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少し時間は前後するが、霧島先輩の復活の兆し

数ある物語の中から、本作を手に取っていただき、心より感謝申し上げます。

この小さな物語が、あなたの日々にほんの少しでも彩りを添えられますように。

もし気に入っていただけましたら、ブックマークや感想をお寄せいただけると、作者にとって大きな励みとなります。

なお、全く別ジャンルの物語も公開しております。気分転換に違う世界を覗いてみたいときは、ぜひそちらもお楽しみください。

午前の光が窓から差し込むオフィス。

夢子の席の向かいには、久しぶりに見る新しい顔――霧島先輩が座っていた。

部署異動で来たばかりらしく、少し青白い顔に、MP制度の疲弊がくっきりと刻まれている。


「……初めまして、先輩。調子はどうですか?」

夢子が柔らかく声をかけると、


霧島先輩は、一瞬びっく!とし小さく肩をすくめる。

「いやあ、夢子ちゃんだよね?……MP制度で、もう心が折れそうで……」


夢子は内心、静かに口角を上げる。

(やっとMP制度を語れる人が戻ってきた。部長とは無駄話もできないし、

社員たちにはMPのこと、知られちゃいけないし……。

先輩、戻ってきてくれてよかった――)


秘密のMP台帳を管理する者として、“制度の裏側”を理解している者だけが知る“遊び方”を教える好機だ。


「先輩、少しだけお話してもいいですか?」

声をひそめ、夢子は囁くように言う。


「MPって、単にポイントが増えたり減ったりするだけじゃないんです。

ちょっと操作するだけで、オフィスに“現象”を起こせるんですよ」


霧島は眉をひそめた。

「……それ、部長からも聞いたけど、怖くない? 制御不能になるって……」


夢子は肩をすくめ、微笑む。

「怖いです。でも、面白いんです。

コピー機が連続で紙詰まりするのも、コーヒーが絶妙なタイミングでこぼれないのも、全部MPの作用。少し操作するだけで、社員の行動も、社長の健康も微妙に変えられるんです」


「……まさか」

先輩は半信半疑のまま、夢子の指先を見つめる。


コピー機に0.05MPを振ると、詰まっていた紙がするすると出てきた。廊下で軽く廊下のシュール現象を誘発すると、偶然にも社長の血圧計の数値が理想的に変動する。


「ふふふ……こんな使い方があったのね。なるほど……少し……希望が見えるかも……」


夢子は柔らかく頷く。

「MPは恐れるものじゃなく、味方につけるものです。

 怖がっていても減るだけ。遊べば、回るんです。

 会社を操るって言うと聞こえは悪いけど――少し楽に生きるための知恵ですよ」


先輩の顔に、わずかに血の気が戻る。

夢子は続けた。


「最初は怖い。でも、慣れると日常のすべてが少しだけゲームになる。

 “今日のコピー機はご機嫌か?”とか、“この書類、どのタイミングで送ると上司の血圧が下がるか?”とか。

 そう考えると、仕事がちょっと面白くなるんです」


先輩は思わず笑った。

それは、ぎこちなくも確かな笑いだった。

「……夢子ちゃん、君は本当に……怖いくらい面白いね。

 私は数字ばかり追ってて、こんなふうに遊ぶなんて発想、なかったよ。」


夢子はにやりと笑う。

「ええ、怖くて面白いのがMP制度の魅力ですから」


午前のオフィスに、小さな笑いと光が交錯する。

先輩の瞳には、朝に出会ったときにはなかった“微かな希望の色”が戻っていた。


MP制度に心を削られた者でも、

“使う側”に立てば、こんなにも生き生きと笑えるのだ。


夢子はそっと視線をPCに戻しながら、指先で小さくMP値を調整する。

――今日もまた、オフィスの不条理を操る小さな神として、静かに一日を始めるのだった。

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