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プロローグ

冒頭

この作品を、ケンカまでして、厳しく叱ってくれ、こんな私に優しく接してくれた、愛する一人の女性に捧げる


プロローグ

2009年 8月15日 午後12時10分

長崎県佐世保市内


佐世保市内のとある公園の駐車場で、若い一人の女性が、白い軽自動車の前で、自分の腕時計とにらめっこしながら辺りをキョロキョロと見回わしていた。

Tシャツ姿に長ヅボン、肩まで伸びている髪は結んでおらず、20代と思える顔付きは、苛立ちを見せていた。

「遅いな」

独り言を言っている彼女は、誰かと待ち合わせでもしているのだろう。

そんな事だった。駐車場の入り口付近から、若い女性2人が走ってきた。

2人ともTシャツに長ズボン姿で、旅行用のバックを持っており、1人髪を三つ編みにしていて、もう1人は髪をポニーテールしていた。

「ごめん美香、待った?」

髪を三つ編みにしている女性が、詫びるようにに言った。

「遅い2人とも、約束の時間を10分も過ぎているんだからね」

美香と呼ばれた彼女は、怒りながら言った。

髪を結んでいない女性は、大塚美香。髪を三つ編みにしている女性は、山下千春。髪をポニーテールにしている女性が、田川智子。この三人は、小学校の頃からの友人で、1泊2日の旅行に行くところだ。

行き先は、隣りの佐賀県。そこの有名な温泉に行く予定だ。

「荷物を乗せて、早く行きましょ」

美香が、車のトランクを開け、千春と智子がバックを乗せると、美香はトランクを閉めた。

美香は運転席、千春は、助席、智子は助席側の後部座席に座ると、「出発」と智子は喜びながら言った。

本当はもう1人の友人、杉田史子も一緒に行く予定だったが、急に仕事が入り、キャンセルとなった。

出発した車の中では、3人が楽しく会話をしていた。今回の旅行の事、それぞれの仕事の内容の事などで盛り上がっていた。

街を走っていた車は山に差し掛かった。美香は、車のスピードを落とし、いくつものカーブを曲がりながら登って行く。

10分ぐらい走っただろうか。登り道から平坦な道へ差し掛かった。

「なんか、寂しい道ね」

窓から見える景色を見た千春は言った。

千春の言う通り、周辺は森林だらけで、古い民家が数軒見えるぐらいだった。

「山道だからね。山の麓に降りれば、街に出るわよ」

美香が言った。

そんな時、後部座席に座っている智子は、窓から見える景色で、何かを発見したようだった

「美香、車止めて」

「えっ?」

「早く」

智子に言われた美香は、車のスピードを落とし、車をガードレールの横に止めた。

「どうしたの?」

驚いた千春は、助席から後ろを向き、智子に聞いた。

「今、学校らしき建物が見えて。こんな山奥に学校って、珍しいじゃない」

美香は、車から降りて辺りを見回した。

「あれ……かな?」

千春と智子も車を降りてみる。美香は、指でそこを差した。

先ほど通った道で、数メートル先に、学校らしき建物が見えた。

「こんな山に、学校?」

智子は、不思議そうに言った。

「ね、珍しいでしょ。今から、見に行ってみ ましょ」

昔から好奇心旺盛な千春は、興味津々に美香と智子に言った。

「私、怖いの苦手たから、2人だけで行ってね」

千春と正反対で、昔から怖がりの智子は、遠慮勝ちに言った。

「美香は、どうするの?」

「私は、行く」

千春の誘いに、美香は答えた。

「じゃあ、智子はここに残りね。私と美香は行くから」

美香と千春は、歩いて行った。

「ちょっと待ってよ、私も行く」

智子は、美香と千春の後を追った。

5分ぐらい歩いただろうか。3人の目の前に、校門であろう、高さ約2メートルの長方形の古いブロック塀が2つあり、古く錆びれてて、一部が壊れているている鉄のフェンスが回りを囲むようにあった。

「何、これ」

智子は、怯えるように言った。

「えっと……『佐世保市立飯塚中学校』と書かれてある」

千春は、古いブロックの塀の真ん中に、縦に刻まれてある字を読んだ。その文字は、黄ばんであり、一目見ただけで年代物だとわかった。

「かなり昔の、中学校かも。戦争時代とか」

校門から100メートル先ぐらいに、建物があった。4階建てで、戦時中に建てたにしては、珍しいプレハブ式だった。

「戦時中だったら、古い木造校舎で、2階建てでしょ。この校舎は、古いけど4階建てだし、プレハブ式の校舎だから、最近の校舎だろうと思うよ」

千春は言った。

「ねぇ、そんな事よりも私お腹空いた。山から降りて、昼食にしない?」

「私、賛成」

集合時間を優先し、昼食を摂っていない智子は、山を降りることを言うと、千春は智子の意見に賛成し、右手を上げた。

だが美香は、100メートル先の校舎を見つめ続けていた。

「ねぇ2人とも、学校の中から何か声がしなかった?」

美香の言葉に、意見が分からない千春と智子は、お互いの顔を見た。

「声って、どんな声?」

怯えて体がガクガク震えている智子は、美香に訪ねた。

「女の子……、5歳か6歳ぐらいの小さな女の子の声」

「私たちには聞こえないわ」

美香の意見に千春は答え、智子は千春の意見に同様するように首を縦に振った。

「確実に、聞こえる」

そう言うと美香は、学校の中へ1人で入って行った。残された2人は、数メートル遅れて、美香の後を追った。

「ちょっと、美香」

智子は、止めるように言ったが、美香は黙ったまま、入ってすぐ右へ曲がった。

隅のほうには、この学校の生徒たちが建てたであろう、卒業生のわ石碑がいくつもあり、美香はまっすぐ歩いて行った。

50メートルは歩いただろうか。美香はある場所で止まった。千春と智子も、美香から少し離れて止まった。

千春が美香の後ろから覗き込むように見ると、そこには何かを祀ってあるのだろう、小さな祠があった。古く、木造の小さな祠。

「この祠が、どうかしたの?」

千春は美香に尋ねたが、美香は千春の言葉を無視し、祠の扉を開けた。

中には、約15センチの女の子の顔が書いてあるこけしが入っていた。

「こ、こけし……?」

智子がそう言うと、美香は黙ってそれを手に持った。

「ちょっ……と」

千春と智子の2人が驚いていると、美香は黙ったまま、それを女性とは思えない力で、両手で壊した。

「美香!」

千春の大きな声で我に返った美香は、自分が手に持っている物を見た。

「私……、何これ?」

驚いた美香は、こけしを地面に落とした。

「美香、覚えてないの?」

智子の言葉に、美香2人を見た。

「私、一体何を……」

美香が話している途中、青空だった空が急に暗くなり、雨が降ってきた。

「雨? 早く行きましょ」

美香が2人に言うと、3人は校門まで走って行った。小雨がだんだん大雨と変わり、雷までなりはじめた。

3人の後ろで、祠が黄色く光りはじめた。全速力で走る3人は、全くそれに気付く事なく、校門を出ようとした。

そんな時、祠の中から手が出てきて、走る3人を掴み、祠の中へ引き込んだ。

そこに誰もいなくなって、静まりかえった時、祠の扉が自動で閉まった。

酷くなっている雷が止まると、大雨が上がり、再び晴天の空へ戻っていった。

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