5月19日の日記
久しぶりの更新です。放置多すぎぃ!
会話文多め+ちょっとキャラ忘れてますけど気にせんでください!
『5月19日 晴れ
今日の気分を一言で言い表すのなら《憂鬱》。まさにこれだった。
いやだって高校生の女の子に「すまんけど家帰れないよ」って伝えなくちゃならなかったんだよ。
そりゃ憂鬱にもなるわ 』
《護衛騎士の日記より抜粋》
「はぁ……」
「あら? ユウキ君どうしたの? 朝からため息なんて吐いて」
清々しい朝に重々しいため息を盛大に吐いていると通りかかったタリアさんに話しかけられた。
「ああ、タリアさん。 これから綾ちゃんに色々説明しなくちゃいけないんですよ」
「あの事ね? ごめんなさいね、私から説明できれば良かったのだけれど……」
「タリアさんが謝ることじゃありませんよ。 同郷の俺が説明した方が納得もしやすいでしょうし」
そう、今日はこれから急に知らない世界に来て混乱しているであろう新人トリッパーの綾ちゃんに色々説明しなければならないのだ。
それ自体が嫌というわけではないのだが言いづらいことも言わなきゃならないのでちょっとなー、という気分なのだ。
「ま、説明しなきゃいけないことですし腹くくってやりますよ」
「ふふ、その意気よ。 さ、陛下も待っていらっしゃるから行ってきなさい」
陛下待機済みなの!?はや!いやたしかに昨日
「じゃあ早く行かないと陛下拗ねますね。 行ってきます!」
「はいはい、行ってらっしゃい。 アヤちゃんは部屋にいるから何時行っても大丈夫よ」
執務室に行くとタリアさんが言ってた通り陛下がそわそわしながら待っていた。
陛下の様子に一瞬面食らったものの気を取り直して執務室に足を踏み入れた。
「む、来たか」
「なんでそんな準備万端なんですか。 先に言っときますけど良く考えたら説明は陛下がいるとややこしくなるんで来ちゃダメですよ?」
緊張でガチガチになって説明が一切頭の中に入らなかったとか正直笑えないのだ。二度手間は嫌い。
「そうなのか……」
ショボンとすんな!いい年した大人が!
「はあ……説明が終わった後に話せる時間が取れるようにしますから待っててください」
逸る陛下を抑え綾ちゃんの部屋の前にきた。なんかこっそり陛下が後ろからついてきているがあえて頭から除外しておく。まあその後ろに護衛付いてこさせてるし大丈夫だろう。
部屋のドアをノックすると返事がすぐに返ってきて部屋のドアが開かれた。
「あ、 昨日のお兄さん。 おはようごさいます」
「おはよう。 昨日は眠れたかな? 昨日の言った通り説明しに来たんだけど今大丈夫?」
「大丈夫です。 入ってください」
部屋に入った俺は綾ちゃんに椅子に座るように勧め、その後俺も綾ちゃんと向かい合うように椅子に座った。
「まずは自己紹介からだね。 俺は浅野結城。 この国で王様の護衛隊長をやってるんだ」
「早瀬綾です。 高校生で星原学園の三年生やってます」
「星原学園? うーん、聞いたことあるような……」
「知りませんか? 何年か前から注目されている進学校で―――」
しばらく元の世界のことを語り合い、空気がやわらかくなった辺りで話を切り出した。
「それで話っていうのは綾ちゃんの今後のことなんだけど」
「私の今後……ですか?」
途端に綾ちゃんの顔が曇った。これはもしかしたらすでに気づいているのかもしれない。
「もう何となく予想していたかもしれないけど俺達に君を元の世界に戻すことはできない」
「やっぱりですか……」
まあそんな方法があったらたぶん俺ここにいないだろうしね。
「そもそもこの世界に魔法とか無いからね。 帰る方法なんて検討もつかないんだ」
「え? 魔法ないんですか? あれ? でもあの時いた人たちは召喚したって言ってて……あれ?」
うん、混乱するよね。あいつら思い込みで発言するからもれなく現実と妄想の区別がついてないんだよな。
「あーうん、それなんだけどね? たぶんだけどあいつらが召喚したんじゃなくてあいつらが召喚の真似事をしたタイミングと綾ちゃんがトリップした時のタイミングがたまたま合っちゃっただけじゃないかと……ね」
「えー、なにその奇跡ぃ……」
要らん奇跡だよね。ま、それ踏まえても神殿の連中が誘拐企てたことには変わらんからあいつらの罪は変わらないんだけどね。
「話戻すね。 それで綾ちゃんがこっちで暮らしていくためにはどうしても必要なものがあるんだよ」
「それってなんですか?」
「戸籍。 最低でも身分保証がないと仕事に付くことさえできないんだよ」
予想外の答えだったのか綾ちゃんは間の抜けた顔をしている。気持ちはわかる。俺も来たばっかりの時はもうちょっとその辺ふわふわしてるもんだと思ってたし。
懐かしい気持ちに浸っていると綾ちゃんはがっくりと頭を落とした。
「わー生々しい。 異世界トリップしてこんな生々しい話されるとは思わなかったなぁ」
「ファンタジーな世界でもそこに営みがある以上ね……。うちの国は特にその辺しっかりしてるから」
気を取り直して話を続行する。
「それでその戸籍を手にいれるにはどうしたらいいんですか?」
「それなんだけどね、綾ちゃんは俺の妹になってもらう」
「はい!? い、妹ですか?」
「うん。 それが一番手っ取り早いんだよ」
「えと、それってどういうこと?」
やましいことじゃないから距離をとらないでお願い。
「簡単に言えば『どこの奴とも知れないのがいるんだけど戸籍作って』よりも『故郷から妹が来たんだけどこっちで暮らしたいらしいから戸籍作って』の方が」
「な、なるほど」
よかった、納得してくれたか。同郷の人に距離とられるのって地味に傷つくことを実感したからほんとよかった。
「それで、いいかな?」
「はい、そういうことなら……」
ふう、これで一番大事な件は片付いたな。よかったよかった。
「よし! じゃあ今から俺のことを兄と呼ぶように!」
「ええっ!? なんでですか!?」
「なんでって、当たり前のことを聞かないでよ。 それと敬語も禁止ね」
まったく、どこの世界に兄のことを名前+さん付けで呼ぶ妹がいるというのか。いたとしてもそれ確実に兄妹仲悪いだろ。
何故か何度か深呼吸をして気持ちを落ち着かせた綾ちゃんは意を決した表情で口を開いた。
「えっと、お兄……ちゃん?」
「ん、ベネ(良し)! それでいい。 あと俺も綾って呼ばせて貰うから」
「は、はい。 じゃなかった、うん」
その後、慣れるためにしばらく話をしていたのだがそこで陛下を待たせていることを思い出した。
ん?王様の扱いが悪くないかって?まさか。そんなことはない。
でもずっと待たせるのもあれなのでそろそろ呼ぶか。
最後に綾にあるお願いをしておく。
「お願いなんだけど出来ればさ、陛下の話し相手になってくれないかな?」
「わ、私が!?」
「王様って孤独だからさ、そういうの気にしないで話せる人がいればきっと喜ぶと思うんだよね」
これは事実である。王というのは国のトップであるが故に対等な人がいない、いても気軽に付き合えない、といったボッチルート直通の職業なのだ。
「うん! ちょっと不安だけどそういうことならやらせてもらうわ!」
いやそこまで気合入れんでもいいんだけど……まあいいか、やる気があるにこしたことはない。
「それはよかった。 じゃあ陛下、入ってきていいですよー」
「え?」
ガチャリと扉が開き部屋に入ってきたのは陛下。そう、わが国の王ファリード王である。
「なななななんで王様が!?」
「む、ユウキから聞いていなかったか? 話を聞きに行くと伝えてくれと言っておいたのだが」
「いや、でもっ、まさかこんなに早く話すことになるとは思わなくって!」
おー、すげえ慌てっぷり。見てて面白いわ。
さて、出来たばかりの妹を突き放すようで悪いがそろそろ俺は退室させてもらうか。
「じゃあ、俺やらなきゃいけない案件あるんで失礼しますね。 護衛は外にいる奴に引き継ぎさせるんでちゃんと連れてってください」
「うむ」
「え、ちょっとユウキさん!? じゃなかった、お兄ちゃん待って! 一人にしないで!」
「陛下がいるでしょ? じゃ、ごゆっくり」
扉を閉める直前「王様と二人っきりにしないでって意味なのぉぉぉぉぉ!」って聞こえた気がするけど二人が仲良くなれるようにあえて心を鬼にする。けっして面白いからではない。
部屋の外で部下の一人に続けて陛下の護衛を命じると同じく扉の前で待っていたリーズを連れ、廊下を歩く。
部屋から十分離れ、周りに誰もいないことを確認するとリーズが口を開いた。
「―――それで彼女を後宮入りさせるのですか?」
「いや後宮入りするかどうかは本人達次第だ。 陛下があの子を口説き落とせれば後宮入りするだろうし、出来なければその後の身の振り方を考えてやらなきゃならない」
ぶっちゃけ口説き落とせなかった場合の対処の方が楽なんだよね。言わんけど。
「それより目下の問題は誰が綾ちゃ――綾の護衛をするかだ」
これが地味に問題だったりする。
今は貴賓扱いなので信頼できる者なら誰でも可能だが、もし後宮入りとなると男ではなく女の護衛が必要になるのだ。
まあ、一応心当たりはあるのだが。それでもいろいろめんどくさいことになるのは代わらない。
「私がやりましょうか?」
「駄目だ。 リーズに抜けられると俺がつらい」
主に俺の仕事量がやばいことになるじゃないか。そしたら忙しすぎて陛下放置することになるからそれはダメ。
「では誰が……?」
「一人いるだろう? 適任な奴が」
「彼女ですか? ですが彼女は……」
「あーーーーっ!」
その時、廊下に声が響いた。その声の主はちょうど話に出てきた彼女の声で……こういうの何て言うんだっけ?噂をすれば影?
「センパイじゃないっスか! やー、お久しぶりぶりっス!」
「セラフィナか。 ちょうどお前の話をしていたところだ」
「アタシの話ってなに話してたんスか~? あ、もしかして……うへへ…」
目の前で気持ち悪い笑い声をもらしだした女の名前はセラフィナ。非常に珍しい平民上がりの女騎士で俺の元部下である。
「悪いですが仕事の話ですよセラフィナ。 ……それとそのような気持ちの悪い笑みを浮かべていては嫁の貰い手なんて現れませんよ」
「言うじゃないっスかリーズ。 ずっと側にいるくせにアプローチのひとつもかけられないヘタレが。 あとアタシは婿貰うつもりッスからそんなん現れなくていいッス」
何故かこの二人は顔を合わせる度にこうなる。そのくせたまに二人で飲みに行くというのだから意味がわからない。まあ喧嘩友達といったところだろうか。
「はいはい二人ともそこまで。仕事の話が先だ」
「そっスね。 で、その仕事ってなんスか? 察するにアタシに任せたいことみたいッスけど」
「そのとおりだ。 セラフィナ、お前にはある人物の護衛を頼みたい」
「護衛? わざわざアタシに頼むってことは訳ありっスか?」
「ああ。 それはな―――」
そういうわけでセラフィナに事の経緯を話した。
「ほえー、そんなことがあったんスか。 ったくあいつらは相変わらずろくなことしないっスねー」
神殿関係者に対する一般の人の評価はこんなもんである。あいつらにも例外はいることはいるのだがそれ以外のキ○○イが多すぎるのだ。
「ま、そーゆーことなら引き受けるっスよ。 センパイのためならえんやこらっス」
「はは、頼もしいな。 それとお前の今の上官はヒースクリフ殿だったな」
「そっス」
「彼には俺から話しておこう。 リーズ、セラフィナを綾のところへ。 タイミングは見計らえよ?」
「お任せを」
リーズは静かに頭を下げ、セラフィナは「がんばるっスよ~」と拳を掲げるのだった。
堅物のリーズよりもセラフィナみたいに軽い性格のほうが綾も気後れしないよね、とか考えて護衛決めたとは言えないね。
「アヤちゃんってどんな子っスか?」「お前よりもずっと良い子だ」と話しながら綾の部屋に向かう二人を見送ると俺はヒースクリフ殿のところにセラフィナに仕事を命じたことを伝えにいくのだった。
『幸いにしてヒースクリフ殿もセラフィナの扱いに悩んでいたようだったので特に問題もなく彼女は俺の部下になった。いや戻ったというべきか。
まあ平民出身の女騎士ってこの国に二人しかいないからヒースクリフ殿が扱いに困るのもわかる気がするけど。男と同じように扱っていいのかその辺がわかりづらいし。
それはともかく綾の身分保障のあてもできたし後はクリフに戸籍を作ってもらうだけだ。これであの子が路頭に迷うことはないだろう。
あ、ついでにあいつと飲むのもいいかもしれない。これから忙しくなるんだからその前に、ね』
《護衛騎士の日記より抜粋》
自分のほかの作品とセルフコラボしてみました。誰得だよ。
そうだ、次に更新するときに簡単な人物紹介作ろう。そうすれば設定忘れずに済む。