表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/34

増田さんの空回りと威厳の剥落

数ある物語の中から、本作を手に取っていただき、心より感謝申し上げます。

この小さな物語が、あなたの日々にほんの少しでも彩りを添えられますように。

もし気に入っていただけましたら、ブックマークや感想をお寄せいただけると、作者にとって大きな励みとなります。

なお、全く別ジャンルの物語も公開しております。気分転換に違う世界を覗いてみたいときは、ぜひそちらもお楽しみください。

社内の空気はいつも通り、微妙な緊張とシュールな笑いに包まれていた。

コピー機が勝手に紙詰まりを起こし、照明がわずかに点滅する。社員たちは「ああ、またか」と慣れた様子で通り過ぎていく。だが、そのすべてを冷静に眺めているのは夢子だけだった。


天下り役員――増田さんは、今日も分厚い書類を片手に、威張り散らして廊下を歩く。

「おい、これはどうなっているんだ!」

怒鳴り声に、社員たちはビクビクと頭を下げる。

仕事はほとんどしないのに、威厳だけは満タン。それが彼の社内での立ち位置だった。


窓際のデスクから、夢子は静かに目を細める。

「さすが天下り……威張るだけで“七不思議”を稼げるんだから。少しギャフンと言わせる価値はあるわね。私には優しいのに……妙な話」


彼女はそっとMP台帳を開き、数字を微調整する。すると、増田さんがコピー機を使った途端、紙詰まりが連続して起きた。

「な、なんだこれは……!」

慌てる増田さんを見て、社員たちは口元を押さえ、こっそり笑う。

さらに机のペンが勝手に転がり、資料がわずかにずれる。


夢子は柔らかな声で言葉を投げた。

「大丈夫です。落ち着いて対応すれば、すぐ解決できますよ」


不思議なことに、その言葉に導かれるように増田さんは深呼吸し、冷静さを取り戻す。だが、コピー機やペンの“偶然の混乱”は止まず、彼の威厳はじわじわと削がれていった。


午後の会議。増田さんが発言しようとした瞬間、プロジェクターがちらつき、スライドが勝手に入れ替わる。

「えっ、これは……?」

一瞬固まる増田さん。その隙に場の流れは自然と別の方向へ進み、結果的に会議は円滑に進行した。


夢子はにやりと笑う。

「ふふ……“七不思議”のさじ加減ひとつで、この人も社内の潤滑油に変わる。これは快感ね」


夕方。コピー機は直り、照明も落ち着いたが、増田さんの胸には妙な不安が残っていた。

――自分の威張り方が、なぜか空回りしている。


デスクに戻った夢子は小さくつぶやく。

「今日もMPの実践訓練は完了。さて、明日はどんな顔を見せてくれるかしら」


社員たちはまだ気づかない。だが社内の空気は確実に変わりつつあった。

増田さんもまた、知らぬ間に夢子の“掌の上”で踊らされていたのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ