第41話 黒狐
黒い炎が燃え上がり形を成した狐。
全身真っ黒、狐の剥製を黒い墨で塗りつぶしたようだった。
「とも、はるさま……?」
誰かの呼んだ声が聞こえた。
だが、いまそんな暇はない。
こいつらを、殺さなくては。
「いけ」
シャンッ。
俺の命令に従い、黒い狐が立ち上がる。
グルァァァアアア!!
ガァァァッッ!!!
サイレントウルフたちもそれに呼応するように狐へと襲いかかる。
狐尾族に食らいついていた奴らも、まるでそうしないといけないかのように。
現れたのは結果、14匹。
大きなグループだ、一斉に襲いかかってきた。
シャンッ。
一歩、狐が踏み出した。
すると。
「……なっ」
「こ、ここ、は」
「あ、あつい……!」
世界が、描き変わった。
茶色い大地と赤い空。
あたりは薄暗く、黒い山がここを囲むように見える。
ウ、ウォフ、ウォフ!
ギャウ! ギャウ!
その光景はサイレントウルフにも見えていた。
あまりの異常。
全員、混乱していた。
シャンッ。
黒い狐は、なおも踏み出す。
一歩。
その一歩で何が起こるか、俺だけが知っていた。
ズドオオオオ……
3匹、死んだ。
黒い狐が踏み出した瞬間、地面から吹き出した火柱。
黒い火は3匹のサイレントウルフを飲み込み……消えた。
「ひっ……」
誰かの悲鳴が聞こえたような気がした。
残り、11匹。
シャンッ。
一歩、一歩。
黒い狐はなおも歩く。
ズドオオオオ……
ズドオオオオ……
また、2本の火柱が5匹のサイレントウルフを飲み込んだ。
きゃうっ、きゃう!
サイレントウルフの声はもう怯えきっていた。
足も身体もがくがくと震え、今にもその命が絶えるのだと。
まざまざと理解していた。
だが、そんなのでいいのか?
あと、4つも残っているのに。
6匹には十分すぎる本数だが、それをやらねば終わらない。
さぁ、死ね。
シャンッ。
ズドオオオオ……
ズドオオオオ……
ズドオオオオ……
ズドオオオオ……
地面から噴き出した火柱。
2本目あたりで全滅させたようだが……まぁいい。
シャンッ。
また鈴が鳴る。
すると。
「……あ、あれ」
「も、もどった……?」
世界が、白い雪の世界に戻る。
全く元どおりである。
違うのは。
カ、ヘ……
サイレントウルフが全員、泡を吹いて倒れていたこと。
命はあった。
こうなれば、殺すことは簡単だ。
クワを振り上げ。
ガインッ……ガインッ……
首の骨を折っていく。
こうすれば死ぬはずだ。
こいつらは、殺さなくちゃあいけないんだから……
「……あれ……」
急に、意識が……遠く……
覚えていられたのは、ただ……黒い狐が、また座って……俺を悲しい目で見ていたことだった。
きつねもふるー。