表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/34

田口のずる賢化と不可解な日常

数ある物語の中から、本作を手に取っていただき、心より感謝申し上げます。

この小さな物語が、あなたの日々にほんの少しでも彩りを添えられますように。

もし気に入っていただけましたら、ブックマークや感想をお寄せいただけると、作者にとって大きな励みとなります。

なお、全く別ジャンルの物語も公開しております。気分転換に違う世界を覗いてみたいときは、ぜひそちらもお楽しみください。

仕返し作戦から数日後。月影夢子は、人事部のデスクからオフィス全体を見渡していた。

田口の動きが、どうも以前と違う。いや、変わった、というよりも……一層ずる賢くなったのだ。


まずコピー機の前。

「田口さん、この資料の件は……」夢子が声をかけると、彼は笑顔で肩をすくめるだけ。

だがその背後で後輩の鈴木くんが必死にコピー機と格闘している。紙が詰まるたび、鈴木くんは焦って駆け回る。


田口は何事もなかったかのように通路を歩き、資料を受け取り、軽やかに会話を交わす。

——本人は全く気づかないが、その背後で後輩たちが必死に働くことで、知らぬ間にMPは自然に増えている。

夢子は小さく眉をひそめる。

「……仕返しのはずが、逆にずる賢さを強化してしまった?」


廊下でも同様だ。

田口が通ると、書類の束が微妙にずれ、コピー用紙が床に滑り落ちそうになる。

後輩が慌てて拾う。

田口はそれを「偶然」としか思っていない。

しかし夢子の目には、明らかに**“操作された偶然”が織り込まれた日常**として映る。


昼下がり。夢子は高橋部長を呼んだ。

「高橋部長、田口さんの……ちょっと確認してほしいんです」

高橋はいつも通りの疲れ顔で椅子に腰掛けるが、その目は何かを察したように鋭い。

「なるほど……ああ、知ってるよ。そういうやつだ」


二人は田口を呼び出す。

「田口、最近の仕事ぶりについて話がある」

田口は軽やかに現れ、いつもの口癖を口にする。

「やっておいたから大丈夫っす」


夢子は薄く笑う。

「今日はそれじゃ通用しないんですよ」


高橋が問いただす。

「具体的に何をやったのか、教えてくれ」


田口は肩をすくめ、しかしどこか誇らしげだ。

「えっと、僕はね……部下に頼んでやってもらったんです」


——背後の後輩たちは必死に書類を整理し、コピー機と格闘し、コーヒーを運び、蛍光灯の微妙な角度まで調整しているかのようだ。

その結果、MPは知らぬ間に増えている——夢子の目には、その不条理さがはっきりと映った。


夢子は机の下で拳を握る。

「ブラックユーモア、ここに極まれり……!」

彼女の計画は、田口本人に自覚を促すどころか、ずる賢さを強化してしまったのだ。


高橋部長は肩をすくめる。

「これぞ、人事が見守るブラックコメディだな。社員は必死、でも知らぬ間にずるい奴に力が集まる……」


夢子はため息をつきながら、田口の動きを観察した。

“このままだと、次はどうなるのか……”


オフィスの不条理はさらに加速している。

田口のずる賢さ、後輩の必死さ、MPの不可思議、社長の若さ——すべてが交錯する日常。


その日、夢子は密かに決めた。

「次は、もう少し直接的に向き合わないと……MPを逃れる者には、必ず代償を」


オフィスの空気は、いつになくシュールで不気味に笑っているかのようだった。

夢子の心には、次の“仕返し計画”への火種が静かにくすぶり続ける——


そして、近い未来、田口のずる賢さがどのような結末を迎えるのか、それはまだ誰にも分からない。

ただひとつ確かなのは、オフィスの日常は、今日も不条理で、少し恐ろしく、でも確実に面白いということだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ