表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/56

第12話 魔術

「どーすっかねぇー……」

「どうなさったのですか?」

「いんやぁ……」


まさか、まさか。

いきなりこんなに住民がね。

1人だったのが合計で28人まで増えたってよ。

これはバイ○インもびっくりだな。

だって28倍だもの。


もちろん、それで賑やかになったぜやったぁ! みたいに手軽く喜ぶことは出来ない。

衣食住の問題が28倍にも増えるのだから。


村長曰く、この場所は臭いがひどく、そもそもだれも近づかなかった、温泉なんて素晴らしいものがあったなど、知らなかった、だそうだ。

そして、俺さえいいのなら住まうつもり、とも。


俺は許可したが、この場所についてだれも知識はない。

チコルの木を何十本も切り倒して大丈夫なのだろうか。

あれのおかげでガスが出ない、という可能性も無くはない。

硫黄という物質にそう詳しくないし、俺もはっきりとした意見は出せないのだ。


「他の森にいって木材を運ぶのが望ましいでしょうか……」

「でもこれから冬なんだよねぇ……ちょっと辛いよねぇ……」

「えぇと……はい……」


何かいい方法は……


「この余りある雪を活用できれば良いのですが……」

「……雪、雪……」


む。


「かまくらでも作ってみる?」

「かまくら? というと……?」


かまくら……雪を固めて、中をくり抜くオブジェ。

一応それっぽいものといえばそれぐらいしかないと思うのだが、いかんせんノウハウは0。

強度、耐寒性、耐風性、居住性などなど、アンノウンなデータが溢れんばかりだ。


一応概要を説明する。

すると。


「あぁ、雪兎族の使うような、スノードームをつくるのですね!」

「……まぁ、多分そんな感じだねぇ」


一応構造は単純だし、わかる……と思う。


「こんなものを知っているだなんて、トモハル様は……なんと……」

「あのー、そのトモハル様って……すっごい歯がゆいんだけど……」


言い出すタイミングが無かったのを、ここで。

だってみんな問答無用に敬称つけてくるし……


「? トモハル殿のほうがよろしいでしょうか?」

「いや、トモハルって呼び捨ててくれるのが一番……」

「なりません! 村の恩人をあまつさえ友人のように扱うなど!」


わーそんなに怒らなくていいのにー。

ラクちゃんってば出来た子よねー、まだ小学生みたいなのに。


「そもそも! トモハル様はご自身の偉業をご理解なされておられないのです! トモハル様の英断と自己犠牲が無ければ私含め色々な人がくどくどくどくど……」


なぜだ、自分の成し得たことを褒められているのに耳が痛い。


「魔力だってそうです、トモハル様がいなければ」

「あ、そうそうその魔力」

「私は……へ? 魔力がどうしたのですか?」

「ラクちゃんは魔術とか使えるのかなーって」

「もちろんです!」


ぽん、と腰に手を当て、ゼロに等しい胸を張るケモっ子幼女。

思わずなでなでしそうになる手を抑え、やんわりと微笑む。


「どんなの?」

「火属性が得意です、あとは変化も!」

「ほーほー。ちょっと見せて」


実際、魔術というものにはかなり興味がある。

それが俺にも使えるのなら、俺の失われた厨二スピリッツも目覚めようもの。


「では、早速……下級の火属性ですが……」


すると、マカの時と同じように、ラクの身体が光りだす。


「自然の力よ、応えよ。《火球(フレア)》」


ぼふっ、と小さな、ラクの手のひら程の火の玉が。

ラクの周りを人魂のようにぷかぷかと浮いている。


「おお、すごい」

「そうでしょうそうでしょう!」


ここまで見事なふんすふんすは見たことがない。

それほどまでにラクは可愛かった。


少し経つと火の玉は消え、あたりが元の照度と温度に戻る。


「いいねぇ、やっぱりこういうのは」

「トモハル様もお使いになられるので?」

「んー……」


目の前で幼女が成功させたのだ。

俺がやってできないことはないはずだ……ッ!


「えーと、自然の力よ、応えよ……」


自分で言ってて恥ずかしいが、別にそれは今は問題にはならない。

さぁ燃え上がれよ炎。

俺の厨二スピリッツと共に!

これからはくっくっくとか笑っても許されるはずだ!


「《火球(フレア)》!」


……。


…………。


……………………。


「あのー……」

「な、なんで発動しないんですか?」


いやそれこっちのセリフ。

いやそもそも発動しないものなんだけどね俺たちの常識では魔術ってものは!


「……なんか、こう……コツとかあるの?」

「コツというか、意識することは……」


魔術。

概念として存在はするが、俺の記憶では人間は使えなかった代物。


この世界での魔術とは主に三つの要素で構成されており、一つは魔力。

魔術を車だとするなら、魔力はガソリンでありエンジン。

もっとも重要なところである、ということだ。


二つ目に、触媒。

これは車体。

いわゆる、魔力で補えない部分を形作るもの。

基本的には魔力さえ篭っていればどんなものも触媒になるらしい。

つまり、あの時俺の魔力を使ったマカも、俺を触媒にして魔術を使ったわけだ。


そして三つ目、魔法陣。

これはハンドルとアクセル。

何を作るか、を決めたあとに制御を行う部分。

つまり、魔力と触媒だけでは不安定になるらしい。


だが、この三つのうち、触媒と魔法陣は必ずしも必要というわけではない。

人間だって極めれば車と同じ速度で走れるかもしれない、つまるところ……技術と相応の魔力があれば魔術は形作られる。

ただし、人体にも栄養(ガソリン)心臓(エンジン)は必須なので、魔力は必要不可欠。


つまり。


「慣れていないのであれば、これらを使えるようになっていないと……私も幼い頃はそうでしたし」

「ぐおおお……まじかぁ」


めんどくさい。

苦労もなく火が使えれば文明は一気に進化するというものなのに!


「確か、私たちが持ち寄った本の中に魔術のことが書いてあるものがあったので、それをご覧になるといいかもしれません」


ふむふむ。

それは耳寄りな情報だ。

いろいろと設定のお話でした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ