オタク勇者VSオネエ大魔王
ドM勇者、ナルシスト勇者に続く
「VSオネエ大魔王」三作目です。
女王サディは、ナルシスト勇者ナルスィーがやられる前から、また新たな勇者を探させていた。
しかし、勇者は簡単に見つかるものではない。
一日経っても勇者が見つからないのは当然だ。
早くしないと、オネエ大魔王『イ=ヤーン』にサディス王国も奪われてしまう。
サディが頭を抱えていると、一人の兵士が玉座の間に入ってきた。
「サディ様、新しい勇者が見つかりました」
「……呼んでこい」
サディは期待していない。
嫌な予感しかしないのだ。
「女王様はこちらで待っています」
兵士の声と同時に入ってきたのは、暗そうな男だった。
前髪が鼻ぐらいの長さで、眼鏡をしている。
「これが女王様ですか? うわっ出オチだ」
「これ、とはなんだ」
「普通にSMですね、ワロス」
勇者は笑っている。
サディはいつもの癖で鞭に手を伸ばす。
「僕の名はオタッキーって言います。好きな武器は……軍が使っていた……式の拳銃です」
そう言ってオタッキーは玩具の拳銃を取り出す。
「これいくらしたと思ってますか? 僕の全財産の半分は使いましたよ」
サディからすれば銃は全て同じにしか見えない。
「阿呆か。何故この玩具にそんな大金をかける」
「好きなものにお金をかけて何が悪いんですか」
サディはいらついて鞭を振るう。
だが、オタッキーはかわした。
「ちょっおまっ……そんな格好でさらに鞭まで持ってるとかマジ腹筋崩壊なんですけど」
「うるさい! さっさと戦って死ねっ!」
「これはひどい。これが現実じゃなかったらwを十個ぐらいコメントしますよ」
「は?」
「知らないんですね。クッソワロス」
オタッキーは鞭の攻撃をかわしながら話す。
「意味不明な言葉ばかり喋りやがって! 早く行け!」
「断る! ……なんちゃって」
鞭の攻撃をかわせるのは今までの勇者以上だが、やはり期待はできない。
「僕の友達はこのサキちゃんだけです」
草原でオタッキーは携帯ゲーム機を取り出す。
画面には女の子が微笑んでいる。
『がんばって、オタッキーくん!』
「きみのためにがんばりますよ」
オタッキーがゲームをしまうと、
「あら、アタシより可愛い女なんて認めないわよぉ」
どこからか現れた魔王が後ろから話しかける。
「うわっ本当にオネエですねイ=ヤーンって」
「ゲームに話しかけるなんてバカみたい」
「僕のサキちゃんになんてことを言うんですか!」
怒ったオタッキーは本物の銃を魔王に向けて撃つ。
だが、弾丸は魔王には当たらずに透けていく。
「アタシの好みじゃないわアンタ!」
魔王は雷を落とす。
「ちょっ!」
それを間一髪かわしたオタッキーは、
「マジ無理!勇者からチキンになりそうです!」
と言って走って逃げる。
「アタシの好みの勇者はこないのかしら! そう、もっとガチムチなのをね」
平原に、魔王の声がこだました。