雨…
音楽を聴いていたらふっとストーリーが浮かびました。
はやく長編が書けるようになりたいです。
この日雨だった。
リュックを傘がわりに頭にかざす女の子、田中千尋22歳だ。青山一丁目駅の入り口で洋服パタパタし、メイク崩れがないか手持ちの小さい鏡で見ていた。すると声がした。『これ使って、じゃあ』それだけ言うとその男性は去っていった。渡された物はタオルハンカチだった。千尋は見覚えがないか考えてみたが、やっぱり初めて見る人だった。千尋はいつ返せばいいんだろうかと首をかしげながら、タオルハンカチを使わせてもらった。翌日も雨だった。そうなんだ季節はすっかり梅雨なのだ。千尋は青山一丁目のオフィス街にある本屋でアルバイトしている。一応2つ年上の彼氏がいるが、最近全然会っていないらしい。千尋いわく顔は良いけど遊び人らしい。いつも恋愛ではババを引く千尋なのだ。そんな千尋が働いてると、昨日タオルハンカチを貸してくれた男性がお客さんとして現れた。千尋は驚いて「あー!」という表情のまま固まってしまった。時計を見ると休憩時間までまだある。千尋は紙に電話番号を書いて申し訳なさそうに男性に渡した。その日の帰り道千尋は考えていた。一体なんの企みがあって優しくしてくるたのか。
「もしかして身体?」ひとり胸を押さえるのであった。
雨がやんだ。
せっかく仕事から帰ってきたのに電話がない。
意識しないようにしてても電話に気を取られる。
この日から3日間雨は降らず、千尋の電話もならなかった。洗濯して乾いたタオルハンカチ見て「なーんだ」と呟いた。
その翌日雨だった。
この日は千尋は仕事が休みで、昼寝をしていた。
するとテーブルの上の携帯が震えた。
千尋は電話が鳴っていることは知ってるが、手がテーブルに届かない。切れては鳴る電話。ようやく携帯を手にした。ディスプレイを見ると公衆電話と表示されている。怖くなって一度無視してみた。それでも電話は鳴る。恐る恐る出てみるとタオルハンカチの男性からだった。なんで3日間も電話くれなかったのか問いたくなったけど、やめた。『雨の日じゃないと生きられないんだよ!』男性が言っている。私は凄い口実で逃げようとしているなと思ってしまった。でも、しきりに男性は同じ事を言っている。次第に雨がポツリポツリとやみはじめたら、男性の電話の声は遠くなり、そして切れた。
千尋はその晩考えていた。確かに男性と会った日は全部雨。そして雨がやんだら電話も切れた。あながち本当かも?と思いはじめるのであった。明日は仕事早番だ。天気予報を見ると午後から雨マーク。
お読みいただきありがとうございます。
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