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第7話

僕は授業中、頬杖をついて窓の外を眺めていた。昼間の明るいグランドで、一年生がサッカーをしている。あっちこっちへ転がり回るボールを目で追い、昨日の出来事を思い出す。

軽音部に入るかどうかなんて、そんなのもちろん入らないに決まってる。…決まってるんだ。僕にはギターの才能がない。それに、今更部活へ入ったところで何になるって言うんだ?

ふいに、先輩の言葉が頭の奥で小さく声を上げた。

「文化祭もあと一回残ってるぞ。」

目を閉じると、まぶたの裏に去年の光景が浮かんだ。カラフルな照明、沸き立つ体育館、その中心である舞台の上で思いのまま楽器を弾く軽音部。僕はあの時、体育館の後ろの席でその姿を見ていた。…もし、僕もあそこへ立てたら。高い舞台の上から熱気に包まれた体育館を見渡して、腕の中のギターを響かせる。

チャイムが鳴り、目を開ける。先生が授業の終了を告げ、教室が一気に騒がしくなった。僕もノートを閉じてカバンの中へ押し込んだ。

今日、先輩の所へ行くかどうか僕は迷っていた。あんなふうに帰った手前、顔を合わせづらかった。重い足のまま部室の近くへ行く。まだ部員が活動しており、さまざまな音楽が聞こえた。その音を聞きながら数分立ち止まって、結局僕はカバンを持って校舎を出た。正門を通る時、校舎からはまだかすかに楽器の音が聞こえていた。


その翌日、今日は雨。ぶあつい雲が空一面を覆い、学校全体が暗い色に包まれている。

いつもの放課後、廊下に人が一人もいなくなり、僕は軽音部の部室の前へ立った。他の教室と同じ筈なのに、この扉だけやけに冷たく重い雰囲気をかもし出していた。音を立てないよう、無意識にゆっくりと手をスライドさせた。

教室の奥、窓際の椅子に先輩は座っていた。その姿を見て小さく心臓が跳ねる。僕が扉の前で固まっていると、先輩がこっちを見た。目を見開いたあと、ふっと息を吐いて笑った。

「よお、来てくれたのか?今日もギターするか」

その嬉しそうな声色に、僕の心に罪悪感の波が押し寄せた。何も言えず突っ立っていると、先輩が手招きする。僕は誘われるまま部室へ入り、ドアを閉める。そのままゆっくりと歩いて先輩の前へ立った。

「おとといは悪かったな。お前にしつこくせまっちまってさ」

僕を見上げて来るその目に、喉の奥が詰まる。

「そんな、全然気にしてないです。僕こそ、あんな風に帰っちゃって…」

うつむいて足元を見つめた。こんな時、すぐに言葉が出てこない自分が嫌だ。先輩は何も悪いことをしていないのに謝らせてしまった。

「じゃあまあ…お互い気にしなかったってことで」

静かな声が部屋に響き、ホッとして肩の力が抜ける。「そうですね」と頷くと、部室の空気が少し温かくなった気がした。

先輩が窓枠に肘をついてガラスの外を見る。僕も壁に寄りかかった。

「…なあ俺、お前に聞いてほしい話があるんだけど、いいか?」

さっきよりも真剣な声色に、再び体が緊張する。先輩に顔を向けるが、彼は空っぽのグラウンドを見つめるだけだ。だけどどこか寂しそうで、じっと僕の返事を待っているのが分かった。

「いいですよ」

そう一言返して、僕は先輩が話し始めるのを待った。

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