表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【26年7月アニメ放送開始】ヒロイン?聖女?いいえ、オールワークスメイドです(誇)!  作者: あてきち
第9章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

367/369

第20話 山頂の戦い

 メロディについて行き、コテージに着いたレクトは、これまでの経緯を改めて聞いた。


「……つまり、俺はメロディが魔力を溜めている間、彼女の護衛をすればいいんだな。了解した。任せてくれ」


「いいんですか、レクトさん?」


 メロディが尋ねると、レクトは軽く頷く。


「ああ。むしろ、もっと早く頼ってもらえたらよかったな」


「ありがとうございます」


 メロディは礼を言った。ルシアナがすぐに悪態をつく。


「ふーんだっ! 部外者と一緒に旅なんてできるもんですか。今回はたまたま、仕方なく、武器と肉壁が必要だから呼んであげただけなんだからね! ありがたく思ってちょうだい!」


 ルシアナはわざとらしくプイッと顔を背けた。


「お嬢様! 肉壁だなんて、そんな言葉どこで覚えてきたんですか! さすがに怒りますよ」


「うう、だってぇ……」


「レクトさんを頼るよう私に助言したのは、お嬢様じゃないですか」


「……そうなのか、ルシアナ嬢」


「べ、別に! あなたなら喜んでメロディの護衛をするだろうから、手間が省けると思っただけよ。私があなたを頼りにしているなんて、勘違いしないでよね!」


「……そうか」


 レクトはクスリと微笑んだ。誰も口に出さなかったが、みんなの心の中では「十分頼りにしてるじゃん」と思っていた。言わぬが花というやつである。

 ルシアナのツンデレ全開の態度はさておき、これでようやく戦力が揃った。


「えっと、こんな感じでどうかな、セレーナ?」


「はい、いいと思います」


「よかった。じゃあ、レクトさんとリューク、これをどうぞ」


 メロディは二人に銀製の剣を手渡した。レクトが持ってきた物だ。メロディは自身の魔力を注ぎ込み、二人に渡した。


 銀製武器に魔力を通せば、黒い魔力の魔物にも攻撃が有効になる。しかし、メロディの魔法で作られたルシアナの武器『聖なるハリセン』には遠く及ばない。


 セレーナから進言されたメロディは、二人の武器に自身の魔力を注ぎ込んだのである。


「これで本当に準備は完了ね。それじゃあ、メロディ。そろそろ行きましょう」


 ルシアナに促され、メロディも頷く。


「セレーナ、準備はいい?」


「ええ、いつでもどうぞ、お姉様」


 リビングの空いた空間に二人は向かい合う。


「「『銀清結界』」」


 手を取り合った二人を、白銀の光が包み込んだ。


「「見ちゃダメだから!」」


「「……」」


 レクトはルシアナに、リュークはマイカに目隠しをされ、ただ静かに時が過ぎるのを待つ。

 メロディのメイド服が糸状にほどけ、宙を舞う。セレーナはその身を白銀の魔力に変え、糸と絡み合いながら光の中で形を整えていく。


 やがて一糸まとわぬ姿となったメロディは、滑らかな糸の動きに合わせて舞い踊るようにして、新たな姿を完成させた。


 男性陣にはなかなか刺激的な光景だろう。


「でもやっぱり、大事なところは見えないのよねぇ」


「だから変態入ってますって、お嬢様。あ、今の際どかった」


「「……」」


 男二人は無言でじっと耐えるしかなかった。

 光が収まり、変身が終わる。黒い髪は白銀に、瞳は瑠璃色に変わり、白銀のメイド服に身を包んだメロディが姿を現す。


「メイド魔法奥義『銀清結界』、タイプ・ハウスメイド。これより職務を開始します」


 優雅にカーテシーをするメロディ。右手には掃除道具を入れた箱型の鞄――ハウスメイドボックスを握っていた。


 その姿に感銘を受けたルシアナとマイカは、男性陣から手を放し、思わず拍手する。レクトも神秘的な美しさに見惚れてしまった。


 メロディは少し恥ずかしそうに微笑むと、表情を引き締め、声を張る。


「さあ、行きましょう、山頂へ」


 白銀のメイド姿で、メロディは意気揚々と作戦開始を告げた。


「みなさん、私に集まってください」


 変身を終えたメロディが声をかけると、ルシアナたちは自然と彼女の周りに集まった。


「清らかなる息吹の調べ『白銀の風アルジェント・ビアブレッザ』」


 メロディの手元から、白銀の光を帯びた風がふわりと立ち上り、仲間たちを包み込む。冷たくも温かいその風が、彼女たちの身を守る結界となった。


「これで、扉を通り抜けたらいきなり襲われても大丈夫ってことね?」


 ルシアナが尋ねると、メロディが頷いて答えた。


「はい。前回の件を踏まえて、念には念を入れないと」


 先程は山頂に降りた途端に黒鞭に襲われてしまった。次もそうなる可能性が高い。

 メロディはルシアナ達を一瞥し、コクリと頷く。


「それでは、行きましょう」


「みなさん、頑張ってくださいね!」


 見送るマイカを背にし、メロディ達は『通用口オヴンクエポータ』の扉を開けた。

 その瞬間、メロディの備えが正しかったことを、彼女達は思い知らされる。


 山頂に踏み出すや否や、黒光りする鞭が二本、らせんの柱から生まれるようにして襲いかかってきた。まるで闇が実体を得たかのように、鞭は空中で交差し、攻撃のタイミングを計っている。


 しかし、メロディの『白銀の風』が鞭を迎え撃った。

 普段の彼女なら、二本同時の攻撃に防御を破られただろう。しかし今は『銀清結界』を纏っている。風は一層鋭く、強固で、鞭の攻撃を弾き返す。


「初撃は防ぎました。あとはお願いします!」


「任せろ……揺蕩う風の鎧を纏え『風の守護者ガルデアナ・デルベント』」


 リュークの剣先から渦巻く風が立ち上り、ルシアナとレクト、そしてリューク自身を覆う結界となった。


「メロディの魔法には遠く及ばないが、一撃くらいなら……致命傷は避けられるんじゃないか?」


 無表情のまま、リュークは淡々と魔法の説明をした。ルシアナとレクトは苦笑する。


「頼りないなぁ、もう。でも、当たらなければいいだけの話ね! ありがとう、リューク」


 ルシアナがそう言うと、レクトも頷いた。


「まあ、そうだな」


「メロディは必要ないんだったな」


 事前にそう伝えられていたリュークが確認すると、メロディは頷く。


「はい。魔力を溜める時は、他の人の魔力はない方がいいので」


「分かった。俺達でしっかり守り抜く」


「ありがとうございます、リューク」


 リュークは頷くと、黒鞭の方へ振り返った。


「一人一本、鞭の相手を頼む。俺は魔法で補助をする」


「任せて!」


「了解」


 ルシアナとレクトが前衛、リュークが後衛に立ち、布陣は完成した。


「準備完了だ、メロディ。魔法を解いてくれ」


「はい……『白銀の風』解除」


 四人を包み込んでいた風の守りが、しゅるりと消えた。


 辺りには、ただ風のざわめきが残るのみ。

 その静寂を破るように、黒鞭が空気を裂いて襲いかかってきた。


「いくわよ!」


「「おう!」」


 こうして、戦いは始まった。






(私も、自分の役割をこなさなくちゃ……!)


 三人が二本の黒鞭を押しとどめている間に、メロディは素早く動き出した。

 ハウスメイドボックスから石鹸を一つ取り出す。掌に乗ったそれは、彼女の魔力を感じ取ったのか、ふわりと宙へ浮かんだ。


 メロディはボックスをそっと地面に置き、両手を掲げ、石鹸を包み込むように翳す。


(魔力を……全部、ここに。ガルムさんを浄化した時よりも、もっと強く……!)


 彼女の意識が深まっていくにつれ、石鹸の内部に白銀の光が灯りはじめる。最初は小さく、心臓の鼓動のように脈打つだけだった光が、魔力が注がれるほどに淡く、そして力強く輝きを増していく。


 長い集中が必要だ。メロディは邪念を振り払うように静かに目を閉じた。

 その体から溢れ出す白銀の魔力は、もはや“光”と呼んで差し支えないほど濃密で、奔流となって空気を震わせる。


 その気配に、黒鞭が敏感に反応した。


 蛇のように地を這う気配とともに、鞭が一気にメロディへ向かう。


「あんたの相手はこっちよ!」


「メロディのところへは行かせない!」


 ルシアナとレクトが飛び出し、黒鞭の進路を塞ぐ。

 白銀の魔力を宿したハリセンの一撃と、輝く銀剣の斬撃が、鞭を叩きつけるたびに火花に似た光が散った。


 黒鞭はしなるたびに空気を裂く音を鳴らし、まるで意思を持つ生き物のように二人を狙いすまして襲う。


 戦況を拮抗させているのは、後衛のリュークだ。

 本来なら鞭は不規則かつ超高速で、ルシアナたちの反応速度では完全に捌ききれない。


 だが、リュークが風の魔法で鞭の動きを鈍らせ、空間そのものに抵抗を生んでいるため、黒鞭の自由な挙動を封じていた。


 熟練者の彼でなければ、とても維持できる術ではない。

 そして、彼の補助がなければ、いかに優れた前衛であるルシアナとレクトでも、戦いにすらならなかった。


 ルシアナがタイミングを見逃さず、ハリセンを黒鞭に叩きつけた。

 白銀の輝きが炸裂し、黒鞭は大きく弾き飛ばされる。


 しかし……。


「くぅっ! ひび一つ入れられない! メロディと戦った時は壊せたのに!」


 悔しそうに歯噛みする。


「目的は時間稼ぎだ。あまり熱くなりすぎるな!」


「分かってるわよ、それくらい!」


 息を切らしながらも、ルシアナとレクトは言い合いながら黒鞭に応戦する。

 ルシアナのハリセンは衝撃を与え、鞭を吹き飛ばすことまではできるが、破壊には至らない。

 レクトの銀剣も、確かな手応えはあるものの、黒鞭を切り裂くには一歩足りない。


 均衡は保たれている。だが、ほんの一瞬の隙――それだけで全てが瓦解しかねない危うい均衡でもあった。

 さらに、三人は戦闘開始から一秒たりとも力を抜けずにいる。


 その負荷は確実に蓄積し、体力も集中力も限界へ近づいていた。

 三人の思いは、同時に一つへ収束する。


(((長くは持たない……)))


「それでも、負けないんだから!」


「ああ、その通りだ!」


「……そうだな」


 最も威勢のいい声を出しているのが十五歳の少女である事実に、レクトとリュークは思わず苦笑する。


 だが、次の瞬間には二人とも表情を引き締め、再び黒鞭へと立ち向かった。


 メロディを守るために。すべてを繋ぐ白銀の光が完成する、その瞬間まで。






 そして、その時は思いの外すぐに訪れた。


最新小説9巻 4月1日発売予定です。

オーディオブック最新5巻 4月27日配信予定です。

最新コミック7巻 7月1日発売予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ヒロイン?聖女?いいえ、オールワークスメイドです(誇)!』
最新小説9巻 2026年04月01日発売!

TOブックスオンラインストア小説9巻購入ページ

GTU1MxYaQAA66b1?format=jpg&name=large
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ