if戦記 日米海戦
※本作はフィクションです。実在の法律・人物・団体とは一切関係ありません。
1944年6月
押寄せる米軍を撃滅すべく、残存戦力をかき集め、ここマリアナ沖で一大決戦に臨む、我らが大日本帝国海軍機動部隊。
何故か小沢治三郎中将に代わり、艦隊司令官を拝命した俺。階級は中尉だ。
同じ『中』だから良いらしい。酷い。
「なあ、参謀君。」
「なんでありましょうか、司令官殿」
「ごめんねー、俺より階級めっちゃ上なのに気を遣わせて…。
で、此度の海戦、勝てると思うか?」
「こういう時に、正直に回答できない空気を出すのは、わが国の悪いところであります」
「うん、答え言っちゃってるね。良いよ、正直に言っても。
まあ、勝てるわけないよね。
数だけでも2倍以上差があるのに、
飛行機の性能一つとっても、赤とんぼとオニヤンマくらい違うしね。」
「オニヤンマはどっちでありますか、司令官殿?」
「辛辣ぅ〜。
言葉遣い丁寧なだけで、俺より毒吐く〜。」
「司令官殿、本土の司令部は何と?」
「精神力で必ず勝てる、とさ。」
「精神力をやたら押しつける輩は、精神が弱いであります。司令官殿。」
「それな。」
「それにしても、どうしようかねぇ〜。
一応、小沢さんからは必勝の作戦を教えてもらってるんだけどね。
アウトレンジ作戦って言っ「却下であります!!」辛辣ぅ〜。」
「…まあね、あんなんで勝てるわけないよね。
あ〜…当たって砕けるしかないのかなぁ」チラッ
「嫌であります。小官は死にたくないであります。本土に戻ってのんびりしたいであります。なんならさっさと降伏して惰眠を貪りたいであります。」
「正直に回答できない空気云々どこいったの!?
…でもまあ、君がそう言ってくれると助かるよ。
一応策はあるんだ。君がマトモな軍人なら絶対却下されるような、しかし乾坤一擲の策が。
多分、それを実現させるために、神様が俺をここに遣わせたんじゃないかと思うくらいだ。
ということで、任せてもらえるかな?」
「ここまで来たら一蓮托生。頼りにしてるぞ中尉!…であります。」
「階級差で圧かけてくるの止めて。」
【海戦当日】
『敵が混乱しています!攻撃してきません!!』
「やったぜ。」
「お前ほんとにやりやがったな〜、であります司令官殿。」
「階級差で圧かけてくるのほんと止めて。
…まあそれにしても大成功だな。
【すべての艦艇、艦載機に歴代大統領の肖像画をデカデカと描く作戦】。」
「うむ。下手に身分があると、こういう事は思いつかんし、実行にも移せん。流石は中尉司令官!!」
「もう取り繕うことも止めたね、参謀君…。」
『敵艦隊、退散していきます!』
「わ~い!バーカバーカ。もう来るんじゃねーぞ〜」
「ワッハッハ」
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【次の日】
『敵艦隊、現れました。…大変です!
敵艦隊の艦艇、艦載機に【明治帝、大正帝、及び今上陛下のご尊顔】が!!!』
「「デスヨネ〜」」
「そうだよね〜同じ事するよね〜。俺でも逆ならそうするもん。」
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「膠着状態に陥ってから早や数時間。おい、どうする…でありますか?」
「まあ、これも想定内だよ。あとはあっちが乗ってくるかだけど…。
そろそろ頃合いかな。このまま睨み合っててもしょうがないし…
ねえ、そこの電信係さん。ちょっと向こうの司令官に打電して。
『なんかごめん』って。」
『ハッ!………
………返信来ました!【ナイスジョーク】、以上!』
「ほ〜ら、あっちも乗ってきてくれた。さあ帰ろう。
総員!!帰投して本土に近づいたら、全力で落書きを消すこと!そしてこの事は絶対誰にも喋らないこと!
良いね!
じゃあ、全速でここから離脱!!遅れるなー!!」
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後にこの海戦は、『史上最大規模の戦力が集結したにも関わらず、戦闘が回避された不可解すぎる戦い』として、【日米謎のダブルターン】と呼ばれ、多くの人が謎の解明に挑んだ
しかし、関係者はこの事になると皆ニヤニヤするだけで決して口を割らず、真相は闇に葬り去られたという。
かの敵司令官、レイモンド•スプルーアンス大将は、『日本軍にはものすごいアホが居る』と言い、腹を抱えて笑うだけだった。
おしまい




