序章
初めての投稿です。
頑張って少しずつでも更新していけたらと思っています。
よろしくお願いします。
綺麗な真紅の絨毯が扉の前から私の足元まで真っ直ぐ伸びている。ふと頭上に目線を向けると昔のお嬢様のお屋敷でも見たこともない大きなシャンデリアが私に光を降り注ぐ。まぶしすぎて直視できない。堪らずにシャンデリアから目を外す。ふと、窓からサルラの花が風に吹かれているのが見えた。
春は必ずお嬢様とサルラの花を摘んでジャムにしていた・・・今頃は摘んだサルラをお嬢様と一緒に潰している時間なのに・・・。
「・・・ああ、帰りたい」
ぼそりと呟いた。
2週間前に見たお嬢様の笑顔が、声が、私の頭を通り過ぎる。
・・・いけない。私は首を小さく左右に振った。
私は何のために此処にいるの?誰のために此処にいるの?
全てはお嬢様のため・・・私はそのためにこんな立っていたくもないところに立っているのだから・・・。
さあ、私の足、動きなさい。
さあ、私の手、目の前のこの無駄に豪奢な扉を開けなさい。
さあ、扉を開いたら笑いなさい、アズサ=リズナウェル。
『これから貴方は・・・』
扉を開いた先にはまだ真紅の絨毯が続いている。
絨毯は部屋の奥の階段の最上階に聳え立つ黄金に輝く椅子の前でやっと終わっていた。
まさに玉座と呼ぶに相応しい輝きを放つ椅子に座っていた男が私を見て、嬉しそうに立ち上がり、階段を下りてくる。
真紅の絨毯に沿うように立つ男達の私を見る視線が痛い。
疑心、侮蔑、殺意、好意的なモノなんかひとつもない。
でも、私はそんな視線に怯えることも戦くこともしない。
こんなものに負けてはいられない。
だから私は微笑んだ。
真紅の絨毯を悠々と歩いて私のところまで来た男・・・我がシェドゥール国の最上、国王ドルトル=シェドゥールに。私の最上を奪う男に微笑んだ。
「ああ、やっと来てくれたのか、私の愛しい人。
皆、彼女が私の愛しい人、アンナ=サンタマールだ」
笑いなさい、アズサ=リズナウェル。
『貴方は・・・アンナ=サンタマール(お嬢様)になるのだから。』