第44話 雪兎族
プッチー大量調理。
真水の大量投与。
そしてウサギを温泉にブチ込む。
「「「はぁぁぁぁぁ……」」」
蘇生完了。
で、何あれ。
死人?
ダーク○ウルの序盤で出てきたやつ?
「まさか、雪原の風とすら謳われた雪兎のものどもが……このような……痛ましい……」
風って、あれが?
あのシワッシワで血色も悪い奴らが?
うっそやん。
とにかく、なんだかやばそうな雪兎族のために、村が高速回転中。
せっかく熱を与えて脳がうまく動いている状態なのだ。
行儀は悪いが、食事と水分補給を温泉の中でやってもらう。
「楽園……」
「こんなところに……」
「まさか私たち死んだのでは……」
飯を食って死なれたら困る。
もったいないだろう。
回復の魔術ができる連中もフル回転中。
どんなイベントだ全く。
客人っていうかもう人命救助だろこれ。
というわけで、多少体力が戻った雪兎族と温泉に入りながら会話する。
村長が男性と、俺が女性とだ。
役得といえば役得だが……まぁ、しおしおの身体に欲情するほどの特殊な癖は持ってない。
「えっと、皆さんは雪兎族、で良いのですね?」
「はい……」
まだ体力が戻りきってないのか、掠れた声でこちらに話す。
んー、会話は厳しそうだが、ちょっと放置は出来ないしな。
20人、多くはないが、少なくはない。
そんな数で動く以上、理由がある。
「手短でいいので、何故ここに来るに至ったか、教えてください」
雪兎族は、ぽつり、ぽつりと話しだした。
「私たちの村は……その……」
「なんといいますか……」
「どうしようも……」
なんだ、そんなに話せないほど深刻だったのか?
さっきは勢いで食わせたけど魚も食ってたし、肉食だとするのなら食糧危機か?
いや、もしかしたら人間による被害の可能性も……
自然災害の線もあり得る……
「……その……」
「食料が……」
「尽きちゃいまして……」
やはり食料難か……
たしかに厳しい問題だ……
「冬のうちに食べ尽くしちゃったんですぅ……」
「美味しいんだもん……」
自業自得じゃねーか!
あっぶね、思わず叫ぶところだった。
脳裏に浮かべるだけですんだ奇跡。
曰く、冬に向けて、貯めておいた食料を、美味しいからという理由で好き放題使ってしまったらしい。
その結果がこれである。
アホである。
よく生きて入られたな、この草すら生えてない雪原で……
「ベッドの藁とか齧って生きていました……」
訂正。
アホではない。
大アホである。
もはや呆れ果ててしまったが、一応話は続ける。
「んで、吹雪が止んだのでみんなで丸三日あるいたら、ここに……」
「ここにこんな楽園がなかったらわたし達は……」
人間、食料がなくとも十日は生きられるという、それ以上は動けなくなると。
だとしても三日は結構な苦行だろう。
自業自得だったとしても。
「で、これからどうするつもりで?」
一応聞いてみる。
すると、雪兎族はあつまり会議をし始め。
「わたしここに住みたい……」
「でもいいのかなぁ……」
「えー、わたしここにずっと入ってたいよ……」
お前ら筒抜けだぞ。
こっちは耳がいいんだ。
まぁうさぎもいいんだろうけど。
ちら、ちら、とこちらを伺うような視線も感じるし。
まぁ、今俺たちが抱えている問題は、畑、家、衣類、温泉拡張。
今回だって風呂が狭いので他のところにも雪兎族を搬入している。
ここで、雪兎族がここに住むことで出来る問題は二つ。
食料と温泉だ。
食料は言わずもがな、人が増えれば増えるだけ食料は必要になる。
さらに、温泉が狭くなればその分不平不満も湧くだろう。
衣類は……まぁ、なんとかなってほしい。
俺たちと大して変わらないし。
ま、人手も足りていなかったところだ。
「相談してきますが、まぁ前向きに考えてもいいでしょう。少なくとも私は構いませんよ」
「ほ、本当ですか!?」
おーおー喜んじゃって。
ま、とりあえずは会議次第、ってところだな。
まったりと再開します。