6話
朝の6時。 まだ薄暗い、ひんやりとした静かな和室に、スマートフォンのアラームが鳴り響く。
壮一郎は、その無機質な電子音でゆっくりと目を醒ました。
「ふぁ…」
眠い目をこすりながら、ぼんやりとした意識のまま、昨夜巴が寝ていたはずの、隣に敷かれた客用の布団へと視線をやる。
「朝だぞ、とも…え?」
まだ寝ているであろう巴に声をかけるが、そこには既に巴の姿はなく、使われたはずの布団が綺麗に畳まれているだけだった。 まるで、最初から誰も寝ていなかったかのように。
(俺を起こすのを悪いと思って、先に帰ったのか)
昨夜の自爆(気絶)を恥ずかしがったのか、あるいは早朝にあの合鍵で一度帰宅したのか。 壮一郎は小さく息を吐くと、自身の布団からもぞもぞと這い出した。
壮一郎も起きて、自身の布団を畳み、巴が使ってた来客用の布団も(畳み直す必要がないほど綺麗だったが)手早く所定の押入れに片付ける。
寝巻から神職としての作務衣に着替え、まだ冷たい空気が漂う風呂場の洗面台で、歯磨き、洗顔など一通りの準備を済ませた。 冷水が、まだ覚醒しきらない意識をシャキッとさせる。
(さて…とりあえず、冷凍してあった米を温めて、ベーコンエッグと味噌汁でも作るか…)
2年間の自炊生活で身についた、手早い朝食の算段をつける。
そう思い、居間と台所の手前まで行くと、 トントン、トントン、という小気味よい包丁の音と、何やら香ばしい味噌の匂いが漂ってきた。
(まさか)
壮一郎は、その(ありえないが、この家では最もありえる)可能性に思い至り、居間の扉を開けると──
「壮一郎、おはよー。もうちょっとで朝ご飯出来るから待っててよー」
そこには、甲斐甲斐しく朝食の準備をする巴の姿があった。 昨日も着ていたであろう私服姿で、彼女は神代家の台所に、まるで昔からそこに立っていたかのように馴染んでいた。
「巴…お前、先に起きて飯作ってたのか…」
壮一郎は、その光景に驚くというよりも、半ば呆れたように呟いた。
巴は、そんな壮一郎の反応を「褒められた」と受け取ったのか、得意げな顔をして笑って見せた。
「ふふんっ、凄いでしょ。お父さん(厳)に神主の起きる時間聞いて、あたしはそれより少し早く起きれるようになったのよ」
(勉学よりも家事全般の技術を向上させていた。)
昨日の巴の言葉が、壮一郎の脳裏に蘇る。 神主見習いの壮一郎よりも早く起きて朝食の準備が出来る。
その努力の方向性が、あまりにも真っ直ぐすぎて、壮一郎はもはやツッコむ気力も起きなかった。 それは巴が、本気で壮一郎のもとへ嫁に来るためだろうというのは、痛いほど理解出来た。
*
巴が作った朝食を、二人は居間で食べつつ話していた。 皿の上には、壮一郎が作ろうとしていた通りのベーコンエッグが乗っており、湯気の立つ味噌汁が並んでいる。完璧な「神代家の朝食」だった。
「中間テストって来週の月曜からか?」
壮一郎が何気なく尋ねる。
「う…うん」
それまで明るい顔で話していた巴の顔が、とたんに暗く淀む。
壮一郎は指折り今日の日付を確認する。水曜日。
「もう一週間もないのか…ってことは、今週はお出かけできないな、巴」
その言葉は、巴にとって死刑宣告に等しかった。 巴は持っていた箸を置き、わしわしと自分の頭を抱えた。
「うわぁぁぁぁぁあああ…ちょっとだけ、ちょっとだけだから…ね、壮一郎?」
「ダメだ。行きたいなら一人で行け」
壮一郎は、箸を止めずに冷たく言い放つ。 その言葉には、巴がもう「一人で」どこかへ遊びに行くなどという選択肢は持っておらず、必ず「壮一郎と」でなければ意味がないことを確信している、絶対的な余裕が溢れていた。
「…やだ…やだよぉ、壮一郎が一緒じゃないと嫌だぁぁぁぁぁぁあああ」
案の定、巴は子供のように食卓の上で駄々を捏ね始めた。 先程までの朝食を作った「嫁」のような振る舞いはどこへやら。
「はぁ…テストはいつ終わるんだ?」
壮一郎は、その駄々を軽く受け流し、現実的なスケジュール調整に入る。
「…来週の水曜日…」
「別にすぐじゃないか…」
ため息交じりに壮一郎は言った。
「なら、テストが終わったあとの水曜日にでも遊びに…」
そこまで言って、壮一郎は来週の自分の仕事の予定を思い出していた。
(…確か、俺も町内会の寄り合いに代理で呼ばれてたな…)
「…すまん、水曜は夜まで仕事だったわ」
巴は、唯一の希望を絶たれ、愕然とした。
「えぇぇぇぇ…!?」
「悪いな、巴」
壮一郎は悪びれる様子もなく、淡々と事実を告げる。
巴は、もはや反論する気力も失せたのか、仕方ないと小さく頷き、つまらなそうにベーコンエッグを口に運び始めた。
(一応、木曜なら空いてたんだけどなぁ…)
壮一郎は自身のスケジュールを正確に思い出していた。
「木曜なら…空いてるけど、お前学校だしな」
彼は、わざと聞こえるように、そう独りごちた。
巴はその言葉を聞き逃さず、カッと顔を上げ、ぽかんとした。
「え?休もうか?学校」
「は?」
壮一郎は、思わず聞き返した。
「だから、学校休んで壮一郎のとこに来ようか?って言ってんの」
(いやいや…俺より学校の方が優先だろ普通…)
巴が、あまりにもとんでもない事を平然と言い出したので、壮一郎は試すように、あえて聞いてみた。
「巴…お前、俺が学校を休め。とか言ったら、休むのか?」
「休むけど?」
巴は、何を当たり前のことを聞くんだ、とでも言いたげに、さも当然のように即答した。
壮一郎はそこで完全に理解できた。 巴の中の優先順位は、明確に「壮一郎 >>> 学校」なのだと…
「わかった…」
壮一郎は、現実的な妥協案を提示する。
「とりあえず、木曜はちゃんと学校行って、終わったら早めに帰ってこい…そしたら、カラオケでもゲーセンでもなんでも連れていってやるから…」
「やったっ!…って来週の木曜か…遠いなぁ…」
一度は喜色満面になった巴だが、まだ一週間以上先であることに気付き、再び不満そうに唇を尖らせる。
「ま、学業が本業なんだから頑張れ」
壮一郎は、その巴の頭を軽く撫でながら、微笑みかけた。
「…壮一郎にそう言われたら、頑張りますかねぇ…!」
そのご褒美だけで、巴は現金にも元気を取り戻したのだった。
*
07時半。
巴が作った朝食を食べ終えた二人は、手早く食器を片付けると、学校へ行く巴を家まで送るため、壮一郎も一緒に家を出た。 朝のひんやりとした空気が肌に心地よい。 二人は並んで、静かな神社の参道を歩く。
壮一郎が、前を歩く巴に(答えが分かりきってはいたが)話しかけた。
「巴、お前、今日学校終わったら、そのあとどうするんだ?」
我ながら、わかりきったことを聞いてしまったな、と壮一郎は自然とそう思っていた。
「え?とりあえず、壮一郎のとこに戻るけど」
巴は、振り返りもせずに、実に当たり前のこととしてそう答えた。 「行く」ではなく、「戻る」。
その言葉には、壮一郎の傍こそが巴の居場所であると、はっきりした意思表示が込められていた。
壮一郎は、その(重い)言葉の変化にはあえて触れず、今日の予定を事務的に伝えた。
「んじゃぁ、戻ってきたら、今日も勉強会かねぇ」
「んげっ!?」
巴は、心底嫌そうに顔を歪め、カエルのような声をあげた。
「お前は…ほんとに勉強嫌いなんだなぁ…もう一週間切ってるんだぞ」
壮一郎は、その分かりやすい反応に呆れかえる。
巴は、くるりと壮一郎の方へ向き直ると、制服の袖の前で指と指をもじもじと合わせながら、上目遣いで言った。
「苦手なモノは仕方ないじゃん…?」
そう媚びたように言ってきたが、壮一郎はその(おそらく漫画で覚えた)テクニックを冷静に切り捨てる。
「ダメだ、ちゃんと勉強してもらう。わかったな?」
巴は、その一切の容赦ない言葉に、苦悶の声を上げた。
「ぐぁぁぁぁ…わかりましたよ…でも、ちゃんと傍で見ててよ?壮一郎」
今度は作戦を変え、不安げな、ねだるような瞳で壮一郎を見つめてくる巴。 壮一郎は、その(どうしようもなく手のかかる)許嫁の姿に、結局は折れてやるしかなかった。
「わかったわかった…」
そう言い、壮一郎は「しょうがないな」という顔で、巴の頭をわしわしと撫でるのだった。
*
月城家についた壮一郎は、巴が制服に着替えるのを家の前で待っていた。
少しして、玄関のドアが開き、巴が私服からブレザーの制服へと姿を変えて出てくる。
「忘れ物はないか?」
壮一郎は、まるで保護者のように、自然と巴に声をかけた。
「うん、ないよ。送ってくれてありがとね」
巴は、それだけで嬉しいとでも言うように、満面の笑顔になる。
「んじゃぁ、俺は仕事に戻るけど、気を付けて学校行くんだぞ」
そう言い、壮一郎はもはや日課のように巴の頭をわしわしと撫でる。 彼にとって、それは許嫁に対するスキンシップというより、手のかかる妹を可愛がるような、ごく自然な仕草だった。
「…ぐへへ…これ好き」
巴は、その手つきに、恍惚とした奇妙な笑い声を出す。 そんな巴に、壮一郎は呆れつつも、どうしようもない愛着がわいてくるのを感じていた。
そうして、大通りまで手を振って巴を見送ったあとに、自身も神社に戻ろうと踵を返した、まさにその矢先だった。
「やぁ、壮一郎くん」
ふいに、背後から穏やかな声がかかった。
声がした方向を見ると、そこには巴の家の玄関先に、穏やかそうな顔に眼鏡をつけた、如何にも物腰の柔らかいサラリーマン風の男性が立っていた。
「譲おじさんっ!」
そう、巴の父、月城 譲であった。
「昨日は、娘が大変世話になったようだね…どうだい?少し家でお話しないか?」
譲は、にこやかな笑顔のまま、しかし拒否権を与えない口調でそう言った。
その瞬間、壮一郎の背中に冷たい汗が流れた。 年頃の娘が、許嫁とはいえ、若い男の部屋で一夜を明かしたのだ。 何もないと考えるほうがおかしい。 それに、今しがたの光景(娘の頭を慣れた手つきで撫で、娘がそれに恍惚としている姿)も、バッチリ見られていたに違いない…
壮一郎の顔に、みるみる困惑が浮かぶ。
「ゆ、譲おじさん!べ、別に昨日はほんとに何もありませんっ!!お伝えしたように、巴さんが風呂でのぼせたので、介抱してただけで…」
壮一郎は、しどろもどろに弁解を始めた。
しかし譲は、その慌てた様子を、優しく笑いかけて制した。
「何か勘違いしているようだね…まぁ、ここではなんだ。上がっていきなさい。私も今日はリモートワークの日でね。少し時間があるんだ」
ここで拒絶したら、更に事がややこしくなる。 そう判断した壮一郎は、覚悟を決め、促されるまま月城家の玄関をあがった。
「あら、壮一郎くん!いらっしゃい」
台所から、巴とよく似た雰囲気の女性が顔を出した。
「すいません、あがらせてもらってます。弥生おばさん」
巴の母、弥生だ。
「少し、壮一郎くんと話がしたくてね。茶を入れてくれるかい?」
譲は弥生に声をかけた。
「わかったわ、熱いお茶持っていくわね」
弥生は、人の好さそうな笑顔を見せた。
通された居間で、譲と壮一郎は座卓を挟んで向かい合って座った。 壮一郎は、正座をしながら、なんとしてでも誤解を解かねば、と必死に頭の中で言い訳を組み立てていた。 (何を言われるんだ…?やはり昨夜のことを怒っているのか…?)
そんな折、譲が口を開いた。
「さて、どこから話したもんかね」
「譲おじさん…!俺は本当に…!」
譲は、壮一郎の必死の言葉を遮るように、緊張をほぐすように、再び笑って見せた。
「あぁ、気にしなくて大丈夫だよ。まぁ、仮に巴にキミが何かしたとしても、私としては、特に問題ないさ。いや、あったほうが好都合というべきか…?」
「ど、どういう意味ですか?」
責められると思っていた壮一郎は、予想外の言葉に、ますます頭が混乱していく。
「ん-…そうだね。これは巴には内緒にして欲しいんだけど、キミが東京に資格を取りに行った2年前のあの日の巴の顔を覚えているかい?」
「あ…はい」
自身の家族と、月城家の両親、そして巴に駅まで見送られたあの日を、壮一郎は思い出す。
その日の巴の言葉を思い出す。 (あたしのこと、忘れんなよ、壮一郎~。) まるで、ちょっと離れるだけの友人を見送るような、あっけらかんとした顔でいた巴。
「今と変わらず、元気そうでしたよね」
思い出したままの印象を、壮一郎は口にした。
「あはは、そうだね。表向きはね。でも、巴のやつ、あれから1週間もしたら、酷く落ち込んでね」
「巴…さんがですか?」
「あぁ…当時のあの子を知ってると意外だろ?」
譲は、懐かしむように、お茶を一口啜ってから話した。
1週間後には、巴の口数が目に見えて減った事。 2週間後には、壮一郎からいつ来るかわからないメールの返事を待つために、ずっとスマホを眺めていた事。
「巴のやつ…そんなに…メールだと、いつもと変わらない様子だったのに…」
「あの子も、あの時は素直じゃなかったからねぇ…あとは、壮一郎くんが本当に離れてしまって、初めてキミの重要性を痛感できたんじゃないかな?」
譲はさらに話した。
1か月後には、友人の朱音に、学校でずっと壮一郎の事を話していたこと。 2か月後には、自分の部屋で壮一郎の昔の写真をずっと眺めていたこと。
(…なんか、ちょっと怖いな…)
壮一郎は、巴の執着の片鱗に、若干引いていた。
3か月後には、巴の勉強机は、壮一郎だけを切り抜いた写真で埋め尽くされていた事。
「あ、その机、まだそのままだよ?見ていくかい?」
「い、いえ…勝手に見ると、巴に本気で怒られそうなんで…」
壮一郎は、丁重に辞退した。
そして、半年後には。
「お父さん、私、厳さんのところで、花嫁修業してきていいかな?」
そう言って、巴は自ら壮一郎の父・厳のもとへ通い詰め、神主の嫁としての生活の練習を始めていたこと。
「な、なるほど…さすが、巴…さん」
全てのピースが繋がった。 厳が巴に甘いのも、巴が神代家の事情に精通しているのも、全ては2年前から始まっていたのだ。
「あはは…無理して「さん」付けしなくていいよ。巴もキミの事は呼び捨てにしてるんだから」
「そ、そうですか…」
「ただね、キミに執着するあまり、巴はそれから勉強に全く身に入らなくなってしまってねぇ…」
「なるほど…」
昨日の勉強会のことを、壮一郎は思い出していた。 あれは苦手というより、この2年間全くやっていなかったのだ。
「そんなわけだ、壮一郎くん。責任取って、巴を嫁にもらってやってくれないか?」
譲は、実に穏やかな表情のまま、本題を切り出した。
「えぇ!?なんでそうなるんですか!?許嫁って、昔の名残で、今はもう有効じゃないですよね!?」
壮一郎は、最後の抵抗を試みた。
譲は、心底困ったように苦笑した。
「そうなんだけどね。でも、キミが巴を嫁にもらってくれなかったら、他に誰が巴を引き取るんだい?」
壮一郎は困り果てた。 まさか、一夜を共にしたことを責められるわけでもなく、浮気を疑われるわけでもない。 要は…巴を夢中にさせた責任を取れ…と言われているようなものだった。
「………嫁に貰え。と言われるなら貰いますが、俺なんかでいいんですか?」
壮一郎は、深く、深くため息をついた後、ついに覚悟を決め、そう返事をした。
「どこの馬の骨ともわからない男に嫁に出すなら、ともかく、幼少期から知ってる壮一郎くんになら、『私達』としては安心だよ」
譲は、その返事を聞いて、心底安心したように頷いた。 巴の両親からも、こうして強力に背中を押される形となった壮一郎。 もはや、逃げ場はない。
「それにねぇ…たぶん、巴は今のままじゃ進学とか出来ないと思うんだよね…なんせ高校生になってキミが資格を取りに行ってから、碌に勉強してないし…あれだと就職も…」
「そ、それは、つまり…」
譲は、息子の将来を案じる父親の顔で、しかし楽しそうに笑った。
「壮一郎くんが許嫁で良かったよ!」
「そ、そうですか…それは俺も良かったです…ハイ」
壮一郎は、もはや生返事をするしかなかった。
「あら、話は纏まったようね!」
まさにそのタイミングで、弥生がお茶とお茶菓子を盆に乗せて、居間に入ってきた。
壮一郎が、差し出されたお茶を受け取り、熱い湯呑みを啜っていると。
「壮一郎くんになら、安心ね。出来れば早く孫の顔見せてね」
弥生が、とんでもないことを平然と言い放った。
巴のとんでも発言は、間違いなくこの母親から来ているのだと、壮一郎は確信した。
こうして、話がまとまり、その後は天気の話しなどの、当たり障りのない雑談を暫くし、壮一郎はすっかり気力を抜かれた様子で、月城家をあとにして神社へ戻るのだった。
*
壮一郎が巴の両親から、ある種の「公認」と「責任」を託された、あの日から数日。 来週に迫った中間テストに向け、巴が神社に通い詰める「勉強会」は続いていた。
学校が終わると「戻って」きて、数時間の勉強(という名の壮一郎との雑談)を終え、壮一郎が汗を流しに風呂場へ向かう。 すると、必ずと言っていいほど、巴は当然のようにその後を追い、風呂場に乱入してきた。 その回数は、この数日で一度や二度ではなかった。
最初こそは、壮一郎もその度に戸惑いを見せていた。 だが、何度目かになると、壮一郎もその抵抗が無駄であることを悟り、もはや何も言わなくなった。
広い湯舟の中、自分の隣で、今日あった学校の出来事や、勉強がいかに嫌かを無邪気に語りながら、心底幸せそうに湯に浸かる巴。
壮一郎は、そんな巴の警戒心ゼロの横顔を、湯気に紛れて眺める。 その様子を、彼はいつしか、諦めでも、困惑でもなく、実に「満足げに」見ていた。 (こいつは、俺が貰うしかないんだろうな) そんな諦観にも似た覚悟と、手のかかる許嫁への愛着が、その視線には含まれていた。




