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第39話 これから

会議の結果。


「とりあえず、今重要なのは畑、家、毛皮、温泉拡張だな」

「はい、そんなところです」


ということが閣議決定された。

最後のいる?


現状において、俺たちの食料の大半は干物プッチー。

チコルの実も一年中実るわけではないらしい。

ただ、チコルの木自体は一年中葉をつけていた。

不思議な木だ。

故に、安定した食料供給が必要だ。

ちょうどおじいさんから貰った種もある。

日本人としては米を食べたいところだが……まぁ贅沢は言っていられないだろう。


次に家。

これは急務というわけではないが、やはりかまくらというのはあまり信用ならない。

一冬超えられたのは気温のおかげだと思う、春になってから気温が上がったのも感じられるし、おそらく夏には持たないだろう。

無くなってから作る、のでは遅い。


更に毛皮。

つまり、防寒装備だ。

俺たちの服装は実に雪国に向いていない。

世が世なら集団自殺を疑われるほど。

基本的に狐尾族が一張羅なのが悪いのだが……

というわけでもう少し文明的な服装になっていただこう、というわけだ。

春になって森に動物がいることもヴィオラが確認しているのを確認した。


そして……


「温泉……」

「急務です。もう今からでもやるべきでは?」

「賛成ー! トモハルさまもお風呂好きだよね! ね!」

「お風呂……入りたいです……」


女性陣の強い要望で村の中心の温泉の拡張、および男女風呂の設立が閣議決定されたのだった。


とりあえず、現状やること……というか出来ることは、木片を焼いて灰に、肥料にして畑っぽい畝に蒔くこと。

虫とか微生物がどこまでやってくれるかなんだが……そもそもクワが貰った一つしかないからあんまり広くは出来ないしな。


さらに、引き続き木材の加工。

それと、石材の加工。

石材といっても切り出しとかが出来るわけではない、そこいらに落ちているものだ。


それを。


「はい、あーん」

「あーん……」


ヴィオラの中に放り込む。

すると、軽くヴィオラが上下し。


「はい、出来たわよ」


まるで電子レンジだ、入れた石が荒削りのクワのヘッドになって帰ってきた。

ヴィオラは細かいところは出来ないが、形の造形ぐらいは出来る。

どうやっているかはわからないが、ヴィオラ曰く噛んでいるらしい。

ヴィオラの生態はホントよくわからない。

とにかく、あとは職人芸よろしくやたら加工が上手くなった狐尾族の皆さんに押し付ける。


ヴィオラのおかげで、石器の加工が非常に楽になったのもあり、結構な勢いで村は回っている。

のだが。


「おーい、木材が足らん! 誰か持ってきてくれ!」

「プッチー足りないよ、誰か釣りに行っておくれ!」


とまぁ、とにかく……人手が足りない。

これはある種仕方ないのだが……

そもそも子供も何人かいる、女性もいる、それなりの老人もいると、意外とこの村の労働出来る人員の割合は少ない。


出来ればもっと人が欲しいところだが……贅沢は言っていられないし、現状でも食料は不安定なのだ、むやみやたらに増やすのも危険だ。


そんな中。


「……っ」


なんだろう、雰囲気。

村に駆ける、違和感の波。

全員把握し、ピリピリと空気が刻まれていく。


「えっ、えっ、どうしたのよ」

「……なんか、いるな」


ヴィオラだけが把握出来てない。

聴覚、嗅覚において強い俺たちだ、それは非常に……わかりやすかった。

血の匂い。


「ヴィオラ、一応外に出とけ」

「わ、わかった」


なりゆきで村にいるだけのヴィオラだが、戦力としては非常に大きい。

相手にもよるがな。


「……あ」


感じた。

見えた、ではない(・・・・・・・・)

足跡も、足音すらしない。

どう猛な野生の姿は……見ることもで(・・・・・・)きなかった(・・・・・)


「サイレントウルフ……」


村のどこかから聞こえた。

狼、たしかに雪国らしい存在だ。

だが、不可解。

あまりに……静かだ。

故にサイレント、か。

縁起でもない。


「ヴィオラはわかるか?」

「な、何が?」


ヴィオラはわかっていないらしい、かなり怯えている。

戦力として数えるのは難しそうだった。

ヴィオラに待機、および子供達の保護を任せ、俺はクワを持って気配のある方へ。


「状況は」

「よくありません。《隠蔽(スニーカー)》の上手い個体群です」


曰く、《隠蔽(スニーカー)》は自分の存在をある程度隠す魔術。

つまり、度を超えた擬態、って感じだな。

足音も、匂いも、可視の有無さえ。

強烈な血の匂いが無ければ気づくなど不可能だっただろう。

単純な生き物ではない。

魔術を使役する、"魔物"だった。


「……っ、更に」


薄まった。

不気味なほどに静かなここは、どうにも恐ろしい。


「来ます」


ゲーム風に言えば、自分に有利なバフをかけ直したのだ。

つまり……


グゥァァアアアアアアッッ!

「うおおおおおおおおお!!!?」


咄嗟に構えたクワが悲鳴をあげる。

目の前にはやっと確認出来た白い狼が、俺を食いちぎろうと牙を向けていた。

そりゃあ突撃して来ますよねぇ!?

クワはあと10秒も保たないだろう!


「燃えろ!」

ギャッ!?


毛皮がだめにならないように体内に。

どうだ五臓六腑が焼ける苦しみは!

……とはいえまだ殺すことに割と抵抗がある、火が弱まってしまう。


「うわぁぁ!」

「このっ、このっ!」


狐尾族も応戦するが、素手、すなわち野生の戦いにおいて人型生物はあまりにも脆弱。

未だ、敵気配多数。


劣勢は必死だった。

投稿が遅れてすいません。

これからも割と無断で休むと思うので、適当にお待ちください。


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