第48話 ブラック村
「こりゃあまた、えらい取ってきたな」
「雪兎族の方がノリノリでねー」
村に帰って食料班に獲物を渡す。
処置はしたし、血抜きもした。
皮剥は頼む、とあとは丸投げだ。
んで、帰ってからというもの。
「……なんでこんなに進んでんの」
試験的に建てている木造建築、将来は居住スペースになるはずの長屋が……
なんか、枠組みが終わってた。
確か俺たちが出発したぐらいから着工してたと思うんだけど。
「いやぁ雪兎の奴らってばすげえんだぜ、大将! なぁ!」
「褒めてもなんもでないっすよ! でももっと褒めて!」
「「あはははははは!!」」
仲良しか。
確かに、わざわざ何人も使っていた建築も、雪兎族なら1人で済む。
確かに、早いだろうが……
「それで楽しくなってきちまってな! 2日寝てない!」
「休めアホ!」
自分から泊まり込み残業、いや徹夜作業とは何事か。
仕事に手抜きは見られないが、いつ事故るかわからん、キリのいいところで辞めさせて強制お休みなさい。
雪兎族はなんだ、休んだら死ぬのか、マグロか。
とりあえずほかの職場も回ると、みんな笑顔で楽しい職場。
みんな目にクマできてるけど。
はい全員ストップ。
とりあえず全員止めさせてベッドへ。
みんな3呼吸で寝たよ、やったね。
雪兎族のやつらも帰還させて休ませる。
「ラーク! ラーク!」
「はわっ!? と、トモハル様おかえりなさい」
「なんでこんなブラック村ができてるのか教えてください……」
曰く、雪兎族の体力が底なしで、しかもみんな素直で教えていて楽しいから、みんな余計に仕事するのだとか……
「アホか……」
「み、みなさん楽しそうで……止めるに止められず……」
まぁ、なぁ……
わからないでもない。
俺だって、雪兎族が取ってきた獲物を全部さばいた訳だし。
途中から雪兎族が手伝ってくれたにしろ、1人の作業には超過もいいところだった。
あいつらの反応が可愛いから心臓とかも早めに取った訳だし……
見渡すとその全てがちゃんと仕事できてしまっている、というのも問題の一つか……
木材に慣れている狐尾族も悪い。
獣人は何か、根性の塊かなんかなのか。
俺は疲れたので寝まーすおやすみ大好き。
幸い、食料班のローテは普通だったし、起きたら食事ができてる程度に、と言っておいた。
ちなみにみんなの仕事ぶりに食料班は自分も狩に行った方がいいのではと焦っていたのでなんとか止めておいた。
余裕があったら獲物の皮を剥いでおいてとだけ。
〜〜〜
それから、あのハイパーワーカー共は昼を越して夕方まで寝ていた。
身体限界じゃねーか。
ぶっ飛ばすぞ本当に。
雪兎族はそれよりは早く起きたが、そのまま温泉にダイブ。
やっぱり堪えてはいたようだ、温泉のなかでしきりに柔軟しては骨を鳴らしていた。
「はいはーい、ご飯出来てますよー」
全員が揃ったあたりで鍋が登場。
5人で一つの鍋を囲む、だいたい10グループぐらいが出来ていた。
取れたての肉を使ったジビエ煮込み、それとジビエ焼き。
煮込みの方はアクがやばいのででなくなるまで超煮込む。
では、実食。
まずは焼きから。
「……おお、美味い!」
臭みが少ない、歯ごたえも充分。
各グループからも美味い美味いと聞こえる、雪兎族の舌にも合うようだ。
しかも冬が終わってすぐの肉だ、脂が濃厚で美味い。
苦労した甲斐があった。
「うー、案外美味しいじゃないの……ムカつく……」
ヴィオラも何だかんだ唸る。
これまで獣をちゃんと調理しないで丸呑みしていたことを後悔しているらしい。
「トモハル様、あーん♪」
「えっ、あ、あーん……」
マカから肉を差し出されるが……
「冗談です♪ あむ」
自分で食われた。
この小悪魔めが。
「ほら、今度は本当にあげますから♪」
「本当だなー? あーん」
「はい、どうぞ♪」
マカに渡された肉、まぁ味は同じはずなのだが……
「……美味い」
「よかったです♪」
何だか、ちょっと甘い気がした。
二日徹夜させられるほどのブラックは流石に無い……ないよね?