一章
目が覚めると草むらに寝ていた。
暖かな日差しを浴びながら体を起こした。
「なんだ。夢か・・・。」
夢だったと言うことに安心した。
怖かったわけではない。
温かな夢で安心はしていた。
ただ、現実味がなく驚いただけだ。
「さて、帰るか。」
心霊探偵団と言う部活を設立し、ミーはその団長をしている。
団長になりたくなかったが、多数決で決まってしまったのだ。
団長になってしまうとサボれない。
しかし、ミーはサボる。
活動なんて依頼が来ない限りしていない。
「サボるために設立したのに・・・。週一回しかサボれない。」
まぁ、いいか。
そうつぶやき、下に敷いていたシートをたたみ鞄にしまった。
「菜摘ーッ!!」
ミーの名前を叫ぶ声が聞こえた。
(誰だよ。てか、名前を叫ぶな。)
声がする方を見ると、親友の氷宮涼斗がこちらへ走ってきた。
「なんだ。涼斗か。どうした?涼斗。」
「一緒に帰ろうや。」
「あっ。うん。いいよ。」
「寝起きか?」
「あぁ。」
氷宮涼斗。
ミーの親友。
関西人ではないが、関西弁が上手い。
本人は、『関西方面行ったことあらへんわ〜。』と言っている。
まぁ。
本当なのだろう。
家が隣なんだ。
涼斗とは・・・。
「なぁ。聞いとるか?」
「あぁ。聞いてなかった。悪い。」
「悪いと思っとらんやろ。」
「何故わかった!」
「棒読みすんなや!」
ペシッと、ミーの頭を叩く涼斗。
(・・・。)
痛いわけではない。
蚊が刺したくらいの痛さだ。
蚊は嫌いだ。
うるさいから。
「・・・はぁ。」
「どないしたん?」
「・・・眠い。」
『さっき、寝とったんとちゃうん?』って聞こえるが、返事をする気がしない。
眠いんだ!
そんな茶番をしているうちに家に到着。
涼斗に『さよなら。』と言って家に入る。
一日が終了のお知らせをしている。
あぁ。
ミーだけのね。
*:★:☆:★:*
暗闇の部屋の中。
ろうそくの光だけで、照らされている。
3人の魔女のような衣装を着た少女と王座に座る一人の少年が会議のような事をしている。
「ーーー以上が今回の任務です。いいですか?怪しまれずに何処までいけるかは、君達にかかっています。」
「「「はい。」」」
「健闘を祈ります。」
「「「お任せを。」」」
「先程お話に出てきました、有能な人材、アリス・ショコラさんとベルズリア・ショコラさんが、潜入しています。2人の邪魔はしないようにしてください。」
「「「御意。」」」
少女の一人が、部屋の窓を開ける。
サァーッと風が部屋の中に入ってくる。
凍ってしまうくらい冷たい風が入り込む。
「明日から忙しくなりますよ。メイリ。」
少女はニッコリ笑い、王座に座る少年を見た。
「・・・・・・神木菜摘。」
少年は、フッと笑う。
何かを楽しむような・・・。
*:★:☆:★:*
教室中に響き渡るチャイムの音で目が覚めた。
放課後を迎えるチャイムだったようだ。
よく寝たな。
「おはようさん。と言っても、もう放課後や。」
元気がいいな。
「よう寝とったな。」
「笑ながら言うな。」
「ええやん。別に。」
「・・・。」
涼斗を無視して部活の活動場所へ行こうと歩き出した。
涼斗は笑うのをやめてついてくる。
「菜摘?」
「・・・。」
「無視?」
「・・・。」
「無視せんといて〜。」
「・・・。」
「・・・。」
静かになった。
心霊探偵団の部室は特別資料室と応接室。
何故この部屋を使っているかは・・・。
校長に勧められたのだ。
《心霊探偵団を作りたいだと?》
《えぇ。なので、部の活動場所と顧問の先生を紹介していただきたいのですが。》
《顧問の先生は、自分達で見つけるのが普通だが?》
《ミーとし・・・。》
《・・・。》
《・・・。》
《・・・。》
《私としては、まだ先生をよく知りません。なので、校長先生が信頼を置ける方を教えていただ声かと・・・。》
《ハハッ。君は面白いな。君の素を見せてくれないか?》
《私の素とは?》
《隠さんでもいい。君の素で自己紹介してくれ。》
《はい。ミーは、初めに申した通り、神木菜摘です。趣味は、昼寝。特技は、早寝。苦手な事、早起き。好きな事、心霊調査。以上です。》
《ハハハッ。面白い。いいだろう。俺が顧問の先生をやろう。》
《!》
《活動場所は、特別資料室と応接室でいいだろう。》
《校長先生は、お忙しいのでは?》
《いやいや。平気だよ。》
《校長先生の素を一瞬見た気が・・・。》
《さぁ。君が部長だろ?ささ、部員に合わせてくれ。》
全く想像と違った。
テンションの高い校長だった。
「はぁ。」
あの時は、驚きと疲れで早く寝たんだっけな。
「ため息つくと幸せ逃げるで〜。」
「笑いながら言うな。」
「菜摘は、女って感じせ〜へんわ。」
「失礼な。ミーは女だ。ただ、可愛いとかカッコイイとか言われたく無いんだ。普通がいいんだ。」
「・・・・・・わ・・やん。菜摘は。」
涼斗は、ボソッと何かを呟いたが聞き取れなかった。
「なんか言ったか?」
「部長。はよ行こ〜や。部員が、待ちわび取るで〜。」
そう言って、ミーの背中を押して歩みを早める。
「ちょっ。押すな。」
「急ご〜や?」
涼斗は、押す力を強め歩みをさらに早める。
そして、応接室についた。
すると、応接室の扉が急に開き誰かがミーに飛びついて来た。
ミーは、バランスを崩し倒れた。
「うわぁっ。イテッ。危ないな。」
「菜摘!菜摘〜ッ!」
「うぐっ。苦しっ。」
誰ですか?
苦しい。
助けて〜ッ!
「はっ!部長〜!!」
「君。部長から離れなよ。」
悠先輩と恭が部室から出てきた。
助けてください。
早くしないと・・・。
(内臓が飛び出す。マジで。苦しい。息が・・・。)
「俺の心配は無しなんか?酷いわ〜。」
ミーの下敷きになってるくせに平然としている涼斗。
「黙る。氷宮。」
「はいっ。」
部室から顔だけ覗かせている梨奈穂。
単語で涼斗を黙らせた。
笑いたいけど、笑えない。
苦しい。
(・・・意識・・・が・・・。)
「やっぱり罰を受けてもらうよ。弥生奈緒美。」
「ひぃっ。すいません!まじ、すいません!!悪気はなかったんです!!!」
「君。うるさいよ。菜摘を気絶させるなんて、許せないな。」
「恭ちゃん。そこまでにしなよ。」
「恭。落ち着く。菜摘。起きる。」
恭は、舌打ちをしソファーに座った。
部室には、唯一の三年ゆるふわ副部長、中原悠と二年の最強で最恐の不良、出雲恭と二年の天然単語少女、桜子梨奈穂と成績優秀だが残念なイケメン、氷宮涼斗依頼人、弥生奈緒美。
天才完璧最強少女でこの部の部長神木菜摘。
心霊探偵団は、あと五人いるが今日は来ていないらしい。
梨奈穂が、寝ている菜摘の様子を見る。
そして、微笑む。
涼斗も菜摘のそばにより頭を撫でる。
「弥生。話。聞く。」
「?なんて?」
「弥生。話。聞く。」
梨奈穂は、菜摘のそばから奈緒美に話しかける。
しかし、梨奈穂の言っていることがわからないのか、奈緒美の頭にはてなマークがたくさん浮かんでいる。
それを見た涼斗が笑いながら奈緒美に説明した。
「すまんすまん。桜子は、単語でしか喋れへんのや。」
「氷宮。煩い。」
何故か殺気を出して睨む。
それから逃げるように奈緒美の目の前のソファーに座る。
「おぉ〜。怖々。弥生奈緒美さんであっとる?」
「は、はい。」
「緊張せんでもええで。菜摘とは、どんな関係で?」
「私の憧れの人です!菜摘は、私のこと知らないと思いますけど・・・。」
「憧れなんや。」
「氷宮。本題。」
「せやね。」
涼斗は、給湯室へ行き紅茶を淹れ奈緒美に近いテーブルの上に置く。
そして、依頼は?と問う。
奈緒美は、静かに話し始めた。
「実は、最近噂になっているんですが・・・。学校でおかしなことが、起きているらしいんです。私のクラスでは、集団で体調不良を訴え、隣のクラスでは、トイレに閉じ込められたっていう生徒がクラスの半分くらいいるそうです。」
「君。それを霊的な仕業と言いたいの?」
「確か。その件でしたら、霊的ではなく、誰かのイタズラと噂されているはず。あと、集団食中毒。」
「実は、それだけでは無いのです。」
見てください、と言われて…_φ(・_・