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寝顔



 午後から出勤させられて、不機嫌なまま家に戻った恭はドアを開けたとたん、家の中が真っ暗なのでちょっと驚いた。

「真治?」

 玄関の明かりをつけて中に入る。一瞬、真治は怒ってどこかへ出かけているのだろうかと思ったが、何も言わずにそんな事をするような彼ではないと思いなおした。

 部屋に入ると、中は真っ暗でスイッチをつけた。ソファに鞄を置こうとしてギョッとした。

「真治っ」

 真治が体を丸くして眠っている。そんなに寒くはないが、このまま寝ていたら風邪を引くかもしれない。恭は真治の体を抱えた。軽い。何だか痩せた気がした。

 彼を起こさないようにベッドに寝かせる。そういえばパジャマのままだ。疲れているのだろうか、と思って苦笑した。

 ベッドの上であどけない顔で眠る真治の髪をくしゃくしゃと撫でた。真治は死んだように寝入っている。

 恭は部屋を出て買ってきた弁当の包みを開けながら、用意しておいてよかったと思った。それからすぐにお風呂に入り、着替えて寝室に戻った。

 真治はまだ眠っている。隣に入って真治の細い体を抱きしめた。

 真治の寝顔はかわいくて思わず頬にキスをした。真治はぴくりとも動かない。ぎゅっと抱きしめながら、ごめんな、と恭が言った。

 明日こそ本当に休みだから、ずっとそばにいてあげよう。恭はそう思いながら自分も眠った。

 朝、いつもより少し遅めに起きた恭は、真治がまだ眠っているので呆れてしまった。

「おいおい」

 いつまで寝るつもりだよ。恭はベッドを軋ませながら体を起こしたが、真治は同じ体勢のまま起きない。

 息を付いて真治の寝顔を見ていると、何だか起こすのがかわいそうに思えた。

 もう少し寝かせてあげようと思い、部屋を出て朝食の用意をする。

 とりあえず真治の分も用意してから顔を洗い、着替えをすませて新聞にざっと目を通す。

 これといったニュースもないので、片付けをすませて寝室に戻ったが、真治が全く起きないのでいいかげんいらいらした。

「おい、真治、そろそろ起きろよ」

 彼がずっと眠り続けている事にも気付かず、恭は真治の肩を揺すってみた。

「真治?」

 ぴくりとも動かない真治の体を数回揺すりながら、恭は初めて焦った。

「お、おいっ」

 真治は全く目を覚まさない。

「真治っ? どこか具合が悪いのか?」

 心臓に耳を当てると、鼓動は規則正しく動いている。どうして眠っているのか分からない。

「真治っ」

 恭は焦ったがどうしようもなく、少し落ち着こうと深呼吸をした。

 もう少ししたら目が覚めるかもしれない。そう思って部屋を出た。が、すぐに気になって戻ってきた。

 真治の指を握る。温かくて細い指先に指を絡めて見たが、真治は動かない。

「病院に行こう……」

 恭はタクシーを呼ぶと、真治を着替えさせて病院に向かった。車いすに座らせ、恭は長い間、診察を待った。

 一時間半近く待ち続けてようやく名前を呼ばれた。ほっとしながら医師に見せたが、判断結果は眠っているだけですだった。

 呼吸は安定しているし、熱があるわけじゃない。別に異常はありませんよ、とものの五分で追い返されてしまった。

 恭はまたタクシーに乗りながら、ぎゅっと真治を抱きしめた。

 家に着いて、空を見上げると夕方近くになっていた。

 どうして真治が目覚めないのか、分からなくて困ってしまった。

 このまま待っていれば真治は目を覚ますのだろうか。

 不安な気持ちのまま、真治の体をベッドに横たえながら息を付いた。

「今まで放っておいたのがいけないのか? 罰が当たったのかな……」

 自分自身を責めながら、恭も真治の隣に体を横たえた。

「真治……。目を覚ましてくれよ。俺、心配しているよ」

 恭は優しく真治に話しかけた。それでも真治は目を覚まさなかった。



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