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第47話 ジビエ

今回、獣の解体が大半です。

内臓などのグロテスクな表現が多いため、ご注意ください。

あと、話自体は見なくても割と大丈夫です。

23本。

丸太。


「ふいー、頑張ったー!」

「早くお風呂入りたいね〜」

「お水飲みたーい」


一体なんなのだこいつらは。

あれだけの戦闘行為を行っておいて傷一つ付いてないぞ。

悲しいかな、へし折られた木々の断面はトゲトゲになっている。

ほかの余計な枝は雪兎族の回し蹴りでへし折ったために、丸太の各所も雑な処理だ。


「……まぁ、トゲトゲ痛くはないし……」


ヴィオラは文句も言わず飲み込んでいる。

今回は苦しくなさそうだ。


ただまぁ、処理が雑だったのは向こうに行けば加工できる。

相当嫌な顔されるだろうが……

それよりも、かかった時間は狐尾族の時の10%以下。

これは大きい。

あんまり短いので食料班を待つ余裕すら生まれてしまった。

食料班がとってきたものをこっちでみんなで食べると思っていたので、帰りは夕方かと思っていたが……


「で、どうするのよ、けぷ」

「んー……食料班を待つべき、か?」

「あ! それなら私たちいってくるよー!」

「お腹すいたしねー」

「いってきまーす!」

「あっ、待って」


止めたが、行ってしまった。

どこまでアグレッシブなんだ。


「……あいつらに疲労ってないの?」

「3日間も飲まず食わずで歩いた連中よ、返せばそれだけの体力の容量があるのよ……」


うちの化け物代表のヴィオラでさえ軽く引き気味である。


それから。


ズドォォォォ……

ズドォォォォ……

そっちいったー!

りょーかーい!


……森から起こる砂煙の原因は何なのか、理解することを脳が拒んだ。


〜〜〜〜〜


「いっぱいとれたー!」

「楽しかったー!」

「……おかえり」


また小学生みたいなセリフを吐きながら大量の獣の亡骸を担いでくる雪兎族たち。

血まみれの身体はちょっと……いかにもな感じがする。

うん、これ以上何もしないと殺されて食われる気がする、早めに調理にかかろう。


もう火は起こしてある、あとは解体、血抜きをするだけだ。


「どれか食べたいもののリクエストとかある?」

「えっとねー……あ、リベリー」

「ん、あ、私イノシシ持ってる!」

「じゃあそれで」


リベリーというのは雪兎族の1人。

身長が高く、目線が合うとにこ、と微笑んでくるので日本男児の敵だ。

ちなみに木を4本蹴り倒した脚力の持ち主なので付き合いたいと思った諸君は頑張ることだ。


とりあえずイノシシ以外を雪の中に埋めるように指示。

獣の遺体はいわゆる菌のディスコ。

サタデーナイトフィーバーを終わらせるために一刻も早い冷蔵だ。


受け取ったイノシシにナイフを入れ、内臓を取り出す。

イノシシには多く泥が付いており硬い鎧のようだが、風の魔術がかかったナイフには紙に等しい。

膀胱や胃を切らないように気をつけながら、出来るだけ早く。

内臓は持ち帰って肥料……と行きたいところだが、さすがに一日も残してしまっては流石にダメだろう、一部を除いて森の栄養になってもらう。

ヴィオラは苦いから嫌いとの事で埋めるしかない。

あとであの全部の獣を処理するのかと思うと頭が痛くなるが……


内臓を取り終わったイノシシに雪を詰め、また雪の下へ。

1人だと1時間はかかるなぁ……何人かならずっと早いのだが。


そして。


「よーし、ジビエの醍醐味、その場で内臓食うぞー」

「やったー!」

「お腹すいたー」


とれたてぴちぴち新鮮も新鮮、イノシシのハツとレバー。

いわゆる心臓と肝臓だな。

ざくざくと切って炒める。

調味料は塩だけだが……

一応感染症対策に良く火も入れて。


「ほれ、第1号」

「あーん……」


あつあつのまま雪兎族に食べさせると。


「おいしぃぃぃぃ!!」

「何これ何これ何これぇ!」

「コリコリして……ずっと噛んでいたい……」


どうやら好評のようだ。


今度はほかの獲物へ。

これは鹿か。

皮剥は帰ってから、ものすごい時間かかる上に難しいから狐尾族みんなでやろう。

それに、死んだ後も内臓が入れっぱなしだと血が腐って不味くなる。


「ねーねー、次は!?」


おっと、もう食べ終わったか。

心臓と肝臓を先に取り出し、切って焼く。

塩は適当に。


いかんせん食べるスピードが早いな。


心臓と肝臓をとった鹿を埋めなおし、次へ。

そのまま次へ。

また心臓と肝臓をとって、また次。

先に腹ごしらえしてもらった方がいいだろう、みんな頑張ってくれたわけだし。


すると。


「……ねー、それって私も出来る?」

「ん?」


雪兎族の1人が話しかけてきた。


「出来ると思うけど難しいし、さっきまで頑張ってたんだし休んでもいいんだぞ?」

「うー、でもやってみたい」

「まぁ、やってみたいなら止めないよ。教えてあげるからおいで」

「やったぁ!」


んー、体格はいいのに子供っぽいからなんか調子狂うんだよなぁ。


「こう、背中を沿うように肉を剥いでいく。白いのは脂だから、適度にナイフは拭いて」

「はいはい」


大雑把だが、出来てはいる。

なんとか出来ればいいが……


すると。


ピッ。

「あっ」

「……あーあー」


やっちゃった。


「臭っ! なにこれ! 臭いっ!」

「おしっこ。いま切ったのは膀胱だよ」


さっさと獲物を持ち上げ、膀胱から垂れ流れる尿を捨てる。

これがくっさいんだ本当に。


「ごめんなさい……」

「いいのいいの、よくあることだから」


俺がこれで何回面倒なことになったか。

まぁ、全部の肉が食べられないわけではない、処置が早かったから食べられるところはあるだろう。

斧で思いっきり上半身と下半身を両断、申し訳ないが下半身は土に埋めた。


上半身は少し匂いはしたが尿はかかってなかったし、消臭出来るだろう。


どうやら雪兎族もお腹いっぱいになったようだし、内臓取りを再開。

他にも何人か解体に興味を持ってくれたようだし、思いのほか早く終わりそうだ。

ジビエは美味しい。

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