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夢子、営業部長の餌食(反撃編)

数ある物語の中から、本作を手に取っていただき、心より感謝申し上げます。

この小さな物語が、あなたの日々にほんの少しでも彩りを添えられますように。

もし気に入っていただけましたら、ブックマークや感想をお寄せいただけると、作者にとって大きな励みとなります。

なお、全く別ジャンルの物語も公開しております。気分転換に違う世界を覗いてみたいときは、ぜひそちらもお楽しみください。

午後のオフィスは、いつもより少し静かだった。

夢子はデスクでコピー機の紙送りを確認しつつ、社員からの問い合わせメールに目を通していた。


そこへ、高橋営業部長が再びやってきた。

「夢子、さっきの報告書…いや、まあいい。気をつけろ」

先日のミスを気にしてか、表面上は冷静だが、その目はまだ少し針のむしろのように鋭い。


夢子は心の中で思う。

(元をたどれば、高橋の部下の交通費清算報告の不備でしょうが…よくも人事に確認せず、私に突っかかったわね)

後から込み上げる怒り――これは、仕返しするしかない、と。


夢子は静かにパソコンに手を置く。MPの微調整――シュール現象を引き起こす準備だ。


最初にコピー機。

夢子が操作を微妙に変えると、コピー機は小さな紙詰まりを連続で起こす。

しかし今回は、夢子の操作で“見えない手”が介入しているため、すぐに解決する。

高橋は困惑し、何度も紙を抜き差ししながら、

「なんだ…このコピー機…今日はやけに調子が悪いな」

とつぶやく。


次に、夢子は廊下の空気を少し変える。

高橋が歩くたびに、微妙に足元が滑るような感覚と、パソコンの画面がわずかにちらつく。

本人には原因不明だ。


さらに夢子はMP操作で心の誘導――高橋の内心に「少し自分を振り返れ」という小さなフラグを忍ばせる。


その瞬間、高橋の頭上の蛍光灯がジリ……と耳障りな音を立てて点滅し、机上の請求書が影を震わせる。

高橋は思わず目を落とし、書類の数字にじっと視線を吸い寄せられた。

「……?」

請求書そのものは違和感はないが、数字の列何かを訴えているかのように感じた。

紙の端が風もないのにふるりと揺れ、異様な静けさの中で彼の鼓動だけがやけに響いた。


その違和感に導かれるように、高橋の脳裏に昨日の一場面が滲み出す。

――先日の交通費清算。部下に任せすぎて、人事に迷惑をかけたあのときの沈黙。

(……俺、あのとき……)


胸の奥にひやりと冷たい感触が走り、小さな後悔がゆっくりと形を取り始める。

まるで蛍光灯の点滅そのものが、彼の記憶を強制的に掘り返しているかのように。


オフィスの周囲では、何事もなかったように社員たちは仕事を続ける。

しかし夢子にはわかる――シュール現象とMP操作の連鎖で、高橋は自分の行動を反省せざるを得ない状況に追い込まれている。


「ふふ、これで少しは気がついたかしら…」

夢子は小さく微笑む。ブラックユーモアの小さな勝利だ。


その日の夕方、コピー機は平常運転に戻り、廊下も普通に見える。

高橋は無言で自席に戻る。表情は険しいが、目の奥には微かな戸惑いが残る。

夢子はデスクで台帳を眺めながら、心の中でつぶやく。


「些細なことを注意してくる人ほど、シュール現象で反応するのよね…これからは、ちょっと遊ばせてもらおう」


ブラックユーモアとシュール現象で、夢子は自分の会社における“静かな支配力”を再確認した日だった。


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