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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

年下の隣人〜俺の貞操危機一髪!〜

作者: のり

 ――品がないにも程がある!

 眩しいぐらいにギラギラと太陽が照りつける真夏の昼時。俺は心の中、目一杯の声で叫んだ。

「なー悦さん、いいだろ? たまにはさー」

「何がたまにはだよ。毎度毎度迫って来やがって……このスケベ野郎」

 ぐいぐいと顔を近づけて迫り来る男の脚を遠慮なしに蹴飛ばす。

「たくよー。なんて冷たい男だ」

「冷たくない。お前が悪い」

 冷たい男だなんて言われる筋合いはない。何故なら、目の前の男、眞知拓真は冷たい態度をとられても当然の言動を繰り返しているからだ。よって、俺はこいつに怒鳴る権利がある。ついでに蹴飛ばす権利もある。誰が決めたって、俺が決めた。

「いいじゃん、ケチケチしないでさー。減るもんじゃなし」

「減るわボケ! お前嫌われるとか考えねーのかよ! 男にやらせてくれなんて言われてはいどうぞ、なんて身体捧げる男なんてそうそういねぇっての!」

 俺の言葉にえ、そうかな? と、真剣な顔で首を傾げる拓真に、青筋をたててますます怒りのバロメーターを上げていった。

 そう、そうなのだ。この男はいわゆるバイセクシャル。両性愛者。両刀。男も女も美味しくいただけてしまうこいつは、隣人である俺に「長谷川さんの顔好み。セックスさせて」などと言ってきやがった。あろうことか、初対面した日にだ。

 最初はわけがわからなかったが、笑えない冗談を言うアホな大学生が来てしまったものだと苦く笑いながらお断りしていた。しかし、大概しつこいこの男は、半年経った今でも俺に迫ってきている。まだ二年目と言えど俺は社会人である。それなのに、三つも年下の男に日常をかき乱されているのだ。

 ここで、もう一度言っておこう。よって、俺はこいつに怒鳴る権利がある。ついでに蹴飛ばす権利もある。

「たく……俺じゃなくたってお前に寄ってくる奴はいっぱいいるだろ。女でも男でも」

「俺はー、悦さんがいいんだよ。顔とか超好み。可愛い」

「また顔かよ。ていうか俺がいいとか嘘だろ。毎晩毎晩違う奴連れてるくせに」

「ありゃ、バレてた?」

 バレるも何も、あんなに声上げられたんじゃ嫌でもわかるっての。毎晩あんあん聞きたくもない声が聞こえてくるんだからいい迷惑だ。しかし、不幸中の幸いか。こいつの部屋が一番端でよかった。犠牲者は俺だけで済む。

「あいつらはさ、お互い納得済みのセフレ。悦さんやらせてくんねーんだもん。自分で自分慰めんのにも限界がある」

「よくそんなことつらつら言えるなお前! 大学生だろ! まだ一年生だろ! 不純交遊してんじゃねーよ! ていうか俺のせいでもない!」

 耐えきれず、吐き出したかった言葉を全てぶつけた。が、ぶつけられた当の本人はえー、だのうー、だの唸りながら再び俺との距離を縮めようとした。

「ちょ、近寄んな!」

「嫌だね。寄る」

「てめ……、年上なめんなよ……!」

「なめてないよ。ただ……」

 瞬間、ガッ、と強く左腕を掴まれた。

「なんだよ……」

「なんだかんだ、こうやって部屋に入れてくれてるわけだから……手ぇ出してもいいってことだろ?」

「……お前はこの半年何を聞いてたんだ……? い、や、だ、て言ってきただろうが! このクソ暑い日に余計イライラさせんな!」

「いって……!」

 あまりに勝手な言動を繰り出す拓真の脚目掛けて再び、今度はさっきよりも強く蹴りを入れてやると、よほど痛かったのだろう。そいつはパッと俺の腕を解放し、蹴られた部位を両手でさすった。

 しかし、俺はそんな光景などお構いなしに言葉を続ける。

「今日は久々にゆっくり休める日なんだよ。お前は夏休みだろうが俺には久々の休みなんだよ。貴重な時間邪魔すんな!」

「だーかーらー。その貴重な時間で気持ちいいことしようって。な?」

 な? じゃねぇよバカかこいつ。お前の貴重な時間はイコールセックスなのか? どんだけ性欲強いんだよ。こいつのセフレ達もよくやってるな。

 次々吐露される拓真の性への忠実な欲求に呆れた俺は、ガックリと肩を落とした。

「……ほんと、お前顔しかいいとこねーな……」

「うわっ、ひでー! 今ので傷ついたから慰謝料としてやらせて」

「お前マジで最低だな!」

「だーいじょうぶ。ケツでも気持ち良くなれるって。俺さ、悦さんって実は淫乱な気がすんだよな」

「ケツ言うな! 勝手に決めつけんな! 話聞け! 触んじゃねーっ!!」

 そうして俺は自らの貞操を守るべく、今日何度目か知れない怒りの蹴りを目の前のド変態で生意気な年下の隣人に喰らわせてやった。

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