眠り
真治は、夢を見ているのだと思った。
ベッドの中で恭とじゃれあっている。恭の背中はたくましくて温かい。
ずっとこのまま抱き合っていたい、そう思いながらぼんやりと目を覚ました。
「あれ……」
体を起こすとリビングの絨毯の上に寝転んでいた。
「えっ」
がばっと起き上がる。
「な、何っ?」
何が起こったのか自分でも分からない。そして、外を見るとまた暗くなっている。
「まただ……」
真治は茫然とした。
「ただいま」
声がして、真治はびっくりして玄関に走った。
疲れた顔の恭を見て、今まで眠りこけていたなんて恥ずかしくて言えず、夕飯の用意をできなかった事を思い出した。
「き、昨日のカレーの残りでいい?」
開口一番にこう言って、恭を呆れさせてしまった。
夕飯に辛いカレーを水で流し込みながら、恭は黙々と食事をした。
明日が休みだと知って、昼間あんなに真治に優しくしてあげようと思っていたのに、昼食にも食べたカレーを見たとたん、急に口が重くなった。
真治も罰が悪いと思っているのだろうか、何も言わない。それを見ると、ますますいらいらした。
先に風呂に入ると言って風呂場に行く。ゆっくりと浴槽に浸かると、体が温まって少しいらいらが引いた。
真治に対して腹を立てた事を悔やまれる。こんな些細な事くらいでいらいらしているなんて。
明日が休みとはいえ、ゴールデンウイークまでまだ数週間はあるのだ。それまでこんな状態が続くようではだめだ。
だめだと分かっているのに、仕事仕事で余裕がない。
温まってから風呂を出ると、真治がソファでぼんやりとテレビを見ていた。
呼びかけると、そそくさと風呂に入りに行った。
恭は、真治を待つつもりだったが、急に眠気が襲ってきて先にベッドに入った。
明日休みになった事を真治に伝えなくてはいけない。それまで寝ないで我慢していた。
少しして、部屋のドアが開いた。部屋の明かりは薄暗くなっていて、真治はそっと入ってきた。
真治は髪を拭いてからベッドの中に入った。
恭は半分眠りこけていたが、はっとして目を開けた。
「真治?」
「あっ、ごめんね。起こしちゃった?」
「いや、待ってた」
「え?」
「明日さ、仕事が休みになったからどこか出かける?」
恭が言うと、真治が目をいっぱいに開いた。
「ええっ? いいの?」
真治は飛び上がりそうなほどうれしそうに言って、恭に抱きついた。
「行くっ」
恭は真治の背中を撫でながら、
「じゃあ、午後からどこか行こうな」
と言って、あくびをしてから目を閉じた。
「うんっ」
やった、と真治の声が弾んでいる。
しかし、恭にはもう声は届かないくらい深く眠っていた。