「落ち着かなーい……」
「不思議〜」
雪兎族には意外と奇妙らしい。
雪兎族はスノードーム、まぁまんまかまくらを作って各地を転々とする種族。
どうしてかまくらを作るかと言えば、壊しても直せるから。
その余りあるパワーは実際に持て余しているらしい。
とにかく、柔らかな地面に慣れているゆえに、こうして硬い地面は意外と苦手、と言うことだ。
「んで、トモハル殿はどーすんスか? 新しく、トモハル殿の家建てる?」
「それなら私たち協力するよ〜」
確かにそれはかなり惹かれる。
だが、だがな。
こいつらに任せると俺の部屋はおそらく、持て余すなんてレベルを超える。
「この部屋がいい……」
「あ? ここ子ども部屋にでもしようかと思ってたとこっスよ」
「私は一向に構わんッ!」
「……なんか気分良さそうだしこれ以上は言わないっスけど、あとからあれがいいこれがいいとか言われても時間かかるっスからね」
「いやぁここがいい……ありがとうみんな……」
この狭さ。
この暗さ。
この不便さ。
これがいいのだ……無駄に広い部屋など不安になって落ち着かない。
ため息混じりに他の奴らは出ていった。
奇怪かもしれないが、俺はこれがいいんだ……
とりあえず荷物を運び出すために家に戻る。
すると。
「……なんでマカが俺の荷物纏めてんの?」
「え? 何故です?」
いやなんでまとめることが当たり前みたいな顔してんの?
「だって、これから私とトモハル様は組んず解れつの同棲生活に」
「いやいやいやいや」
何を言いだすんだこの人。
「何故です! 私はこんなにも貴方へと尽くそうとして」
「ま、まって、ほんとまって……」
「いっそのこと、ここで身体に刻み込んで差し上げましょうか……」
マカさん?
なんかおかしくない?
マカさん!?
「マカさん、それは心配しすぎでは?」
「ら、ラク」
いつのまにか家に入られてた。
なんで俺の家そんな空き地みたいに入ってくんの?
確かにの○太君もし○かちゃんの風呂入ってたけど、あれは事故じゃん。
表から入らないじゃん。
てか、心配し過ぎって……
「マカさん、心配もいきすぎると監視、ですよ」
「うぐ……ラクさんも言うようになりましたね」
監視って……別にマカはそこまでのことしようとしてたとは……
「はぁ、わかりました。ここはあなたを信頼します、トモハル様」
すく、と立って入り口へと歩くマカ。
何、どう言うことなの。
まるで訳がわからんぞ。
「でも、変なことしたらすぐに駆けつけますからね! わかりましたか」
「は、はぁ」
マカってあんなやつだったっけ。
もっと、近所にいるエロいねーちゃんみたいな感じだったような……
「本当にあの人は……」
マカの不思議な態度にラクもどこか不満な様子。
「独占なんて許しませんからね……」
なんだかよくわからない単語が聞こえたのはスルーして、荷物を抱える。
「あぁっ、お手伝いします」
「ん、いいよ重いし」
「いいえっ! こう言う時こそ点数稼ぎ、です!」
「なんだそりゃ」
よくわかんないけど手伝ってくれたラクをなでなでしつつ、新しい家に引っ越すのだった。
ギャグ漫画日和って当時ほんとうに笑ってた……