仕事
「ん……」
真治は寝返りを打った。
目覚ましを止めていたおかげか、起きたのは昼近くだった。自分でも驚くほどよく寝るなと思いながら体を起こす。
「恭?」
寝室を出ると、リビングで恭が携帯電話で何か話している。近づくと恭がびくっとした。そして、片手を上げて拝むような形をとる。
真治は怪訝に思いながら首を傾げた。
しばらく恭は電話で話をしていたが、切ってから真治を見た。
「ごめんっ」
「えっ?」
「仕事が入った」
「嘘っ」
真治が泣きそうな顔をした。
「そんな……」
後の言葉が続かない。恭も少しいらいらして見えた。
「わかった」
「え? 怒ってないのか?」
「どうして?」
「だって、昨日約束したのにさ」
「仕方ないよ。仕事なんでしょう?」
恭は、真治がしおらしいので面食らった。
「お前、怒っているのか?」
「だから、怒ってないよ」
真治は、恭は一生懸命働いているのだから、自分ばかりがわがままを言って困らせてはだめだと思い直した。
「僕の事は気にしなくていいから」
「真治……」
恭はそれきり何も言わなかった。
二人は何だか気まずい空気の中、恭はさっさとコーヒーだけ飲んで出かけてしまった。
取り残された真治はぽつりと台所に立ち尽くした。
「あれ……?」
つーっと涙が頬をつたった。
「情けないな、僕は……」
やせ我慢している自分に呆れる。
泣くくらいなら、怒ってケンカした方がよかったのかなと思った。
何も言わずに背を向けられたとたん、どうしていいか分からなかった。
キスしてくれるだけでもいいのに。
恭が好きって言ってくれるだけで僕は満足なのに。
真治はソファに足を抱えて座った。
「どうしてこんなになっちゃったんだろう」
足を抱えたまま呟くと、真治は横になった。涙がぽろぽろと流れている。
ごしごしこすって真治は目を閉じた。
そして、そのまま意識が薄れていって、真治は眠った。