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第11話 またもや目指め

「……ぅ……」

「おお! お目覚めに!」


頭にガンガンと声が響く。

声でかいぞー、やかましメカでも手に入れたか。


「トモハルさまぁ!」

「グボーッ!?」


腹に衝撃。

なんだなんだ、本当に水中の城だったのかここは。

俺はあのトラウマ製造機の犠牲に……


「こ、こら! トモハル様はお疲れなのですよ」

「あっ……も、申し訳ありませんっ……」


ん……?

この声、ラクか……?


のっそりと目を開ける。

目に入ってきたのは見慣れた木の家……俺の作った家だ、と……半泣きのラク。


「この度は本当に……本当に……ぅぁぁあぁぁあぁ……」

「ちょっ!?」


と思ったら全泣きし始めた。

えっ俺なんかしたっけ。


「本当に申し訳ありません、トモハル様。村民を助けるためにといえど、恩人の魔力を無断で使用するなど……」


と思ったら、隣の人が土下座してきた。

とりあえず頭をあげさせる。


村民を助ける……

あー……


だんだん思い出してきた。

そうだ、さっきまで必死に雪崩に飲み込まれた狐尾族を掘り起こして……


「っ! みんなは! まだ雪の中に」

「お、落ち着いてください」


痛む身体に鞭を打って起き上がる。

落ち着いていられるか、こんなところにいて。

早く続きを……


そのとき、家の前にある布がめくられ。


「おぉ! トモハル殿、目覚められたか!」

「トモハル様……よかった……」

「あ、あれ……」


何人かの狐尾族が顔を覗かせてきた。

みんな湯気を上げながら。


「この通り、全員無事……とはなりませんが、酷くても骨折。死人、致命傷はゼロ、ですよ」


…………。

何が何だかわからんが。


「はぁぁ……」


ぼす、と床に頭を落とし、ため息をつく。

ほんっと……よかった……


「トモハル様が私を助けてくださった故に、みな無事だったのですよ。私はこの村一番の魔術師ですから」

「……えーと」

「ですが、自衛に魔力を使ってしまい……あのままでは助けられて数人だったでしょう……」

「あのー……」

「トモハル様の魔力と繋げることでようやく《飛翔(フライ)》を使うことが叶いました。この報いはあらゆるもので受けるつもりです。死ね、と言われれば私は」

「はいストーップ」


会話が長い。

専門用語が多い。

典型的な話下手じゃねーか。


「とりあえず、一から会話形式で教えて」

「は、はい」


そして、理解できたこと。


雪崩は突然起きた、原因は不明。

地震にみんな外に出ていたため、家に当たって勢いの弱まった雪崩に飲み込まれることに、そこは運が良かった。

そこに俺が到着、魔術師、マカを助ける。

魔力不足だったので、俺の魔力を奪い、使った。

そして村民をみんな助け、そのままラクが一度助かった場所にみんなで飛ぶ、と。

そのとき腐卵臭には不満があったが、なんとかしたらしい。

その結果、俺は魔力不足に陥り、1日ほど気絶した。

で、現在に至る。


…………。

まるで意味がわからんぞ!


「まさか、魔術をご存知……無い……?」


あの村の一番魔術に卓越していたらしいマカが心配そうな目を向ける。


いや、魔術自体はわかる。

魔女が大釜にキノコとか入れて混ぜて練るほど味が変わってテーレッテッテレーなやつだろ。

んで、魔力っていうのも何となく。

いわゆる体力がHPだとして、魔力ってMPだと、マジックポイントとかいうやつ。

つまり、魔術を使うためのリソース。


そこまではわかる。

それからがわからない。


「魔術って……魔術?」

「……? はい」

「いや待ってちょっと混乱してるから」


からかっているようには見えない。

かといって、頭の中に爆弾が的な人にも見えない。

えーと。


「……ラクちゃん、その……魔術って常識?」

「えっと……魔術を知らないというひとは、特例以外はあんまり……」


うわぁ……。


つまり、結論に追加して。

俺、人間じゃない上に魔術が常識にある世界にいます。

絶望ってこういうこと。

たしかに、異世界転生とか聞いたことあるし、頭の片隅に無かったわけでもないけど。


「ここってなんていう……世界?」

「せ、世界……ですか? それは……なんというか、その……申し訳ありません……」

「……いやごめん、質問が悪かった……」


地球だったとして、誰かが転生してきて、同じ質問をされたら、"ここは地球ですようこそ異世界人"とは言えないし言わないだろう。


「場所の名前とかわかる?」

「それならば、大雪原と呼ばれております」


うわーシンプルー。

今時ゲームだってそんな名前つかないぞ。


「動物もほとんどいなく、我々のような獣人が転々と暮らしているだけなので、価値がないと……人間が」

「なんだその暗すぎる命名理由は……」


一応頭が働いてきたので、ゆっくりと身体を持ち上げる。


「おー、いちちち……」

「ま、まだ無理されない方が……」

「いやぁ、温泉浸かっていたほうが早く治るよ、多分……」


と、外に出ると。


「おお! トモハル様!」

「トモハル殿が目覚められたぞ!」

「トモハル殿! ありがとう!」


男!

漢!

裸!

需要? あるわけがない。

供給? いるわけがない。


「「「ありがとうございます!」」」


温泉にパンパンになった筋骨隆々男たちなど。

どこの企画ものだ。

苦笑いする顔を必死に保ちつつ、手を振る。

これではここの温泉は使えないな……

他にもいくつかあった筈だが。


「……ぅ」


若干足がもたつく。

まだ身体が完全じゃあ無いらしい。


「ほら、トモハル様……今治療しますから」


すると。


「……わ……」


なんだろうか、マカの身体が薄ぼんやりと光る。

幻想的だ。


「大いなる自然の王よ。我らが願いを聞き入れたまえ。《治療(メディケィション)》」

「……うわ!」


身体がぽかぽかしてきた。

心なしか痛みも引いた。


これが魔術か!


「あの異様な臭いも消しておきましたので、あの湯に浸かるのであれば、向こう側のを。一番綺麗に浄化しましたゆえ」


そういえば、硫黄特有のあの卵みたいな臭いが無くなっている。

何となく寂しいが、知らないものには気になるものだったか。


とりあえず、匂いの消えた他の硫黄泉に向かう。


「……あのー……」

「はい、なんでございましょう」

「……お風呂までついてこなくても」

「あっ」


ラクとマカは引き下がった。

魔術アリな感じです。

バトルは……ちょっとぐらいはやるかな?

どちらかというと戦略で追い回す感じになると思います。


12/2 修正しました。

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