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1-3  俺の杖が手に入る!


 学院長室を後にした俺とソフィアは、とりあえず魔法学校の近くにあるという小さな街へとやってきていた。

 魔法学院の生徒として生活していくには、制服や教科書などの必要な道具を揃えなければいけないからだ。


 街の建物は石作りやレンガの建物ばかりで、ヨーロッパへ旅行に来た気分みたいである。そんな街の馬車や馬などが行き交う道を、ソフィアと2人で歩いている。



「えーと、まず制服からね」



 ソフィアに連れられて、俺は洋服店にやってきた。


 店内に入ると、中は甲冑、鎧、ドレス、チュニックなどの服がたくさん展示してあった。よくファンタジー系のアニメや漫画・ゲームに出てくるキャラクターが着ていそうな服ばかりである。

 それに対し、パーカーやジーンズなどの現代的な服装モノは1つも見当たらなかった。当たり前か。



「男子の制服は黒のズボンと白のシャツ、そして黒のマント … よし、あったわ」



 ソフィアは棚に並べられた商品を手に取り、俺へと手渡してくる。



「あと … 一応、冬用のズボンとブレザー、セーターも買っておいた方がいいわね。ちなみにあんた、セーターは何色がいい?」



 どうやらセーターの色は、紺・グレー・白・黒・ピンク・ベージュの6種類があるらしい。



「うーん、紺でいいわ」


「そう」



 やがて必要な制服はすべてそろったようで、その内ソフィアは白のシャツとズボンとマントを俺へと手渡してきた。



「これが男子の夏用制服よ。ほら、早速着替えて」


「ええっ … 今着替えるのか?」


「当たり前じゃない! あなたはもう、オスリビア魔法師養成学院の生徒になったんだから。ほらほら、その薄汚れた変わった服なんか脱いで着替えなさい」



 俺が今着ているパーカーのことを、薄汚れた変わった服だと?

 くっ … まぁ、いいや。



「はいはい、分かりましたよ」







 とりあえず魔法学院の制服に着替えた俺は、ソフィアと共に次の店にやってきていた。



「ソフィア、この店は?」


「ここは魔法の杖を売ってる店よ。魔法使いにとって、無くてはならない必需品

ね」



 魔法の杖か。

 今まで映画やアニメの中でしか見かけなかった魔法の杖が、今手に入るという事か。楽しみだな。



「 … っで、どれを選べばいいんだろう?」



 店内にはズラリと魔法の杖が並んでいる。

 どれだけ並んでいるかと言えば、図書館の本みたいに杖がぎっしりと棚に並べられており、軽く1000は超えてるだろう。

 これではどれを選べばいいのか分からない。



「ユウキは火系統サラマンダーだったからぁ、火系統専用の杖を選んだらいいと思うわ」


「ん? 魔法の杖にも系統があるの? どれも一緒じゃないのか?」


「全然違うわ。そもそもあなたは魔法について何も知らないのね」


「まぁ、魔法がない世界から来たからなぁ … 」



 ソフィアは呆れたように溜息をつくと、ご丁寧にも説明してくれた。



「魔法を使うには一般的に2種類の方法があるの。1つ目は自分の身体の中にある魔力だけを使う方法。2つ目は魔法石の力を借りて自分の魔力を増幅させる方法よ」


「魔力はなんとなく聞いたことあるけど、魔法石は知らないなぁ」


「魔法石って言うのはね、炎石えんせき水石すいせき風石ふうせき地石じせき光石こうせき という5つの魔力が宿った石のことなの。主に魔法の杖に装着して使うモノなんだけど … ほら、これよ」



 そう言ってソフィアがマントの下から取り出した各5つの杖には、赤・青・水・茶・白の宝石みたいなモノがそれぞれ付いている。



「ということは、とりあえず俺は赤色の魔法石が付いた杖を選べばいいんだな?」


「そういうことよ」



 よーし、じゃあどれを選ぼうか。

 魔法の杖というものは自分の相棒みたいなモノだ。そのため慎重に選ばないとな。

 それにしても … 赤色の宝石が付いた杖って言っても、結構な数があるぞ。



「ソフィア、やっぱり俺には分かんないわ。選んで」


「魔法の杖くらい、自分で選びなさいよ」



 こうなったら、店の人に聞いてみよう。


 仕方なく俺は、店のカウンターにいるおじさんに尋ねてみることにした。



「あの、すみません」


「ん? おおっ、黒髪の珍しいお客さんだね。杖をお探しかい?」


「そうです。オススメの杖ってありますか? ちなみに俺は火系統の魔法使い見習いです」



 俺の質問に、笑顔が印象的な店のおじさんは優しく答えてくれた。



「火系統ならこれならどうだい? 南を司る霊獣:朱雀の羽で作られた … 」


「おおっ!! 朱雀って、確か四神の1体というあの朱雀!? すげー!」


「 … のレプリカの杖だけどね!!」


「レプリカかい!!」



 何だよ、てっきり本物かと思ったわ。

 朱雀という生き物が実在するということを、肌で感じれるチャンスだったのに。



「悪いね。数年前まではあったんだけど、誰かが買ってしまったんだよ。その子は … とても魅力的な少女だったな。左右異なる色の目を持つ … 」



 それって・・・



「あの … その人って、あの女の子のことですか?」



 俺が入口付近で立っているソフィアを指さすと、店のおじさんは「おおっ!!」と大きく声を上げた。



「まさにあの子だよ! いや~、あの子のことは良く覚えてるなぁ~。朱雀の羽で作られた杖だけじゃなく、玄武・青竜・白虎・黄竜の体の一部で作られた杖も、同時に買ってくれたからなぁ。いやぁ~、すごいすごい」



 そんな伝説の生き物で作られた杖ってことは、さぞかしお値段も高いでしょうね。ソフィアってお金持ちなんだな。



「君、あの少女の知り合いかい?」


「えーと、まぁ、そんなところですかね」


「あの少女は一体何者なんだい? 君、あの子と知り合いなんだから、何か知っ

てるんじゃないかい?」


「い、いえ、知り合いと言いましても … 今日出会ったばかりなんです」



 ていうか、そもそも俺はこの世界の人間じゃないんです。三次元という世界から来たんです。

 やはり、あのソフィアという少女はただ者ではなさそうだ。

 おっと、それより早く杖を買わなきゃ。



「おじさん、他にお勧めの杖とか … 」


「そうだね … ちなみに君の誕生月はなんだい?」


「4月です」


「4の月だね? なら、これを使うといいよ」



 次におじさんが手渡してきたのは、高級感溢れるツルツルとした表面を持つ杖だった。先端に紅い宝石みたいな石が付いており、とにかく綺麗な杖である。



「これはハンノキという木でできた杖だよ。芯はユニコーンの尾でできている」



 杖を選ぶ基準が俺には分からないので、もうこれでいいや。



「それでお願いします」


「まいどあり。値段は金貨1200マクです」



 おいおい … 金貨1200マクっていくらか分かんねぇよ。高いのか? 安いのか?

 一応、ソフィアから手渡されたお金が入った袋を適当に渡すと、



「わおっ … 君、お金持ちだね~」



 と言い、その袋から金貨を数十枚取っていった。

 よし、とりあえず杖は購入っと! おおっ、俺の杖だ! 魔法の杖だ!


 俺は手渡された杖を大事に抱え、ソフィアの元へと駆け寄った。



「ほら、ちゃんと魔法の杖を買ったぞ!」


「良かったじゃない。じゃぁ、そろそろ寮に帰りましょう」


「えっ … もう帰るのか? もっといろんな店をまわりたいな」



 しかし、ソフィアは赤と青の瞳を店の外へと向けながら、こう言った。



「今日はやめておいたほうがいいわ」


「何で?」


「だって危険だから」



 危険? 一体、何が危険なんだ?

 そう疑問に思っていると、突如、店の外からカンカンカン!という鐘の音が聞こえてきた。

 すると店のおじさんが少し慌てた様子でウロウロし始める。



「はいはい、今日はもう店を閉めるよ。お客さんは早くウチに帰った帰った!」



 おじさんの呼びかけに応じて、客たちは店から出で行こうとする。



「なぁ、ソフィア。何かあったの?」


「いいから、あたし達も帰りましょ。説明は後からするから」



 俺はソフィアに腕を掴まれて、店の外に連れて行かれた。


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