欲望の渦
カ…カ…カチャ……カ…カチャ……
虚無な目をしている一人。文章を打ち込む。
カチャ…カチャ…カ…カ…
消したり、付け足したり、考えたり、何も出来なかったり。
もう、深夜。
照明はもう消した。闇の濃霧の中で、ディスプレイにぼんやり。薄明かりに照らされては文章をひたすらに打ち込み、打ち込み、打ち込む度に何かが頭に浮かび上がっては、まるで腐り果てる果実。少しの間だけ実るだけで、すぐに虚空へと落下。二度と戻ってこない。
何もかもがどうでもいい。本当のところ、何もかもがどうでもいい。死んでしまいたいとも思う、生きていようとも思う、ただ間違いなく思うことは唯一つ、全てどうでもいいことで満たされている。
ただ、こう淡白に思えるのは、生気が朽ち果てている深夜だけだ。
朝になれば話は変わる。脳みその中に渦巻いてい来る、混濁した気持ち悪い欲望の渦。
あれもしたいこれもしたい。
あれかこれか。
あれもこれも。
死に至る病なんざ患っていない。
……可愛い子と付き合いたいだとか、お金が欲しいだとか、上手いもん食いたいだとか、人に構ってもらいたいだとか、人から嫌われたくないだとか。
渦巻いていくる。とことん湧き上がってくる。
汚らわしいというか、ありきたりでつまらないというか。
つまり俗的。
深夜になると神秘的なものにばかり興味が向く嗜好が、すぐに俗的に様変わりする。
恥ずかしい限りの話です。
外に出てみたら、綺麗なのに、それなのに可愛さもある人。そういう人がスッと通り過ぎる。そんなとき。
見知らぬ人、すぐに忘れる人。一瞬だけ幸せにしてくれる人。一期一会なのだと気が付いて、虚無にさせられる。
虚ろ、虚ろ、欲望、虚ろ。
一生うつらうつらしていたい。
飯を食べなくちゃいけないのか、となって、結局うつらうつら出来ない。頑張らなきゃといって、うつらうつらできない。
もうどうでもいいから細かいことをすっとばしたことを語り合いたい!すごいことやりたい。出来るか、出来るわけ無い。?
『ああああああああああああ!
ああああああああああああ!』
叫ぶか?それとも吠えるか!
頭で考えるのは疲れる。
ただひたすら、感覚の中でまどろんでいたい。互いが感覚で何となくわかりあえちゃうような、そんな出来の良い世界。
全ての人が感覚で感じて、全てが勘と直感だけの世界。
そこには差別が無い。偏見が無い。…いや、むしろ逆かもしれないけれども。
そんなことは知らないけれど、実質言いたいことは一つ。
『全て思い通りに、ならないかなぁ。』ということ。
全ての生き物が全てその生き物の思うとおりに、生きないかなぁ。
欲望の渦。尽きることの無い生物たちの欲求。
「私たち人間はそれを控えなくちゃいけないよ。自然を破壊しているよ、ふざけるんじゃないよ」、と、欲望を持っているふやけた顔が言い放つ。見え透いている。それを言う人は、どういう意味で得をしたい人なのだろう。
良い奴ぶるなら豚と牛を殺すのをやめてからにすればいい。人間が死ぬのを知らないフリをするのをやめてからにすればいい。
そんなの無理だ、どう頑張ったって。
牛肉は上手い。豚肉は上手い。他人が他人に構っていられる余裕なんてそこまでない。せいぜい知り合い、家族、友達に構ってやれる程度。
馬鹿にするんじゃない。
なめるんじゃない。
鼻で笑わせるんじゃない。
誰一人として聖人などではない。人間。動物。頭の良いフリをした、数をやけに増やした、ゴリラ。チンパンジー。
欲望の渦が、尽きるわけがない。
尽きることが無いから、今日もまた。
カッ……カッ……。
って、打ち込んで、そんで眠くなったら、寝る。
つまらない言葉。
説教臭い内容になりましたが、これにて終わり。